いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

Cambridge Audio SX-50 を鳴らしてみる

ケンブリッジオーディオのスピーカーシステム「SX-50」を入手し、音を出してみた。その所感。

 

SXシリーズ

某中古販売店にどういうわけかたまたま格安で放出されていたこのスピーカーが、人生初のケンブリッジオーディオ製品となった。

Cambridge Audio SX-50 DWN
「SX-50」という小型2ウェイシステム。この記事が掲載されている時点での現行機種であるようだ。

前面ネットを付けた状態
このごろはデノンの「SC-M73」やPolkAudioの「ES10」みたいな、比較的近代の小さなスピーカーを手にすることが続いている。なにかそういった"流れ"でもあるのだろうか。
ケンブリッジオーディオのスピーカーは、過去にちゃんと試聴した記憶が無く、音を聞くのは今回がおそらく初めて。
 
このSX-50は「SXシリーズ」というエントリークラスの最小モデルのようだ。

カラーはダークウォルナット
ブックシェルフ型の同等サイズでは、上位機種に「EVO S」という製品が存在する。しかし、日本では取扱いがないようだ。自分のようなデスクトップオーディオを嗜むのにちょうど良さそうなサイズ感のものは、現状このSX-50か、ワンサイズ上の「SX-60」あたりとなりそう。
 

外観

イギリスのオーディオメーカーだということは知っていた。ただ、このスピーカーは中国で製造されたようだ。

背面のラベル。「Designed and engineered in London, England」とある
前面ネットのフレームは、このサイズのスピーカーではめずらしい繊維板をドーナツ状に加工したもので、厚みがあってしっかりしている。ただし、付いているダボはかなり細い樹脂製。着脱には注意が必要だ。

そのうち絶対折れるなコレ……
全面ウォールナット調のシートに覆われた、角張った直方体のエンクロージャー。表層の質感自体もそれほどチープではなく、落ち着いた雰囲気だ。

まだ新しいからというのもあるけど
筐体の高さは約22cm。奥行き方向は前面ネットを含めると25cm強ある。背がやや低めで小型に見えるけれど、設置に要する面積はそれなりに必要とみるべきか。

側面と背面
背面にはコネクターユニットとバスレフポートがある。
前面の化粧パネルも同じなのだけど、これら暗めのグレーのパーツはマットな質感で、指先で撫でるとゴムっぽい触覚があるのが特徴的だ。開口部がフレア加工されたバスレフポートも、内部のダクト部までマット調となっている。

これも余所では見かけない仕様だ
また、板に埋めこまれているように見える円形のコネクターユニットは、固定するためのネジの頭が見あたらない。

スマートな見た目のコネクターユニット
おそらくエンクロージャー内部でなんらかの方法で固定しているのだろう。これらにより、デザイン面においてスッキリしてモダンな印象となっている。
 
前面には、クロスになにかがコートされたようなソフトドームのツイーターと、こちらも表層に光沢のあるなにかが塗られたようなコーンのウーファーがある。
ツイーターユニットは、メーカーホームページによると25mmのシルクドーム製らしい。

ツイーター正面
ウーファーは135mmペーパーコーンとのこと。エッジはラバー製。エッジの軟度は標準的で、振動板のストロークも指で触れるかぎりではやや重めの印象。
両者の外周には、硬質のゴムのような質感のダルマの形をした化粧プレートが被さっている。

横に倒してみる
こちらもやはりネジ頭が見えない。メンテナンスするうえでこの上なく不便を強いられる仕様なのだけど、意匠面からすればやっぱり隠したいものなのだろうか。
高級感を持たせるのは良いのだけど、接着剤か両面テープか、この化粧プレートを固定しているなんらかのものがはみ出ているのが、ちょっと気になる。

けっこうキッチリ接着させているのか
 

 

聴感

音を聞いてみる。アンプはいつもの、ヤマハのAVレシーバー「RX-S602」。スピーカー付属のフォーム製のパッドは使わず、常用している黒檀サイコロ三点支持とする。その下には花こう岩プレートを敷く。
この体積なのに腰の据わった落ち着いた音を出すもんだな、という印象。
このごろはテンモニシリーズやJBLの「Control Wave」などのピーキーなスピーカーを鳴らしていたこともあって、それらと逆の位置にいるような音楽的で懐の深い音に和む。
 
重心が低めなのが意外だ。けっこう低い音まで聞こえてくる。
低音の量感もサイズを鑑みれば十分で、いわゆる"バスレフ臭さ"みたいなものもほとんど感じない。アコースティックで質が良い。
 
目立った主張をしない中音ではあっても、ボーカルがしっかり真ん中にいるし、低めの音に埋もれるようなこともない。適度な湿度と弾力をもって、音を自然に醸す感じ。
 
高音も同様で、特に煌びやかというわけではないけれど、ひずみや雑味は無くクリアな空気感を演出する。また、ドライバーどうしの繋がりが良いのか、中音との連携も自然で違和が無い。
 
分解能はそれなりで、音のヌケ感は現代のスピーカーにしてはやや控えめの印象。よって、暗い音に聞こえる場合もあるかもしれない。
横方向の音場はそこそこ広め。パースペクティブは凡庸だけど、ある程度メリハリのある音ゆえ空間表現として皮相的な感じは小さい。
 
どのジャンルの曲調も泰然たる態度で受け止めてゆく、いわばオールマイティな性格。そんな印象。『赫々たる南国の太陽!』みたいなものを求めるのでなければ、良質で聴きやすいスピーカーだ。
 

測定結果

周波数特性を見てみる。

周波数特性
ついでに今回は、あまり意味があるのかわからないけど高調波歪み率も載せておく。

高調波歪み率特性
聴感のとおりで、特段述べることがない。
インピーダンス、公称8Ωのスピーカーにしては低いような気がするんだけど、こんなもんなのかな。
 

内部を見たい。でも……

はみ出ている接着剤の修正やら、コネクターユニットの固定方法の確認やらをしておきたい。そのためにはウーファー周りの化粧プレートを取り外してドライバーユニットを固定しているネジにアクセスする必要がある。
しかしこのプレート、かなりしっかりくっついているらしく、これをキレイに剥がせる自信が無い。よって、今回は分解を諦めることにする。
また別の機会があれば。

せっかくキレイなのに傷つけたくないし……
 

まとめ

現代の小型スピーカーは、このクラスでも十分良い音なんだな、という感想。ガチガチのHIFIではなく、良い意味で古い音というか、刺激を遠ざけてゆったりとリスニングを楽しみたい場合にちょうど良いスピーカーだ。

最近の小型スピーカーはこういう音も出せるんだな
なんとなく、「古いスピーカーには古いスピーカーの良さがある」と思っていたけど、このところ近代のスピーカーで聴くようになってから、けだし別にそんなことないんじゃないかという気がしてならない。少なくともこのくらいの体積のブックシェルフ型であれば、とっかえひっかえするたびに「もうこれでいいじゃん」となっている。
 
もしかすると、近代のスピーカーばかり手にするようになっているのは、無意識のうちに古いスピーカーを排除しているからかもしれない、と思うなど。
 
終。