いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

シーズン ~未来への手紙~ 所感

Steamからセールの情報が届いたので、購入してみた。
通しで2回プレイしている。1回目は約8時間。2回目は5時間弱でクリア。
実績は、特に意識せずプレイしていたら自然とすべて獲得できていた。

 
 

概要

3Dアドベンチャーゲーム。自転車にまたがり、自然豊かな大地をひた走る。

最近までプレイしていた「ゼルダの伝説」と描写が似ているものの、いわゆる敵との戦闘のようなものはいっさい起こらない。
 
また、時間の進行も、ストーリーの進行度に応じて変化するかたち。
 
"季節"の終わりがやってくることを知り得たとある集落で、それを世界に知らせるため、主人公である一人の女性が旅立つ。
その使命のほか、なにもかも露と消えるであろう今の"季節"について、後世に伝えるべく見聞を一冊の不思議なスクラップブックに取りまとめ、それをとある場所まで届けることも目標としている。

 

季節の物語

本作のタイトルにもなっている「季節」について、作中ではやや特殊なワードとなっていて、いわば「時代」とか「歴史」といった意味合いで終始用いられる。
主人公が生きる時間以前にも"季節"は当然のようにあり、栄枯盛衰であった。そして今まさに、ひとつの"季節"が終わろうとしている。

終わることでなにが起こるのかとか、そもそもなぜ終わるのかといったことは、終始語られない。安全である故郷から離れ、情報を集めていくうちに、それとなく終末の片鱗のようなものは散りばめられていることがわかるものの、そもそも生身の人間にあまり出会わず伝聞がないことや、以前の"季節"の遺構が多く横たわっているばかりで、なにか陰鬱な運命にあることは間違いないのだけど予想の域を出ないという具合である。そこが独特の世界観を醸している。

 

世界の現況

主人公は、終わりを世界に知らせるために旅する。だけど、世界はまるですでに終わることを察知していて、それに対して人間社会は必要な対応を済ませたあとのような、むしろすでにひとつの文明が消え去ったあとのようにさえ見える退廃的な雰囲気が、進む先々を包んでいるのが印象的。
人影はほとんどないけれど、少なくとも世界から絶滅したわけではなさそう。終末の憂き目はそこはかとなくあっても、絶望しているわけでもなさそう。それでいて、旅先はつい最近まで人が居たと思わせる程度には生活感があったりするのが、異常性を感じさせる。

 

多くは語られない

ストーリーは、いくつか微々たる分岐はあるものの、基本的には一本道。主人公が"季節"の終わりを世界に知らせ、そのあと終わりがやってきたであろうところで終わる。そのあとにも旅は続いているように見えるけれども、ゲームとしてはそこで終了。
先で触れたとおり、道中でかなりの量のバックグラウンドを垣間見ることができる。しかしそのわりには、ほぼなにも回収せずに「え? ここで終わっちゃうの?」とエンディングを迎える。
本作を2回通しでプレイしたのは、1回目のプレイであまりにも呆気なくスタッフロールが流れ始めたため、バッドエンドのルートをたどったのだと思ったからだ。ここで終幕なはずがない、これからが本題だろう、と。しかし、道中の選択肢を異なるものにしても、多少セリフに変化があるだけで結末は一緒。

濃密で、良い意味での消化不良である。それだけ世界観の構築が上手い作品なのだと思う。現実寄りのステージと、出会う人々のバイタリティーが自然であるいっぽうで、裏に流れている信用しきれない人道組織の存在や空想的な力を持つ宗教などのファンタジーな要素とのブレンドが秀逸で、引き込まれる。
逆に、探索しないでいると、ただ自転車で駆け抜けるだけのよくわからないゲームとなってしまう。プレイヤーのちょっとした気づきが必要で、それが物語に深みを与えることになる。

 

フルボイス

登場人物は、主人公を含めほぼフルボイス。しかもフレーバーテキストっぽいものにも音声がしっかり用意されていて、インディーゲームとしてはかなり力が入っている。
ただし、バグなのか同じセリフを繰り返ししゃべったり、全然違う場面のセリフが突然流れたりすることがあるのが残念。このゲームの発売からしばらく経つけれど、アップデートで改善されたりはしないのだろうか。

 

トラベラーズノート

今の"季節"を後世に伝えるという名目で、手持ちのスクラップブックを整備していく要素がある。
主人公はインスタントカメラとテープレコーダー(?)もカバンに入れており、プレイ中は基本的にいつでも取り出して記録をつけることができる。また、見つけた特定のメモや文書なども一緒に挟みこめるほか、どういう仕組みかはわからないけど音声まで綴ることができてしまう。

日々の出来事を書き留めるという所作は、トラベラーズノートを彷彿させる。
写真はもちろん、スタンプ、蒐集品なども、見開きの一ページに自由に貼りつけて、自身の旅情を「映える」ように仕立てあげていくのである。綺麗に並べてもいいし、無造作にラフな感じに見えるようにしてもいい。
ただ、自分も昔ちょっとだけチャレンジしたことがあるけど、三日坊主で終わったのだった。今も流行っているのかな。

レイアウトは自由度がそこそこ高いので、センスを持ち合わせているプレイヤーであれば、かなり楽しめる要素ではないかと思う。

 

その先が見たい

雄大な自然のなかにある仄暗い「なにか」を感じながら、独り進む。
次の「シーズン」が見てみたい。そう思わせる完成度のゲームである。
 
終。