いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

YAMAHA MS-2500S を鳴らしてみる

ヤマハ製の古いスピーカー「MS-2500S」という謎の製品を手に入れた。
開腹して内部を見つつ、音も鳴らしてみる。

テンモニの親戚?

外観

フリマサイトに出品されていたこのスピーカー。

YAMAHA MS-2500S
左右対称の配置にウーファーのホワイトコーンと、見かけから判断するにヤマハの大ヒットスピーカー"テンモニ"こと「NS-10M」の亜種で、日本未発売製品かなにかかと思い、入手。

品番の頭文字が「M」。「N」ではない
艶あり木目調の外観は、ONKYOの「SK-185」を思い起こす。

morning-sneeze.hatenablog.com

ツルツルの手触り

かなり赤みがかっている。マホガニー調なのだろうか
筐体の大きさはテンモニと同じ。ただ、細かくみていくと、外観だけでも異なる点はけっこうある。
 
まず、搭載しているユニットが、テンモニと異なることがわかる。
ツイーターの形状がソフトドーム型ではなく、コーン型だ。

ツイーター
一般的に、コーン型のほうが安価とされるようなので、グレードダウンか。
 
チョコレート色に塗られた背面も、だいぶ簡素というか、ありふれた造りになっている。

背面
テンモニでは、クロスオーバーネットワーク一式を背負ったバックプレートが、それなりの面積を占めていた。しかしこちらは、スナップイン式のターミナルが付いているのみ。
 
その上の銘板を見ると、インピーダンスは同じ8Ωでも、許容入力値が若干低いことがわかる。あちらは定格25W、最大50Wだった。

汎用的
細かいところでは、サランネットを留めるブッシュも、材質が樹脂ではなく硬質ゴムになっている。

よく見かけるゴムのダボ穴
今回、このスピーカーが手元に届いた際、サランネットは脚がすべて折れた状態だった。配送中に破損した模様。あまり丈夫ではないらしい。
 

分解

内部を見ていく。ウーファーユニットから外していく。

汚れているので、あとで漂白しておく
使われているネジはプラス穴で、初代テンモニと同等。

フレームも金属製
ユニットの結線にファストン端子が使われている。あちらははんだ付けだったはず。

取り外しが容易で助かる
ウーファーユニットは、テンモニのそれと品番がわずかに異なる。「JA1802A」とある。
初代テンモニに積まれているのは「JA1801」。
見比べていないからはっきりと分からないけど、JA1802Aのフェライトコア周りはJA1801より一回り小型になっている気がする。許容入力の減少は、このあたりが由来かもしれない。
 
ツイーターは、「JA0528A」。

ツイーター裏側
こちらは明らかに厚みが薄く、マグネットも小径。

こちらもファストン端子着脱式
どうやら、テンモニの函体を利用してより安価に造られた機種であるのは、間違いなさそう。
 
今回はクロスオーバーネットワークの改修はしない。内部を見ていくだけに留める。

俯瞰
使われている吸音材は、やっぱりグラスウール。配置方法や分量も同じ。
ネットワークは、硬めの厚紙のようなものに各パーツを接着する方法で固定されている。スピーカーターミナルユニットもここに固定されているのは、強度的にちょっと頼りない感じもする。

クロスオーバーネットワーク
このあたりの雰囲気は、なんとなく「NS-10MT」に似ている。ただし、能率調整だろうか、ツイーターには並列でセメント抵抗器がひとつ繋がれていて、ここはテンモニシリーズとは異なる。
 

肝心の音はというと、初代テンモニと傾向は同じ。中高音が前に出てくる。

ウーファーの漂白を済ませたMS-2500S
ただし、高音がキツいとされるツイーターが別種のためか、耳に優しい。あまり高い音は出ないテンモニが、さらに丸くなってカマボコに近づいた感じか。
ワイドレンジな現代ソースを聴くなら、オリジナルテンモニよりむしろ聴きやすいかもしれない。ただ、このレアな機種をわざわざ探すほどの音かというとそんなこともなくて、「素直に初代か10M Proを手に入れましょう」と答えるだろう。

周波数特性
 

正体は?

インターネット上に情報が無いこのスピーカー。
 
情報の断片を拾い上げ、いくつか推定するに、性能面で「NS-018」や「NS-044」と同等のように見える。
また、前面のネットは異なるけど、「NS-C7」も雰囲気が似ている。
 
とはいえ、自分の検索能力ではこの程度までしか確認できなかった。あとは、「MS」が「ミュージックシステム(Music System)」の頭文字であることくらい。
 
よくわからないので、当時のリーフレットらしきものを入手してみる。
すると、どうやら「MS-2500」とは、レシーバー、プレイヤー、スピーカーの3点がパッケージされたAVシステムのことであり、このスピーカーはその一部だったことが窺える。

YAMAHA MS-5000/ PC-9 / RC-100II / MS-2500
この資料の発行年は不明だけど、NS-044が1980年頃登場していることから、おそらくこれも同じ年代だろう。
中身が同じスピーカーを、ガワだけ変えて専用品として売り出していたということか。
 

まとめ

このスピーカーはしばらく聴いてから、特に改造などもせず手放すことにした。
家が手狭になっているのと、コレクションは趣味ではないから。もっと相応しい居場所があることだろう。

テンモニ亜種
まだオーディオ界隈に余力がある頃の、一大企業の販売戦略のひとつとして造りだされた代物だった。
 
終。