ヤマハのスピーカー「NS-B500」を入手し、音を聴いてみた。

NS500シリーズ
またヤマハのスピーカーが手に入った。「NS-B500」というブックシェルフ型スピーカー。


台形の前面バッフルが特徴的なこの製品は、同社のかつての高級ライン「Soavo」や「NS901」シリーズのデザインを意識しているものと思われる。

シリーズのなかでは小型のモデルで、ホームシアターを組むさいのサテライト的な使用を想定された、いわばサブ扱いの位置付け。しかし、デスクトップに置くにはこのくらいのサイズがちょうどいいということで、見た目がわりと綺麗そうな中古品を購入。

10年以上発売されてきたロングセラーの本シリーズも、ヤマハのウェブサイトを覗くと、メインとなるフロア型スピーカーの「NS-F500」とサブウーファーの「NS-SW500」には、すでに"生産終了品"の札が下がっている。本機も終息していくさなかと察するところ。
外観
前面ネット
前面の円形のネットはマグネット着脱式。一枚あたり三か所のマグネットでミッドバスユニットの固定用ネジに吸い付くかたち。


形状
先にも挙げたとおり、前面バッフルが天面に向かって窄んだ台形をしており、キャビネット部もバッフルに連なるように両側面がスラントとなっている。


たしかオンキヨーの高級機にも似たような雰囲気のモデルがあった気がするけど、通常の直方体よりも製造の手間がかかるはずでも、エントリーグレードの製品で取り入れてくるのはさすがとしか言いようがない。

仕上げ
近代のヤマハの十八番である鏡面仕上げは、本機においては前面バッフルのみで、それ以外の面は簡単なデボスが施された黒のPVCシート仕上げ。

黒塗りの質感は、これまた高コスパで異様なロングセラーの「NS-BP200」と比べると、こちらはおそらくMDFに塗装が施されたもので、高級感は高くはないにしろ、いかにも樹脂っぽいチープな印象は和らいでいる。
また、バッフルとキャビネット部の切り返しの部分に、銀色の糸状の縁取りが化粧として施されて控えめなアクセントとなっている。

背面、底面
密閉型エンクロージャーは、台形の妻面に埋もれがちな特徴として、筐体の奥行き方向の寸法が短いことも挙げておく。

底面にはゴム製の脚がネジで固定されている。

ドライバー

バッフルとのコントラストで余計にまぶしく見えるホワイトカラーも当然のように採用。

ツイーターのほうも、やはり定番となっている「DC(Direct Coupled)-ダイヤフラム」を採用したアルミ合金製ドーム型振動板が使われている。

ドームの前面にはグリルのガード。その周囲にはサラサラしたスエード調のリング状のシートが貼られている。
音
さっそく音を聴いてみる。アンプは同じヤマハのAVレシーバー「RX-S602」。インシュレーターは本体についているゴム足のまま。ベースはいつもと変わらず花崗岩プレートの下に真ちゅうブロックを敷いたもの。
能率感が低く、中音がこもる。それまで鳴らしていたスピーカーがDALIとMONITOR AUDIO、古いテクニクスで、どれも気に入っていたので、それらに耳が慣れて余計に比較してしまう。
低音は量感とレンジ感が小型密閉型相応のもの。ひずみ感が小さいのも相まって、中音の邪魔をしない感じ。
高音は、ヤマハらしい自然な伸びを持つ。金属製振動板らしい華やかさがありながら、それを前面に押し出さない落ち着いた音。

なんだこんなもんかァ、と自分のなかでたいして印象づかないまま翌日にアンプから切り離し。別のスピーカーに移行したあと、こちらは三週間くらい寝かせてしまった。
しかし、久々に引っ張り出してきて周波数特性を見てみると、そこまで中音が落ちているわけでもないようだ。ひずみも小さめ。


細かな起伏がそこそこあるものの、全体のバランスとしてはフラットに寄っている。NS-U50のようなあからさまな谷も存在しない。

内部
聴感とだいぶ乖離があるなと思いつつ、NS-10MMで実施したようなミッドバスをネットワークスルーとするか、あるいはインダクタンスを下げるかして調整するか、そのあたりを判断したいので、中身を見てみる。
コネクターユニット

仕方がないので、バッフルからドライバーを取り外す。ミッドバスは6つの六角穴ネジを除けるだけ。
ツイーター
ツイーターのほうは、ネジ頭がスエード調シートの裏に隠れている。最外周を指で触ると4か所が凹むので、シートを剥がせばすぐにアクセスできそう。

今回は用事がないので、ひとまずそのままとする。
エンクロージャー
エンクロージャーはすべてMDF。厚みはわからなけど、標準的かやや薄め。補強の類は無い。

ミッドバスのすぐ後ろに折り畳まれたパサパサのエステルウールのシートと、天面側にはシートとは異なる質感の柔らかめのウレタンウールが接着されている。
ディバイディングネットワーク


それはいいとして、パーツの表記を信じるかぎり、LPFは大きなコイルを用いて大胆に濾波しているようだ。かといってHPFでそれをカバーするわけでもなく、担う帯域をだいぶ絞られている。
……ミッドバス側は、ちょっと削ぎ過ぎじゃないか? 感覚からして、コイルは1.2mHくらいでもいい。そちらを弄らないのであれば、ツイーター側を2.2μF単独の6dB/octにするとか。能率感が低いのはこのあたりのチューンだろうな、と思う。
ミッドバス
一応、取り外したドライバーも見ておく。



以前見たMONITOR AUDIOのBR2にあったような、フランジ一体型の柔らかめの樹脂フレーム。フェライトマグネットはシングルで、非防磁。ヨークに通気孔は開いていないけど、ゴム製サラウンドがしなやかで、振動板は比較的よくストロークするタイプ。

整備
方針
ネットワーク回路の状態を見てしまうと、手を入れたい衝動に駆られてしかたない。いくつかシミュレーションもして改修案を作り、パーツの用意もしたけれど、周波数特性はそこまでおかしいものではなかった事実がいつまでも引っ掛かり、思いとどまらせた。
結局、今回はオリジナルのままとして、簡単な手入れをして仕舞いとする。
バインディングポスト
バインディングポストを固定するシャフト部のワッシャーとナットを、それぞれ銅製と無垢の真鍮製に替える。

ここは通常はそのままでも問題ないはずだけど、質の悪いものだと高音域の音に影響が出てしまうことが判ってから、なるべく交換するようにしている。
コーン
コーンがなぜか汚れているので、それも洗浄。弱アルカリ洗剤と絵筆で拭いていく。

だいぶ綺麗になるけど、長期間紫外線に曝されて劣化したポリプロピレンのような、粉を吹くようなよごれかたをしていて、その跡は薄っすらとシミになっていて完全には落とせなかった。
ゴム製のサラウンドとフランジ部も、コーンと同じように拭き掃除。ただしサラウンドは、洗剤を使うと表面がカサカサになるので、最後にラバープロテクタントを薄く塗って保護しておく。


聴きなおし
組み上げて音を聴いてみると、三週間前に聴いたときの印象とは異なり、それほど悪くないな、と感じるようになっている。
眠い雰囲気は変わらずあるけれど、中音の落ちこみはあまり気にならなくなってちょうどいいバランスになっている。シルキーで、なんでもそつなくこなす優等生。

もちろん、以前と機能面でなにも変わっていないので、つまり自分の体調のほうが変化したことで「好く聴こえるようになった」のである。最近は音に敏感で、特に高音は耳につくし、メリハリのある音は喧しく感じるようになっているので、このくらいの静かな音のほうが合っているのだろう。併せて、周波数特性をビジュアルで確認したことでそれに意識が持っていかれていることもあるし、自分がヤマハ製スピーカーが好きだからという贔屓もある。

なんと、自分の記憶と感性の尻腰の無さよ。
まとめ
入手当初は早々に手放そうと思っていたのに、結局は、このスピーカーを鳴らしながらこの記事を制作するに至っている。最近Spotifyがロスレス再生に対応したということで、数年離れていたサブスクに再加入してジャンル問わずいろいろ聴いてみている。

音の印象は上述のとおりではあるものの、それはそれとして小音量で鳴らすと物足りなさを感じるのも確か。ある程度のボリュームを突っこめることや、インシュレーターの吟味など、2chステレオで構えるなら環境をしっかり整えられることが前提のスピーカーであるのかもしれない。
終。




