いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

BOSE 101IT 発売当時のレビュー記事抜粋

ボーズのスピーカー「BOSE 101IT(イタリアーノ)」発売当時の各オーディオ雑誌に掲載されたレビューから、音に関する部分を抜粋し以下にまとめる。
 
 

雑誌広告

ステレオ 1989.6.

小型高性能のジャンルをボーズが築いて以来、大きいスピーカーほど音がいい、という常識は迷信のようになりました。小さいけれど音がいい、そんな実力本位のスピーカーが、マニアの話題の中心です。なかでも今、新しくボーズが作った101イタリアーノが、しきりと注目されています。新開発のドライバーユニットHP-101と、独自のポートテクノロジーによって、圧倒的な高音質が楽しめるからです。特に、初めて採用したサイドポートは、耳障りなポートノイズを解消。小さなボディからは想像もつかない、クリアで豊かな低音をお聞かせします。しかも、これまでにない滑らかな曲線で構成した、モダンアートを思わせるイタリアンデザインを取り入れています。洗練されたフォルムは、音の良さで選ばれている先輩たちの人気をおびやかす、ちょっと目につく小型高性能スピーカーです。
 

ステレオ 1989.5.

stereo試聴室 話題の新製品を聴く

石田善之
(前略)小型、あるいはシングルコーンの弱点である中高域の硬さを見事に排除し、ハイエンドをのばし、その分だけ情報量は多くなり、きめ細やかな表現も可能にしている。さらに中低域の充実も図られ、オーケストラも結構厚く力強い表現をしているし、ピアノ伴奏の声楽曲は、こうした小型スピーカーならではの空間性の良さに音場感の見事さ、柔らかな表現を加え、声が実に自然に出てくる。伴奏のピアノと歌との距離感もごく自然で、若干声を張り上げた部分も、硬さと前に迫る音とがうまくバランスをとっていて、硬質さを感じさせない。(中略)ピアノは右手の切れ味、速いパッセージなどにモタつきがなく、ごくスムーズだが、左手帯域の力感はやや荒さにつながる。弦バスのソロも最低域の厚味は無理としても、“感じさせる低音”が出ていて不足感には、つながらない。ポピュラー系のジャズはシンバルの切れ味、抜け、スネアドラムの乾いた感じなどがとてもシングルコーンとは思えないくらいだ。ポップ調のサウンドもくすみがなく、パワーも結構入るし、のびやかさ、楽しさを感じさせてくれる。
金子英男
(前略)何しろ鳴りっぷりでは自他ともに定評のあるボーズの中でも驚くほど良く鳴る感じがする。(中略)全体の鳴らしかたのうまさには驚嘆するものがある。
この小型でありながら中低域から低域にかけてのエネルギーのもたせかたは実にうまく、全体の帯域そのものは無理に広げた感じはない。ほど良くバランスのとれているものであるが、実際の帯域より音の出かたがスムーズで開放的なことによって広く感じさせるところをもっている。もう一つこのシステムの強みは全域の質感にちぐはぐなところがなく実によくつながっていることと、質のグレードをうまく保っていることで聴き手にいやな印象を全く与えることがなく、快いのりを感じさせ音楽に伸びやかさを伴なったダイナミック感をもっていて、くっきり出して来る。多少、部分的なめり張りはあるが、全体の雰囲気をこわすことは全くなく、無理強いのない活きいきとした表現力は、この価格ランクの製品とは思えないもので、従来のこの大きさでは考えられない余裕のある鳴りかたをするもので、かなりの満足感を与えてくれる。
福田雅光
(前略)開口部が内側になるようにセッティングするのが標準である。むろん本当の低音は無理があり、低域端は急速に低下する傾向だが、低音感というものをよく引き出しているのと、中低域の厚みが豊かで、このサイズとは思えない中低域のふくよかさと深みのある音場を再現してくるのは立派である。
サウンドキャラクターはナチュラル系の柔らかな感触が軸になり、なめらかな中域、細やかな高域を得て、シングルコーンだが質感コントロールはうまい。帯域バランスとしては中域から中高域で若干リードする傾向を持つことからプログラムによっては明るい開放的な雰囲気に押されてくることがあるものの、高域もスムーズに確保しているのでボーカルなどでも抜けのいい展開がある。
鮮明、クリア、高解像度型というよりも適度に丸めた軽妙なフィーリングが特色である。このためアコースティック系プログラムの質感に無理がなく、輪郭の強調感もなく素直。(後略)

オーディオトピックス 高島誠

(前略)つないだアンプはアキュフェーズC-280L+P500Lというデラックス、このくらいの一流アンプでドライブしたら、どう出てくるか興味もあった。
唖然とした。Model101と全く違う。全くというのは語弊がある。ボーズらしい音場の拡がり感は共通で、さらに強調され、オーケストラ空間など、チビラッパのそれではない。低域ののびが違う。高域の紙くさい感じがない。前作ではウレタングリルを除くとチリチリと紙臭くて、ウレタン効果と呼んでいたのに、新作はイタリアーノの躍動感もある。(後略)
 

ステレオ 1989.7.

私のベストワンはこれだ!! スピーカー5万円未満

斎藤宏嗣
(前略)新たに開発されたフルレンジユニットは、全域で厚手のフラットパターンに仕上げられ、低域での明瞭度や高域のスムーズな粒立ちは、新しい"ボーズ・サウンド"の誕生を感じさせる。(中略)高域を含めて全域の質感のグレードアップにより、クラシックなどのアコースティックソースでも美しく気品に満ちたサウンドが楽しめる。万能形のコンパクトシステム。
金子英男
(前略)特にこの101シリーズの中でも新型のユニットは適切なバスレフ構造によって、高・低のバランスがほどよく、特に中低域から低域にかけてのエネルギーの与え方はうまい。同社の伝統的な鳴りかたは、この小型システムにも受け継がれていて、実際の帯域よりスムーズな音の出かたの開放感で、広く感じさせるところがある。特に全域の質感にちぐはぐなところがなく、よくつながっている。快いノリを感じさせる伸びまかさをもったダイナミックな感じによって、くっきり出してくる適度なメリハリを持っている。従来のこの容積からは考えられない余裕のある鳴り方だ。
 

ステレオ 1994.2.

私流! ローコスト・コンポの遊び方選び方

入江順一郎
(前略)レンジはそれ程広くないが、質的には立派なものをもっており、余計な音や付帯音が付くようなことはない。使い始めは多少高域が上昇した傾向になるが、特に中域はしっかりとしており、くっきりとしたピアノや、歯切れのいいブラスなどが楽しめる。女性ボーカルではやや子音が感じられるが、弦の細かい音も十分に出てくれ、分解能も高い方である。