いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

Ocean's Heart 所感

Steamを覗いていると、ときたまオススメされるゲームがこの「オーシャンズハート」だった。おお、またか、とストアページを見てみると、ちょうどセールをしていたので買ってみた。
実績は、ふたつのイベントだけ説明文を読んでも発生条件がわからず未取得。それ以外はすべて。
プレイした総タイムは15時間程度。独自の縛りとして、いちどもゲームオーバーにならずにクリアした。

 
 

ストーリー概要

主人公ティリアの暮らす静かな集落が、突如として海賊からの攻撃を受け、大損害を負う。その騒ぎに乗じて友人がさらわれ、職業柄すぐに海賊のあとを追ったティリアの父親とも連絡が途絶えてしまう。二人の無事を願ううち、居ても立ってもいられなくなったティリアは、手掛かりを探すため世界を旅することとなる。

世界の歴史に関わってくるメインのストーリーのほか、サブクエスト的なサイドストーリーが程よいボリュームで用意されている。
 

ゲーム性

見下ろし型の2DアクションRPG。目の前の敵を武器や魔法で往なし、訪れた先々で人から情報を集め、ダンジョンの謎を解いていく。今では王道といえば王道のスタイルだ。

標準装備の剣以外に、道中で獲得した武器や魔法を二種まで装備できる。基本の徒歩のほか、前方に素早く移動する前転が無制限で使用可能。使用するボタン数が少なく、シンプルな操作で進められる。
自身の体力が無くなればゲームオーバー。魔法も自身の魔法力を消費して放つ。これもわかりやすい。
 

2Dゼルダだ……

触れないわけにはいかない。
フィールドもキャラクターもすべてがドット絵で描かれた、スーパーファミコンゲームボーイなどで発売されていた『ゼルダの伝説』シリーズを強く意識しているゲームとなっている。『神々のトライフォース』『夢をみる島』『ふしぎの木の実』など、そのあたりの世代だ。
とりわけ『神々のトライフォース』の要素が強く取り入れられているように思う。ここ、あそこじゃん。これ、アイツじゃん。と。

ゼルダライク」というより、「ほぼほぼゼルダ」といえる。フィールドのグラフィックの面はもちろん、アイコンの表記、主人公のアクション、調達できる武器、ダンジョンのギミック、それらすべてが「懐かしのゼルダ色」。

言わずもがなオリジナルストーリーだ。"姫"も出てこない。だけど、ちょっと大げさに評するならば、そのまま主人公を挿げ替えれば、初期シリーズのリバイバル作品だと言われても違和感が無いのではないか。そのくらいリスペクト……というか緻密に構成されている。
 

再現と相違

ここでは、2Dドットのゼルダの伝説と共通する点とリファインされている点を、例としていくつか挙げていく。
 
主人公は自前の剣での攻撃を基本とする。でも、盾は扱わない。
盾に代わる防御の手段として、ストーリーが少し進むと、自身の全方位にバリヤーのようなものを一瞬だけ張る魔法を会得する。

敵からのほぼすべての遠距離攻撃を跳ね除け、しかも攻撃判定も備えるなかなか強力なもの。ただし、効果は極短時間で、かつ魔法扱いなので使用するたびに魔法力を少し消費する。
 
剣は、攻撃ボタン押下で主人公の前方の広範囲にわたってビュンと薙ぐ。

初めのうちは、ボタン押下中に剣を構えることはできない。しかし、とあるイベントのあとにチャージ技が放てるようになり、そのさいのモーションの一部のようなかたちでできるようになる。

ちなみに、"回転切り"はしない。ビームも出ない。壁に向かって「ツンツン」はできる。
 
弓矢やバクダンの使いかたはそのまんま。フックショットや全体攻撃は無いけど、それと似たようなものが存在する。
 
体力に関しては、"ハートのうつわ"に該当するものが存在し、冒険開始時は3つある体力ゲージの上限を増やすことができる。
緑色のゲージで表される魔法力は、魔法を使用すると当然ながら減少するのだけど、使用しなければ時間経過で徐々に回復していく仕組み。よって、一応"緑のクスリ"に該当するものを携帯できるけれど、必携という感じではないようだった。
 
ゼルダシリーズでは最新作まで続くおなじみ"妖精"も登場するけど、本作では体力の回復などは担っていない。それは別のアイテムに譲っている。

また、主人公はいっさい泳げない。いわゆる水掻きも存在せず、浅瀬以外の水に浸かることは穴に落ちるのと同等の扱いとなっている。
 
これも馴染み深い"ブーメラン"も拾える。投げつけられた敵は動きが一時的に止まるのは一緒だけど、斜めの方向には放てない、クリスタルスイッチ(と勝手に呼んでいるギミック)を作動させることができないなどの性能の違いもある。
 
このように、挙げればキリがないほどに細かい相違がある。それでも、大枠はゼルダシリーズの挙動やシステムを踏襲している。もちろんこれ以外にも、このゲーム独自の攻撃手段やアイテムもしっかり用意されていて、まるきり同じというわけではない。
 

難易度

本家2Dゼルダと比べると、ダンジョンの難易度は抑えられている。
まず、マップがそれほど広くない。本作にはダンジョン用の固有のマップが存在しないのだけど、地図が無くても問題ないかな、と思える程度の延床面積になっている。よって、いにしえのゼルダを知っている人間からすると歯応えがないように感じるかもしれない。

また、ダンジョン内のギミックについてもパズルの要素が少なく、頭をひねる場面がほぼ無い。どちらかというとアクションの要素が多く、しりごみしなければササッと抜けられる印象だ。これも、ボリュームの面では不利に働くのかもしれない。

反対に、敵キャラクターの攻撃に関しては、場所を問わずなかなか熾烈な感じだ。体力と防御力の低い序盤は、回復できないでいるとあれよあれよといううちに瀕死になる。
 
本作では、敵を倒すと一定確率で出現する、その場で体力を回復する"ハート"のシステムは無い。その代わりとなるのが「果実」で、道中にある特定の灌木やダンジョン内の壺の中などから収拾でき、携行することができる。

数を確保しておいて、必要な時に必要な量を食べられる。いたるところで拾えて、終盤までお世話になる有用なアイテムである。これにより、"空きビン"を用意して"赤いクスリ"を買い求めたりすることをしなくても、なんとかやっていける感じだ。
こういった部分でも、このゲーム独自のバランスが採られていることがうかがえる。
 
後述するけど、自身をしっかり強化していくと、体力の減少に関してはそれほど気にならなくなってくる。いちどもコンティニューせずにクリアできたのも、おそらくこれが効いていたためだ。
 

サイドストーリー

このゲームにはいわゆるレベルの概念が無く、徐々に強力になってくる脅威に対抗するには自身の能力や武器の性能をアップさせていくこととなる。
そこで、サイドストーリーをこなしていくことが必要となってくる。メインストーリーに関わらないダンジョンの宝箱の中身やイベントの報酬が、強力な魔法や武器のグレードアップ、防具の強化の材料だったりすることが多いからだ。

本作にも貨幣のシステムはあるものの、まとまった資金が必要となる場面が少ない。その代わりに、特定のアイテムを要求されることが多い。イベントによっては手間のかかる案件もあるけど、そのぶん見返りも大きい印象だ。

メインストーリーを進めるだけでもクリアできるけれど、こういった点で、サイドストーリーを進める意義はあるように思う。
 

日本語

当初は日本語は想定されていなかったのか、全体をとおしてメッセージの文体があまり馴染みの薄い、翻訳された単語をそのまま組み合わせたようなものとなっていて、ストーリーや登場人物の心情を掴みにくいのが、非常に惜しい。また、これはプレイしている環境によって異なるのかもしれないけど、メッセージウインドウ内に文字を詰められるだけ詰めていて改行がほぼ無く、文章がとにかく読みづらいのがストレスとなる。
セリフ回しがあからさまに外国っぽいな、というのはいいとしても、ローカライズがマズいとここまで感情移入しづらいものなのかということに気づく。

とはいえ、日本語への対応は熱望するファンに応えてアップデートで対応されたものらしいので、開発陣営側の熱意にただただ感服するばかり。
 

まとめ

2Dゼルダの完成度たるや、といったところだろう。
自分自身、ゼルダシリーズに初めて触れたのが『夢をみる島』であり、主流の3Dよりも2Dのデザインを好む人間である。だからだろうか、この作品がゲームの表現としてやりたかったことがひしひしと伝わってきて、ゲームの楽しさよりもプレイできる喜びのほうが湧いて出てくるのだった。得も言われぬ感情に浸りながら遊んでいた。

また同じようなゲームが登場しても、そのうち手をつけちゃうんだろうな。
 
終。