いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

Planet of Lana 所感

頭が混濁する。なにかゲームでもしてリセットしたい。と、Steamを開いたらオススメされたのが「Planet of Lana」である。
実績の獲得は、ノーミスクリア以外すべて。
プレイの時間は、クリアのみだと4時間弱。そこから秘密の神殿の探索にプラス3時間ほど。

 
 

ストーリー概要

主人公となる少女ラナの暮らす集落に、空から突如としてメカニカルな自立する兵器のようなものが襲来し、昵懇の友人イーロ(イロ?)を含む村民がどこかへ連れ去られるところから始まる。

道中、仔猫風の生物(?)と出会い、ムイと名付けられたそれとともに、イーロ奪回、帰郷を目指す物語。

 

ゲーム性

横スクロールのパズルアクションアドベンチャー。主人公ラナ、お供のムイを操作して、各キャプチャーごとに用意されたギミックを解きながら進んでいく。

ステージギミックのほか、敵との接触をどうやって避けるのか、という点も加わる。

敵はこちらの姿が視界に入ると、一目散に駆け寄ってくる。攻撃を受けると一発アウト。ラナは当然ながら、ムイにも判定があるのが特徴。
こちらの攻撃手段は基本的に存在せず、ステルスアクションで切り抜けることになる。

各ステージのパズル要素は、なかなかロジカルである。無視して駆け抜けることはできず、順序だててタイミングを計る、わりときっちりとした定型の操作を要求される。
 
ラナは序盤は徒手空拳で、物陰に隠れたり物を動かすことくらいしかできないけれど、物語が進むうちにアクションが増えていくこのテのゲームの"お約束"も備える。

かくして、煩雑なコントローラー捌きは必要とせず、スピードもそこまで要求されないシンプルな操作だけど、正確性を求められるゲームといえる。

 

グラフィックの美麗さ

ステージのギミックを解いていく以外は、基本的にムイを連れて雄大な自然の中をひた歩くものとなる。

このゲームの瞠目すべき点として、空気感の伝えかたを心得ていることが挙げられる。ステージのベースは3Dだけど、背景を織りなす構造物や遠方の空、山、水の表現はアクリル絵の具のようなやや厚ぼったい塗りの2Dで描かれている。それらが幾層にも重なることで、絵画のような描写でありながら広大なパースペクティブを感じさせるものとなっている。

この平面と立体物の織り交ぜかたが自然で違和感が無く、どこを切り取っても調和がとれており、世界に没入させてくる。

そしてさらに秀逸なのが、道すがらその練りこまれた美しいフィールドをプレイヤーに堪能させるかのように、ただただ前に進ませるだけのエリアが随所に設けられていることだ。これはもう意図的にそうしているとしか思えない。

操作していても、まるで映像作品を観ているかのような気分になる。
 

キャラクターのしぐさ

操作するラナの動きも細かい。かなり身軽な動きをするラナだけど、駆けだす瞬間の加速や、高い位置から飛び降りて着地するさいの「おっとっと」という慣性のブレーキ、身体ごと振り返るときの下半身の動きなど、リアルの人間の体重移動を感じさせる挙動を見せる。コントローラーのボタン操作にキッチリ追従するようなキビキビとした動きをしない。

しかし不思議なのは、そうであるにもかかわらず、ゲームとしてストレスをほとんど感じないことだ。パズルを解くにはこのラナのしぐさを把握している必要があるのだけど、たとえ操作ミスをしても、ラナ自身の動きが鈍いからミスをした、というような印象を受けない。あくまで操作のタイミングを見誤ったから、すなわちプレイヤーがヘタクソだからだ、と素直に納得する。

おそらく、リアルな動きをアニメーションで見せられると、そこから人間の身体能力の限界も感じ取りやすく、プレイヤー側で理不尽さを見出しにくいのだと思う。かといってあまりにも動きに"遊び"が多いと、単なるプレイアビリティの劣悪なゲームになってしまう。そのあたり、かなりバランスに気を遣っているだろうことは想像に難くない。
 
そのほか、敵が近くにいればそちらに視線を向けるし、ムイを気に掛けて声をかけたり笑いあったりもする。そのちょっとしたしぐさ諸々に拘りを感じる。
 

含みを残す世界観

原初的な自然の上に築かれた集落の、人間の生活味あふれる場所がスタート地点とあって、なんとなく親近感を覚えるけれど、あまりにも素朴で原始的すぎてどこか異世界じみた印象もある。

登場する人物たちの発する言葉も、なんとなく判りそうで判らない独自の言語を使うので、なにを喋っているのか理解しづらい。また、環境こそ地球と似ているけど、人間以外の動物は地球のそれとは異なり、全身真っ黒で表されている。これは記号なのか、それともそういった形(なり)をした生物なのか。

ゲームが進むと、地表の風景には似つかわしくない近代的な建造物の遺構や、それと関連するかのような遺跡風の場所など、ラナたちの居る大地は地球ではない別の星であるかのような示唆をいくつか見つける。

ただし、道中の描写で得られる情報の限りでは、この星の背景について確証をもって述べられることがあまり無い。
また、なぜ機械の兵器のようなものがやってきて人々を連行したのか、その動機はゲームクリア後もハッキリとは判らず仕舞い。
地中に眠る壁画はどうして存在するのか? ラナたちはこの星の人間なのか? 遺構と今回騒乱を巻き起こしている謎の機械たちとの関係は? ピースはだいぶ揃っているけれど、それらをどうやって繋ぎ合わせればいいのかわからない、といった具合。

終盤、物語の核心を突くようなかなり印象的なシーンが立て続けに見られるけど、その背景も含めて、むしろ混乱をきたす。
 
しかして、ステージをよく観察していると、この星のバックストーリーに関連すると思しきオブジェクトを見つけることもできる。取りも直さずかなり想像の余地が残されたストーリーとなっているようだ。

とはいえ、あくまでもラナの目的は親しき友人の救出。ムイと協力して敵の猛攻をかいくぐり、ひたむきに前進する。冒険活劇としての面白さも十分備わっていると感じる。

映像と音楽の連動もキッチリ絡み、盛り立ててくる。静と動のメリハリのある演出が、常に世界が動き続けていることを感じさせるようで、プレイヤーを飽きさせることがない。

 

まとめ

基本的にはパズルをひたすら解き続けるゲームであり、単調となりがちだけど、そうはならないよう緻密に配慮された場面構成と難易度で、世界にグッと引き入れ続けることのできる胆力を持つ作品だった。全体のボリュームとしては小さめであり、サラリと熟せるのも良い。

なにはともあれ、ラナたちの居る地では、ムイをただひたすら撫で続けていられるような、平和な世界であってほしいと願うばかり。
 
終。