いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

JBL STAGE A120 をチューンアップする

JBLのリーズナブルなパッシブスピーカー「A120」を手に入れたので、手を入れてみる。

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安価なJBL

以前、メインスピーカー買い替えのためにヨドバシAkibaにてスピーカーの試聴をしていた際、A120よりワンサイズ上の「A130」を鳴らしてみたことがある。

morning-sneeze.hatenablog.com

そのときは、3WAYである「4312M」の音が聴き慣れなくて、2WAYのA130の音のほうが安定していて聴きやすいな、という印象を持った。
4312Mについては、実際に手元に置いて整備してみたりした今となっては、当時と印象が全然違うスピーカー。A130の出音に関しては、当時ペア2万円強で手に入るエントリークラスにしては良質で、「全然イイよなコレ」という、また別方向の感想だった。
ただ、当時は物理的な制約で置けず、選択肢から外してしまった。
 
今回、シリーズ最小サイズとなるA120が中古で安価に放出されていたので、手に入れてみた次第。
 

改修前の音

購入した中古品は、使用された形跡が少なく、新品に近い状態の良質なものが届いた。

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JBL STAGE A120
いつもならいろいろ整備するところだけど、これは少なくとも外装面ではそのままで十分綺麗なので、内部のみ弄ることにする。
 
さっそくいつものように、AVレシーバー「YAMAHA RX-S602」に繋いで鳴らしてみる。
このスピーカーはバスレフ式で、背面に広めのポートがある。ここには付属のフォームプラグを詰められるようになっていて、低音部を調節できるようになっている。

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背面のバスレフポート
フォームプラグを捻じ込んだ半密閉状態と、開放状態の両方を聴いてみる。
 

半密閉

JBLのスピーカーでは、最近では「A640」を整備してみたことがある。さすがにあちらほどではないけど、上から下まで音を広く網羅していて、歯切れの良い元気な音を鳴らす。
このスピーカーは、どちらかといえばドンシャリ傾向である。ポートを閉じていても、ある程度低音が出てくる。
中音域が薄めで、ボーカルは割とあっさり聴こえるので、低音をある程度抑えた半密閉状態のほうが、バランスとしてはちょうど良いのかもしれない。
 

開放

ポートを開放すれば、当然ながら低音域の量感は増える。周波数的には、60Hzから70Hzあたりが持ち上がるようだ。
古いアナログソースだとややブーミーに聴こえることもあるけど、基本的にはドッシリ構えて鳴る印象。特に小音量で鳴らす場合は、こちらのほうがエネルギッシュに聴こえる。
ただ、先述の引っ込み気味の中音域がさらに凹む。能率もそこまで高くないので、曲調にもよるだろうけど薄っぺらく聴こえなくもない。
もっとも、このスピーカーの前に置いていたのが、中音域が濃密な「CORAL EX-101」とか「YAMAHA NS-10MX」とかだったりするから、比較して顕著に聴こえるだけかもしれないけど。
 

分解

内部を見ていく。
といっても、前面にはメスを入れられそうな箇所は見当たらない。背面のスピーカーターミナルユニットを留めている六角穴のネジを外してみることに。

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ターミナルユニットを外したところ
まるでバイワイヤリング用に面積を確保したような、かなり広くとられているスピーカーターミナルユニットの真裏に、ネットワーク基板が配されている。これは予想通り。

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ネットワーク基板
ネットワークは、ウーファー、ツイーター両ユニットとも12dB/octで構築されたシンプルなもの。

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ネットワーク回路
ただ、ツイーター用の空芯コイルのインダクタンスが、0.1mHとかなり小さい。
この傾向はA640でもそうだった。
当然意図的だと思うのだけど、真意は読み取れない。再生周波数のフィルターというよりは、インピーダンス調整のために設けているようにも見える。
 
コンデンサーは、両ユニットともにアキシャルのアルミ電解コンデンサーを採用している。
耐久温度105度品が使われていることは判るものの、メーカー名らしきものは一切表記がない。外装樹脂を剥がしてみても、さっぱり。
 
簡単に分解できそうなのはここまで。
エンクロージャーに手を突っ込んで、各ユニットの固定方法を内部から探ってみる。
すると、なにやらタッピングネジで固定されているものの、裏からではなく、一般的なものと同様前面からネジを回していることが、指先から解った。

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吸音材は、上下左右の4面にグルリと
おそらく、各ユニットにあるリング状の樹脂やホーン状のプレートは化粧フレームとなっていて、それを取り外せばネジの頭が出てくるのだろう。

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これらを外すなら、専用の治具が必要な気がする
それを外すだけなら簡単だけど、「パーツを無傷で」という条件が付くと話が変わる。せっかく新品同様の美しい状態を保ったままのエンクロージャーに、ヘタに修理痕を残したくなかったので、ユニットのアクセスは断念する。
 

整備

というわけで、今回はネットワークの改修のみに留める。
幸い、各ユニットからネットワーク基板までの配線が長めにとられていたので、ケーブルを切断せずとも引き出してそのまま作業できる。

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ネットワーク基板の固定ねじを外した図
コンデンサーの交換と、ターミナルに接続されるケーブルの変更程度の整備となる。
 
コンデンサーは、ツイーター直列側をフィルムコンデンサーに変更する。
使用するのは前回同様、Audiophiler製のメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサー「MKP-CYCAP」にしてみる。

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デカい
このコンデンサー、PP製らしいのだけど、出音の質としてはポリエステル製に近い気がしている。どこかが突出しているわけでなく、自然で円やか。
とにかくケースが巨大なので、物理的な制約が出ることはままあるものの、既存から変にキャラを変えたくない場合は重宝しそうなコンデンサーだ。

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今回はギリギリ盛り込めた
ウーファー側の電解コンデンサーは、おなじみ「MUSE ES」。
 
ついでに、スピーカーターミナルの内側に伸びるケーブルポストも金メッキ製に換装する。

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ちょうど合うサイズが余っていたので
ケーブルはOFCスピーカーケーブル。距離は短いけど、一応。
 
改修らしい改修はここまで。吸音材もとりあえず弄らないでおく。
 

改修後の音

音の変化は、フィルムコンデンサー化による高音域の改善が主。
もともとザラザラしていた2kHzから5kHzあたりが、かなり見通し良くなった。

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改修後の姿。といっても、改修前から変化は無い
電解コンデンサーからPPコンデンサーにする際は、一緒に抵抗器の容量も若干増やしたりするのだけど、今回採用したコンデンサーに限っては、その必要は無さそう。ツイーターが鳴りすぎている感が少ないのだ。ドンシャリ傾向のスピーカーであれば、これくらい出ていても全然OKとする。
 
低音域は、柔らかさが増した。ただ、これはこれでいいのだけど、音の"芯"というか、実在感は一歩減退した感がある。
最近よく採用するMUSE ESはアルミ電解コンデンサーではあるけど、スピーカーのネットワークに使うと、なんとなくフィルムコンデンサーっぽい鳴り方に変化するように感じる。
これはいわゆる「オーディオコンデンサー」の一傾向なのかもしれない。歪みが取れることで、逆に耳に残らない音になるのかも。
もしかしたら、あえて汎用の両極性電解コンデンサーを使うというのも、アリなのかもしれないと思い始めた。
 

まとめ

A120は正直なところ、「これで十分」なスピーカーだ。コストパフォーマンスはかなり高い。ちょっと良いパッシブスピーカーが欲しいとなったら、とりあえずこのスピーカーから聴いてみるのがいいのではないか。

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サイズ感もちょうど良い
上を見たらキリがない。ブックシェルフスピーカーでこれより上のグレードを手にするのは、もう趣味の領域だ。それでも欲しくなった場合、「スピーカー沼」に足を突っ込む覚悟が必要だろう。
 
終。
 
 
(以下資料)

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