いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

Sea of Stars 所感

気になっていたゲームが発売されたので、Steamがセールをしているうちに購入。
トゥルーエンド到達までクリア。実績100%は、条件のひとつが自分には厳しそうなので、それを除くすべての実績達成まで。
 

概要

2DドットRPG。プレイヤーが操作するアクションパートは、ほぼ全編ドットグラフィックで展開される。この要素だけで「買い」だった。

往年のRPGのエッセンスをイイトコ取りし、現代で再現したゲームである。
いわゆるインディーゲームでありながら、しっかりとしたボリュームを携えており、しかもていねいに作りこまれている。自分がまさに2Dドットのゲームで育った世代であるため、道中得も言われぬ感情が湧きおこることがしばしば。ノーマルエンドまで30時間強かかったけれど、いっさい飽きることがなかった。
 

古き良きJRPG

街を歩き、ダンジョンの謎を解き、敵を薙ぎ払い、世界を救う。JRPGの王道のド真ん中を走る。

移動は徒歩が基本。各都市やダンジョンを繋ぐワールドマップがあって、ちっちゃいキャラがトコトコ歩く。このマップではダッシュと斜め移動ができず、ゆっくり歩くことしかできない。ほぼ「クロノ・トリガー」のそれである。

ストーリーが進むと海上移動が加わり、最終的には空中を自在に飛び回れるようになるのもお約束。ただし、現代のゲームではもはや必須みたいになっているシステム「ファストトラベル」は、このゲームではできない。そこも、あくまでも30年前の風潮に準拠。
 

戦闘

戦闘は基本的にシンボルエンカウントで、制限時間の無いターン制。3人までのパーティを組んで挑み、コマンド選択で行動する。
システムのベースとしているのは、やはりクロノ・トリガーだろう。

自キャラが行動していくと、MPとは別に「コンボ技ポイント」を溜めることができ、それを消費することで複数キャラをによる強力な「コンボ技」を発動できる。
しかし、攻略するうえで重要となるのは各々のダメージ効率そのものではなく、「強ヒット」と「強ブロック」、さらに詠唱キャンセルにある。
 

強ヒット、強ブロック

強ヒットと強ブロックは、いわゆるジャストヒット&ガードのことで、特定のタイミングでボタンを追加入力すると与ダメージが上乗せされたり、被ダメージを軽減できる。ここは「スーパーマリオRPG」のようなシステムである。

攻撃スキルのほか、回復スキルにも影響があるのが特徴。
これ、チュートリアルでは「できたらラッキーくらいの気持ちで」みたいな説明をされるけれど、中盤以降は必須のテクニックになる。たしかに序盤はチャレンジせずともなんとかなるものの、敵の攻撃が熾烈になってくるとこれらのアドバンテージを軽視できない。
ボタン押下のタイミングをいち早く掴むことがポイントとなる。
 

ロック

数多のRPGよろしく、このゲームにもいわゆる「属性」の概念があり、敵キャラにはそれぞれ特定の属性に対して弱点と抵抗力を持っていたりする。ただ、それとは別に、敵が数ターン掛けて放つ大技を、放たれる前に指定された属性の攻撃を与えることでキャンセルさせることができるシステムがある。

ゲーム中「ロックを壊す」と表現されるいわゆる詠唱キャンセルも、先述のジャストヒット&ガードと併せて戦闘を優位に進めるうえで非常に重要になる。ロックを壊すために必要となる属性は敵の弱点属性であるとは限らず、しかも数パターンあるうちからランダムで決定されるようで、合致させるのには運もある程度要する。攻撃方法とその順序を適切に組み合わせる感覚はパズルそのもので、意外と頭を使う。

これらをうまくこなせないと速攻でやられるか、道中で回復アイテムが尽きる。実際、ボスの打倒よりも、ダンジョン内の雑魚キャラを往なして進むほうが難しい印象だ。
 
ただ、難易度調整機能もデフォルトで備わっており、いつでも切り替え可能なのが救いである。昔のゲームのように理不尽な難易度で"詰み"、とはならない配慮は、やはり現代のゲームらしく万人に向けた遊びやすい作りになっている。

このように文章にするととっつきにくい印象だけど、やることはシンプルだ。ダンジョンは広いけれどエンカウント回数はそれほど多くはなく、ダレずに楽しめる。
 

アクション"風"

戦闘以外では、各ダンジョンのギミックも豊富に用意されている。おなじみの謎解き系が多いけれど、ストーリーが進むと自キャラの操作方法が増えていき、移動においてはアクションゲームさながらの動きをする。

といっても、足を踏み外して落下ダメージを受けるとか、時間制限があるなどの要素は無く、シビアな操作は要求されない。あくまでもただ走り抜けるだけの単調なものにならないように"冒険している感"を演出しているだけなので、アクションゲームが苦手でもまったく問題なく進行できる。

 

2D"風"

ドットで彩られた世界だけど、すべてそうではない。光の演出や一部の物体は3Dグラフィックとなっている。
その最たるものが、昼と夜の演出である。このゲームはメタ的な意味において時間の概念は無いけれど、時間帯を任意に変化させるギミックがある。

変化する時間によってフィールドの雰囲気や影の位置も連続的に変わる。これは、2Dドット全盛期のゲームでは難しかったであろう表現だ。ドット特有の雰囲気を壊さない、むしろ際立たせる細かい演出技法が光る。

現代においてドット絵はあくまでもモーショングラフィックスのひとつであり、レトロ感を醸す表現技法として採用されることをうかがわせる。
 

サウンド

サウンド面では、概ねスーパーファミコンあたりのBGMやSEを意識しているものが多いように思う。音源がそれと近しい。
BGMにも各々"昼版"と"夜版"があって、時間に連動してシームレスに変化するのが面白い。イコライジングの異なる二曲を同時に流しておいて、時間帯によってミキシングを変えているのだろうか。
また、キャラクターや特定のオブジェクトが曲に合わせてモーションを取っていることがあるのも、見ていて楽しい。

こういった気づかなくても問題ない、だけど気づくと嬉しい"お遊び"が随所にあるのも、このゲームの魅力だ。
 

キャラとストーリー

登場人物たちは、時折挟まるセル画調のアニメーションとともに、クセがありつつも生き生きとしている。

主人公以外のメンバーは終盤まで割と頻繁に入れ替わる。それでも、誰もがストーリーに上手いこと携わっていて、それぞれ愛嬌がある。むしろ相対的に、主人公二人が無個性が過ぎる気がするくらいだ。

ストーリーは基本的に一本道。主人公一行が対峙する、それまでよくわからなかった謎や事象が徐々に明かされていき、世界の根幹に関わっていくようになる。
言ってしまえば、運命に翻弄される物語はお決まりの展開といえばそのとおりで、目新しいものではない。だれどそのくらいでいいのだと思う。このゲームでは、むしろその"変哲の無さ"が求められているとすら思える。
とはいえ、特色もある。主人公であるふたりは、当初から自身が世界の根幹に関わっていく運命にあることを知っているところだ。立場がそうさせているとも言える。
行く先々で愉快なキャラクターが登場し、彼らが上手いこと手綱を引いてくれる。

また、ひとたび関わったサブキャラクターがのちに再度登場する展開も、ていねいに作られていて好ましい。
 
キャラクターのセリフも、日本語訳がおかしいのか時たま不自然なところがあるけれど、それもメモリーの少ないファミコン時代のゲームにあるような、文法を極端に切り詰めた文体みたいなものだと思えば、さほど気にならない。「味」として呑みこめる。
 

メタ的な部分の改良点

気になる点といえば、割と暗いマップが多く、視覚的に見づらいことがある点か。
どこを切り取っても絵になるような、ビビットで美しいドットの世界なのだけど、主に洞窟や建物内にあるダンジョンは薄暗いものが多く、マップを把握しづらいことがある。

これは先述した光の演出のひとつなのだろう。一応自キャラの位置は常に判るし、感覚を掴んで慣れていけば問題ないものの、表現としてもう少し緩和してもいい気もする。
 
戦闘面では、"逃げる"コマンドが無いこと。隠しコマンドで存在しているのかと探すも、見つけられなかった。
強制戦闘以外は、動きまわる敵のシンボルを避けて進めばいいのだけど、それも難しい場面がある。ダンジョンを攻略するうえで、やはり雑魚敵との戦闘を省略したくなるときがあるので、なんらかのペナルティを付けてでもその手段が欲しい。
 
あとは、トゥルーエンド到達の条件が意外と厳しめであることくらいか。これは、プレイヤー自身が寄り道をして細かいイベントを逐一こなしながら主要ストーリーを進めるスタイルの場合は大して気にならないけれど、そうでないなら割と手間である。おそらくは後者のほうが多いだろうから、到達の条件を知ったら面食らうかもしれない。
 

まとめ

なんにせよ、「あの頃の作品」を忠実に、ていねいに再現しているゲームであることは間違いない。「これ、どっかで見たよな」という印象を、これほどポジティブな意味で捉えられるゲームもなかなかないだろう。
戦闘をこなせばレベルがガンガン上がるわけでもなく、お金が余るほど貯まっていくわけでもない。プレイヤーのスキルはある程度要求されるけれど難しいものではない。古き良きゲームから無駄を削ぎ落して現代版として洗練させた、良いバランスのゲームだと思う。
 
個人的には、作りこまれたドット絵を眺めているだけでも楽しい。

昨今の、3Dモデリングのキャラを複雑なコントローラー捌きでグリグリ動かし、高速で進行していくゲームに目が回るようになっている自分には、こういった一枚絵を鑑賞しているようなゲームのほうが性に合っている。
ミニゲームも秀逸。本編そっちのけでいつまでもプレイできる。

 
終。