いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム 所感

メインエピソードをクリアした時点でまとめている記事。
蒐集品はもちろん、マップもすべて埋まっていない。これからどの程度までやりこむかは現時点で決めていない。
初めはマップ解放とともにそのエリアを踏破し、アイテムや関連イベントを粗方こなしてからストーリーを進める、というプレイングをしていたけれど、そうするといつまで経ってもクリアできないことに気づいたため、途中からはメインのストーリーを中心に追う形に変更し、どうにか発売から二週間ちょっとでクリアした、といったところ。

寝る間も惜しんでというか、生活のほぼすべてをこのゲームに費やしてきたにもかかわらず、いまだにゲーム全体のボリュームがどれほどなのか掴めていない。
前作「ブレスオブザワイルド」をプレイしたのは約5年前。そのときの感覚から、まあ一週間もあれば自力で大方クリアできるだろう。見落としや細かいネタは追々攻略情報を見ながら……なんて思っていた。
甘かった。いわゆるチュートリアルステージクリアに二日かかるとは夢にも思っていなかった。

トレーラーやキャッチコピーなどの事前情報から、広大なハイラルの大地の上空にまで活動範囲が広がることは発売前から知っていた。そのため、今作ではメインとなるステージは空中であり、地上とその上空を往来して物語が展開するものだと思っていた。
しかし、じつのところ雲の上で闊歩する範囲は地上のそれと比べると大したものではなく、「空島」と呼ばれる遺跡風の建造物にあるダンジョンをクリアしたり、蒐集品を集めたりする程度のもので、それ以外は「ゾナウギア」と呼ばれるギミックを使用して飛行機風のものを作りあげてみたり、前作でおなじみの「パラセール」で滑空するなど、空中移動が活動のメインとなるのだった。

じつは、地上と空以外にももうひとつマップがあり、そこの攻略がひたすら大変でプレイ時間を大幅に延ばしている。「地底」である。

フィールド面積は地上とほぼ同じで、基本的にすべて暗闇。かつ「瘴気」と呼ばれるいわゆる毒の沼が広がっており、その上を歩けば最大HPを吸われるといういやらしいペナルティを避けながら進まなくてはならない。チェックポイントに到達してマップを開放すればそれなりに視界が開けるものの、それまでは置いた周囲を明るくする消耗品のアイテムを持ちこみ、都度明かりを灯しながら進むということをしなければまともに進めないようになっている。当然、徒歩移動がメインとなる。
さらに、出現する敵もこの瘴気をまとっており、攻撃を受けると毒の沼と同様のことが起こるので、地上と比べて戦闘のリスクが跳ね上がっている。この"最大HPが減る"というのは、たとえ回復手段があるとしても心理的につらいものがあり、行動に神経を使う。敵の影が見えるとどうにかして戦闘を避けられるようなルートを模索し始めることが、移動時間延長に拍車をかけている。
 
とりもなおさず、フィールド面積が単純に倍になっているのに加え、増えた部分は徒歩でちょっとずつ移動することが原則となれば、時間がかかるのは必然と言える。空の上の活動がメインであるならばそれに見合うような移動手段が用意されているだろうからむしろ短縮するだろうと思っていたので、この地底攻略に関しては完全に想定外だったわけである。
空島にいるよりも地底探索の時間のほうがおそらく長い。このゲームをプレイする前までの個人的なイメージは、天空を飛び回るような開放感のあるものだったのに、今ではすっかり地底に引っ張られ、どこまでも鬱蒼とした暗澹としたものに様変わりしている。

地上に関しては、基本的に前作のマップを踏襲するものとなっている。あるとき突然空に島が出現したという設定で、そこからの落下物が至る所にあったり、多少地形が変わっているところもあるものの、前作をプレイしていればその記憶にあるハイラルの大地がほぼそのまま広がっていると思ってよさそう。
各地にある「祠」と呼ばれるミニダンジョン的なシステムも引き継がれており、そのミッションもパズルを解く要領でクリアしていく点で変わらない。
 
ただし、今作では先述した新ギミックであるゾナウギアを駆使することが必定となる。ゾナウギアとは、翼やプロペラ、ホイールやロケットブースター、大砲や光線銃、ジャンプ台や時限爆弾などといった多彩なツール群である。主人公リンクはそれらを持ち運ぶことができ、しかも任意に着脱させて組み合わせることができるという、今作を象徴するようなシステムがある。これまたとんでもない自由度をほこっている。
自由といっても、この組み合わせる所作にもある程度のルールというかクセがあり、慣れるまでに相応の時間が必要だった。チュートリアルステージクリアにやたら時間がかかったのも、このビルドシステムの把握に手こずったことが大きい。
このゾナウギアによって、前作以上にプレイヤーにできることが増えている。とにかくアイディア次第でなんでもできる感があって、ダンジョンのパズル要素も、用意されている解法に寄らず独自の切り口でクリアできてしまったりする場合がある。このことからも、前作と比べると頭の使い所はどのようにロジカルに動くかではなく、ビルド要素、言ってしまえば物理演算のシミュレートに占められるように思う。
それでも、全体的にチュートリアルがていねいなので、どう扱ったらいいのかわからないといった場面はほぼ無かった。

ストーリーとしては、いにしえより復活した悪の親玉ガノンドロフの打倒が最終目標となるのだけど、並行して行方不明となっているゼルダの捜索もメインエピソードとなっている。
前作では、復活したのはリンクのほうで、各地に赴きかつての英傑たちと力を合わせて、厄災収束とゼルダ解放を目指すものだったけれど、今回はゼルダハイラルの運命にどのような影響を与えていくのかについてスポットを当てたストーリーとなっている。世界各地にある特定の場所にリンクが赴くと、都度ゼルダ側のエピソードが少しずつ明かされるようになっている。ゼルダ自身が伝説を紡いでいるのだという、まさしくゼルダの"伝説"であることを強調しているような見せかただ。
ただ、このゲームが発表された数年前は、「ゼルダと一緒に冒険できる」と真しやかに言われていた記憶があり、それをけっこう楽しみにしていたので、結局別行動となっているのはちょっと残念。

前作同様、ハイラルの各地方には味方してくれる仲間がいるけれど、それに関するエピソードには、個人的にけっこう違和感がある。あまり掘り下げられていないのである。
今回助力してくれる仲間たちは、一人を除き現世の人だ。それぞれが抱える問題を解決すると、かつて魔王ガノンドロフと相まみえた過去の「賢者」から力の受け継いでほしいと言われ、みんなあっさり引き受けることとなる。賢者になることを目指すどころかその存在すら知らないような素振りなのに、わけもわからず目の前に現れた賢者を名乗る人物から「リンクに協力するのが我が部族の運命だから、この力の受け継いでね」と言われて、面食らいはするもののなにか葛藤するわけでもなくその場ですんなり納得し引き受けるのは、どうしたって不自然に映る。直後リンクに「私は○○の賢者!」と宣言するのも、あ、はい、それでいいのね、となってしまった。
そのあと彼らは、今度はこちらの番だ協力は惜しまないといってくれるものの、各々の立場から情報収集するという名目で各地方に留まる。じゃあ受け継いだ力はどう扱うのかというと、リンクに自分の分身を託すのである。「これでキミといつでも一緒だ」と。ここでも、一緒に冒険してくれるわけじゃないんだ、となった。自分の領地に留まるのは、別に異論はない。でも、だからといって分身として顕現する必要は無いのである。前作と同じように、リンクに力を貸与し、必要となった時に発現すれば事足りるのだから。

自国の姫であるゼルダは当然として、一度世界を救った有名人リンクについても各々面識があるものの、基本的に協力者同士の繋がりは、終盤になって拠点に集結するまでほぼ無いものとみえる。ここは裏の設定ではどうなっているのかわからないけれど、いざ決戦の地へ乗りこむぞとなる直前になって初めての顔合わせだろうと思われる。これは、前作のガノンの厄災における英傑たちの行動を知っている身としては、それで大丈夫? と思わざるを得ない。
ゲームシステム上の都合だったり、語られない別の物語があるためにいろいろとすっ飛ばしているように見えているのかもしれないけれど、なんかちょっと雑だな、と思わざるを得ない。
諸々、ハイラルにおいては、謀反人の集であるイーガ団を除く誰もが、リンクとゼルダに絶大な信頼を寄せているから成し得るのだ、ということにしておく。
 
いっぽう、先にも挙げた地底は、そもそもどういった場所なのかということについても言及がほぼ無い。地中のかなり深いところにある大空間で、巨大な植物が跋扈しているけれど人工物も点在している。地底のモンスターはなぜ鉱夫みたいなことをしているのか、とか、地底で拠点を構えて暗躍しているイーガ団はなぜガノンドロフの居場所まで知っているのか、とか。地底絡みは不明な点が多い。
建造物の意匠や入手アイテムから空島と関係がありそうだけど、サブイベント内でも核心をつくような描写は無く、繋がりがイマイチはっきりしない。どこか見落としているのか? ここも、現状隠された部分なのかもしれない。

思うことは多々あるものの、とんでもない長丁場でもここまでまったく飽きることなく続けられたゲームもめずらしい。
現状わからない部分も多い今作。今後DLCで追加されるコンテンツで明かされたりするのだろうか。
そちらも期待したい。

終。