謎のスピーカー「SK-185」を入手した。このメンテナンスの内容を記しておく。
入手経緯
先月、別の用事の後たまたま立ち寄ったBOOKOFFで見かけて、ちょっと迷った挙句購入した。
スピーカーなんて持ち運ぶつもりで来店していないので、手提げ袋に入れて持ち歩かなければならなかった。薄っぺらいビニールの袋に入れられた何の養生もされていないスピーカーを、なんとか傷を付けず持ち帰ったのだった。
詳細不明のスピーカー
このスピーカー、まず見た目がONKYOらしくない。6面すべてが鏡面仕上げの木目シートが張られていて、さすがに高級路線の質感には届かないけど、民生機のオーディオコンポ用のスピーカーにしては豪華。
前面保護ネットにメーカーエンブレムがなければ、ONKYO製とはわからない。
幅約142mm、高さと奥行きが約170mmというコンパクトな筐体。
一見はサテライトスピーカーのサイズ感だけど、本体にはブラケット類を取り付けられるようなネジ穴や金具は一切無い。型番もサラウンドAV機器用のそれではなく、スピーカー単体に付せられるもの。
背面の銘板に「Use with CHR-185 only」とあるとおり、CDチェンジャーレシーバーのCHR-185に接続されるスピーカーらしい。
しかし調べられる限り、当時のメーカーのカタログを見ても、このスピーカーは影も形も無い。CHR-185も単体販売みたいだし。
ヨーロッパ諸国向けの古いカタログにも載っていない。なぜBOOKOFFにあったのかも含め、謎のスピーカーだ。
改修前の音
いつものように、数年メインで使用しているYAMAHAのAVアンプ「RX-S602」に接続。ケーブルは前回から引き続き「BELDEN 8470」とした。
意外にも中低音が出る。
中音域は厚く、前に出てくる。低音域はさすがに高めではあるものの、十分な量が出ている。見かけによらず元気なキャラクターだ。
反面、高音域はあまり出ていない。これは単純に、ツイーターからの出音が小さいような鳴り方。2WAYスピーカーならもうちょっと出ていてもいいな。
上下左右の音場感は一般的。定位もそこそこ。
ただ、重量が軽いからなのか、ヘンな共鳴音がある。エレキベースの特定の音だけ盛大に出てくるので、ソースによっては違和感がある。
とはいえ、もっとチープな音なのかと思っていたけど、普通に聴けるレベルではある。クラシックよりEDMが得意というのも、見た目とのギャップがあって面白い。
分解
内部を見てみる。
ウーファーは前面に六角穴のネジ4点で留まっている。
最近導入したベッセルのボールグリップドライバーで外す。このドライバーは力を入れやすくてよい。
向かって左側に端子があり、ターミナルポストからとツイーターへの送り配線が繋がれていた。
エンクロージャー内にネットワークは無く、背面のバスレフポートを塞ぐように吸音材が詰め込まれていた。特に固定はされていない。
この吸音材、もう一つのほうは全然違う入れ方をされていた。結構適当らしい。
エンクロージャーの素材は、ハードボードに近い目が細かめのファイバーボード。厚みも1cm以上あり、しっかりしている。
ツイーターは小さな金属製振動板が付いたペラペラなもの。
型番等の印字は一切ない。
HPF用にBENNIC製の3.3μF電解コンデンサーが付いていた。
静電容量を測定してみると、左右とも4.4μF前後に増えていた。
リファイン
シンプルなスピーカーなので、おのずと手を入れる場所は限られる。
ツイーター用コンデンサーは、最近入手したPanasonic製メタライズドPETフィルムコンデンサー「ECQE」に交換。
また、ウーファーからツイーターまでのケーブルが縫い糸のような極細のものが使われており、簡単に引き千切れてしまいそうだったので、一般的なPVC0.75sqケーブルに引き換える。
ウーファーまでのケーブルは、OFCスピーカーケーブルに引き換える。
吸音材は、バスレフダクトをぐるりと一周するような配置に変更し、接着剤で固定する。
吸音に関しては、ミクロンウールを別途購入して、量を増してやってもよかったかもしれない。
仕上げとして、金属製スパイクタイプのインシュレーターを用意して、底部に捻じ込もうかとも考えたけど、外見上なんとなくアンバランスな気がして見送った。
改修後の音
空気録音したものを動画にまとめている。改修前後の音が一定間隔で切り替わるようになっている。
さて、手を加えた後の音は、高音域がしっかり出るようになった。
これはフィルムコンデンサー化しているので当然だ。音数が少ない音源ソースだと、その効果が如実である。
ただし、あまり質の良い高音ではない。耳をつんざくようなキンキン鳴りはしないものの、金属っぽさがあってちょっとチープ。とはいえ、改修前と比べれば雲泥の差である。
おかしな共鳴についても、完全ではないもののだいぶ抑えられた。これは吸音材の再配置がうまく機能してくれているのだろう。高音域が改善され、全体のバランスが良くなったのもある。
まとめ
Amazonなんかでよく見かける、安価ないわゆる"中華アンプ"との組み合わせが、相性良さそうだ。デジタルアンプの無機質な音と、なんとか量感を持たせようとするSK-185が、音楽鑑賞的にうまいこと釣り合ってくれるように感じる。
また、このコンパクトな筐体で2WAYであり、見た目も美しくインテリアとしても置きやすい。まさにデスクトップ向きといえる。
インシュレーターの敷き方を研究すれば、さらに良い音を出してくれるだろう。
終。