いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

YAMAHA NS-1000MM を3WAYネットワーク化してみる

ヤマハの小型ブックシェルフスピーカー「NS-1000MM」を改造してみた。その所感。

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見かけ3WAY

以前このスピーカーを整備したとき、見た目は3WAYなのに内部のクロスオーバーネットワークが2WAY仕様であることに気付いた。
実質、種類の異なる二つのツイーターが一つの回路で鳴らされていたのだ。
今回は、それをセパレーションし、真の「3WAYスピーカー」にしてみようという魂胆。
 
実のところここまで、NS-1000MMは中古品を何度か入手し、3WAY化の整備をしてみている。
ただ、自身の考えつくままに回路を構成しても、なかなか思うように音が整わなかった。
 

ネットワーク設計

そんな折、ネットワーク設計に関する大変便利なサイトを見つけた。
なかでも、「F特(FrequencyResponse)を解析」のツールは、各変数における周波数特性の変化を視覚的に確認でき、まさに自分の欲しかった機能だ。アッテネーターのシミュレーションもありがたい。

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いちいち計算しなくていいのは素晴らしい
今回はこのツールを使って、クロスオーバー周波数を決め打ちせずに、トータルの周波数特性から逆算して各々必要なパーツの変数を探る手法を採ってみた。
 
ドライバーユニットの仕様がわからない。
とりあえず、定格インピーダンスはすべて6Ω、f0(共振周波数)はウーファーを70Hz、大きいツイーターを15kHz、小さいツイーターを50kHzと仮定して算出。
 
して、最終的に落ち着いた回路は以下の通りとなった。

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3WAYネットワーク案
ウーファーは前回とほぼ同じ。コイルのインダクタンスを下げてコンデンサーの静電容量を上げる。
ツイーターふたつは、どちらも-6dB/octでいいかと思っていたけど、小容量でもコイルを挟むとクロス周波数付近で安定するようなので、-12dB/octとした。うち、小さいツイーターのほうは空芯コイルとした。
JBLのスピーカーが、設計クロス周波数に対してやたら小さいコイルを置いていたのは、ちゃんと理由があったのだ。原理はわからないけど。
アッテネーターはツイーター側のみ。大小ともに-4dB程度で固定抵抗器を置く。
 
大きいツイーターの直列のコンデンサーは、もう少し大きくしたいところだけど、以前4.7μFを繋いでテストしていたらユニットが壊れた経験があるので、3.3μFに留めている。
見かけによらず、あまり下のほうの周波数は再生できないのかもしれない。
 

工作

ネットワーク基板の素材は、いつものパンチングMDFボード。ウーファーの口径未満の寸法に切り出し、その上にパーツを配置する。

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パーツ配置は左右対称
パーツ点数が多くボード上が入り組んでくるため、場所を取る端子台を設けず、圧着とはんだ付けを併用して組み上げる。
 
当初はすべて正相としていたけど、聴き比べてみて小さいツイーターは逆のほうが良さそうだということで、逆相となっている。結果として、ここはオリジナルと同じだ。
 

さて、肝心の音はというと、当然ながらオリジナルとは異なるキャラとなる。
分析的で、細かいニュアンスまで聴こえてくる。また、"面"で鳴らすような、包み込むような音場は、3WAYのそれといえる。
ボーカルはやや奥のほうに居る感じがあるものの、ちゃんと中心に定位している。
低音はやはり弱いままだけど、オリジナルの存在感の薄い音ではなく、タイトながら若干ウェットな音を浴びせてくる。
 

シミュレーションとの差異

手持ちのマイクで収音した音とシミュレーションを比べてみると、ほぼ同じ周波数特性を示した。

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改修後の周波数特性
ウーファーインピーダンスは高域に向かって上昇する」ので、設計もその点を考慮したものになっていたのだけど、実際はシミュレーションとほぼ同一の特性となった。
ウーファーはもう少し高域まで伸びるだろうと予想して、大きいツイーターとのクロス付近である4kHzから6kHz付近はやや凹み気味になっているのを、シミュレート上は許容した。
しかし、現実は思いのほか持ち上がらなかった。これがボーカルがやや引っ込んで聴こえる要因なのかもしれない。
 
また、10kHzから12kHz辺りに変な落ち込みがある。ここは、ツイーター同士のクロス付近である。
しかし、何度かテストしてみると、この落ち込みは発現しないこともあった。結局よくわからないままだ。
収音環境が影響しているのだろうか。聴感では違和感無いので、そのままとする。
15kHz以上が急に下がっているのは、マイク位置の関係だろう。
 

まとめ

この記事を作成している現在も試聴を続けている。とりあえず、今まで改造してきたNS-1000MMの中では一番まともな音になったと自負している。

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だいぶまともになった
しかし、これより先をさらに設計していくとなると、感覚では詰め切れないだろうとも感じている。スピーカー設計に関して体系的に知識を付ける必要がありそう。
とはいえ、そこまでする熱意は、自分にあるだろうか。
 

(追記) ネットワーク回路の再調整

前述のネットワーク案を少し弄る。
結果は下図のとおり。

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3WAYネットワーク案 その2

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改修後の周波数特性 その2
小さいツイーターは、コンデンサーの容量を若干小さくし、併せてアッテネータによる減衰も小さくした。
ただ、出音の変化としては微細。もしかしたらここはアッテネータが不要なのかもしれない。
 
大きいツイーターのコンデンサーを1μF大きくした。やや低下気味だった4k~6kHzの音域をカバーするため。
結果としては意図のとおり改善されたものの、本来なら4.7μFまで引き上げたいところ。でも、故障の件があってちょっと怖くて踏み込めない。
 
ウーファーはコイルを少し小さく、コンデンサを少し大きくした。これで中音域に実在感が出てきた。
 
250~600Hzの音域が少し引っ込んだ。ただし、これはネットワーク回路の設計変更の影響ではなく、吸音材を化繊ウールからグラスウールに変更したことによるもの。グラスウールをツイーターの真裏、つまりエンクロージャーの上半分の位置に詰め直し、空いた下半分は化繊ウールに戻したところ、改善した。
 
終。