デノンの3WAYスピーカー「SC-A77XG」を入手して音を出してみた。その所感。
リーフ型ツイーター
オークションサイトでたまたま落札できたこのスピーカー、2種類のツイーターを備えていて、一方は「リーフ型」なるめずらしい形状のものだ。
リーフ型ツイーターはリボン型ツイーターの亜種らしいのだけど、どういった仕組みなのかイマイチよくわからない。ともかくこれが、200kHzの超高音域まで再生するスーパーツイーターなのだという。
正直なところ、人間の可聴周波数の上限の10倍にあたる周波数を再生することにどんな意義があるのか、自分には理解が及ばない。とはいえ、リボンツイーターの類がついたスピーカーは総じて高価で、なかなか拝聴もできない。動作品を手頃な価格で入手できたのは、めぐり合わせかもしれない。
というわけで、ハイレゾ音源の持ち合わせはほぼ無しに等しいながら、聴いてみることにする。
外観
リーフ型ツイーター以外の特徴としては、天面側から見ると背面が窄まっているエンクロージャーだ。
左右の面にRが付いたシルエットとなっており、光沢のあるウレタン仕上げと相まって美しい外観となっている。
表層は突板。すべての個体がそうなっているかはわからないけど、目を凝らすと虎杢が浮いており、高級感がある。
背面には口が大きなバスレフポートと、バイワイヤリング対応のスピーカーターミナルユニット。
スピーカーターミナルのポストはやや大きめで重厚。キャップの頭が六角形なのは初めて見たかも。
中間にあるツイーターは一般的なソフトドーム型。スーパーツイーターと一体で組み込まれている。
音
再生周波数の下は40Hzと、実は低音も出るSC-A77XG。
しかし、聴感上はそこまで量感はなく、無難な鳴り方。一般的には物足りない感じがするかもしれないけど、個人的にはこれくらいでちょうど良い。
高音域はさすが、よく伸びる。もっとキンキンするかと思っていたけど、意外と丸くて聴きやすい。
中音域はフラットながら、遠い。全体のバランスからすればワイドレンジであるうちのフラットといえなくもない。
特にボーカルに「旨味」が無く、平坦でつまらない音と感じる。もっと張りが欲しい。
定位感、音場は平均的。
なんというか、普通過ぎて評価がしにくい。
周波数特性を見ると、1.2kHzから5kHzあたりまで凹んでいる。どの角度から収音しても、この部分の落差は埋まらなかった。これが「つまらなさ」の原因だろう。
分解/整備
内部を見ていく。
ウーファー
まさかと思っていたけど、ウーファーのフレームはABS製。これが、手で力を加えると割と簡単にゆがむのである。
一応、「77XG」はかつてのデノンの最上位シリーズだったはず。それでこの仕様は、残念でならない。
前回見たケンウッドの「LS-1001」が堅固だったため、余計貧弱に感じる。
また、前面プレートの厚みが、化粧パネルを含めても5mm、エンクロージャーに固定するネジ孔部で3.5mm程度しかない。
ここも、タッピングネジ4本のみで固定するには心許ない。JBLのJ216などのように、経年劣化でこの部分からプレートが割れてくることが予想される。
マグネットを覆うバックプレートにも、接着剤かなにかが付いた素手で掴んだかのような指紋が残っていて、あまり品質の良いところで作られてはいないことが窺える。
ツイーター
残念なものを見てしまったので、作業意欲はダダ下がり。
ツイーターとのスーパーツイーターが一体となったパネルも、ウーファーと同様ABS製。
どちらもネオジウムマグネットを採用しているらしく、ユニット自体は薄型軽量。
クロスオーバーネットワーク
背面のスピーカーターミナルユニットを外すと、裏面に背負っているネットワーク基板にアクセスできる。
一枚の基板にパーツがすべてはんだ付けされている。しかも、コンデンサーはすべてフィルムコンデンサーで、ツイーター側のコイルは空芯コイル。さらにすべて方向性の管理までなされている。回路構成はシンプルなれど、外形寸法が大きいものをよく載せきったものだと感心する。
パーツのメーカーはすべて不明。
コイルのインダクタンスも、外観からは確認できない。測定する意欲がないので、不明なまま。
使用されているケーブルは一般的なスピーカーケーブル。スーパーツイーターのみ逆相接続となっている。
ウーファー直列のコイルを小さくすれば、引っ込み思案な中音域が改善しそうな気もするけど、今回は弄らない。
スピーカーターミナル
スピーカーターミナルは分解し、酸性洗剤で洗浄しておく。
エンクロージャー
筐体を覗くと、ウーファーの真後ろに補強材が一本渡っている。
また、ウーファーとツイーターの間付近にも、台形リング状の補強が成されている。
吸音材は使用されていない。側面が緩くカーブした独特のエンクロージャー形状の共鳴音を生かそうとする思想のようだ。
既存のままでも十分だけど、ワンオーナー品なので細かな傷はどうしてもできてしまっている。市販品を使って適当に磨き上げれば、やはり相応に綺麗にはなる。
まとめ
ブランドのフラグシップスピーカーのひとつだったわけだけど、外観ばかりコストがかかっていて、肝心の音質が伴っていなかったのが遺憾に堪えない。
超高音域までワイドレンジ化するのもいいけど、ブックシェルフスピーカーにおける土台固めというか、ニアフィールドで心地よく聴かせる音質をまず確立してほしかった。
リーフツイーターに拘らなければ、これより安価で良いスピーカーはいくらでもある。
終。