いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

KENWOOD LS-300G(LS-1001) 発売当時のレビュー記事抜粋

ケンウッドのスピーカー「LS-300G(LS-1001)」発売当時の各オーディオ雑誌に掲載されたレビューから、音に関する部分を抜粋し以下にまとめる。
 
 

ステレオ 1993.11.

聴きました! 今年の新製品集中試聴 石田善之・福田雅光

福田
(前略)大変ナチュラルで柔軟性に富んだ重量感のある音で、奥行き、幅の出方など、今までのケンウッドのスピーカー設計の流れとはずいぶん違う要素を感じまして、これは私は非常に魅力に思ったのです。オーソドックスな小型2ウェイの中で、奥行きを出してくる再現力が豊かに備わっているのが魅力です。帯域全体にわたってバランスが安定していることと、音が素直につながって荒さがなく、歪みが大変少ないなという感じがしました。
石田
ケンウッドのみならず、もしかすると日本の今までのスピーカーの流れで、今までこういう鳴り方のものはなかったかもしれません。(中略)歪み感を抑えてレンジをぐんと広げている。 特に低域のレンジ感はなかなかのもので、一回りも二回りも大きい、ブックシェルフ型スピーカーと比べても一歩もひけをとりませんね。(中略)音の鳴り方に常にゆとりがある。音場性にしても、開放感のある中に音像の整え方、音場の広さというものを聴かせてくれます。
福田
非常に表情がきめ細かく再現されています。高域も繊細感に富んですっきり伸び切っている様子がありますから、倍音系も大変美しい表情が備わって、音楽全体の雰囲気、ニュアンスというものを豊かにしている要素になっています。大人というか、高級感がありますね。欲としましては、透明感とか音像のコントラストはもう少し高めるような方向も欲しいかなという気がしました。(後略)

 

ステレオ 1993.12.

15人の評論家が選ぶ私のベストワン '93冬

石田善之
海外製のスピーカーにあまりにも似すぎているとの批判もあり、同感ではあるが、この価格でよくここまで音をまとめている。殊に低域は豊かで、若干強調気味だが、小型でもこれだけ出るのだ、というひとつの証明になる。
福田雅光
このランク、国内外の製品がひしめき激戦だ。 候補はいくつかあるが、ケンウッドLS-300Gに軍配を上げた。オードソックスで実に豊かなボリュームを備え、ナチュラル基調の鳴らしやすい性格である。

別冊ステレオサウンド '94 NEWコンポーネント

ブランド別完全リポート 国内篇 柳沢功力

(前略)とくにヴォーカルの再生を重視したという本機では、ウーファーと近接配置したトゥイーターに1.5kHz以上の広帯域を受け持たせ、声の自然さを追求。小型らしからぬ豊かな低音も聴かせる。
 

ステレオサウンド 1994.Winter

'93-'94 ザ・ベストバイ・コンポーネント595選 スピーカーシステム20万円未満

傅信幸
音へのやみくもな探求のあまり、音楽不在の攻撃的な音、という多くの日本の小型スピーカーがおちいったジレンマから抜け出した1台。情報量不足のあいまいさや音のアクの強さが何らかの音楽性を生んだ、というのとも一線を画した1台。響きの美しさ、サイズを超えた低音の伸びとスケール感をもたらす。(後略)
細谷信二
(前略)音のまとめ方はヨーロッパ製コンパクトシステムに範をとり、音域バランスのとり方のうまさや響きの微妙なニュアンスをうまく描写してくれる。解像度よりも音楽全体の雰囲気をうまく鳴らす点が新しい魅力だ。
 

ステレオ 1994.1.

STEREO試聴室 話題の新製品を聴く

石田善之評
とにかく小型さを感じさせないたっぷりと豊かな、朗々とした鳴り方で、スケールが大きい。小型スピーカーにありがちな硬さにつながる要素が全くなく、ピーク/ディップも大変よくおさえこまれているし、2ウェイとしてのつながりも見事なものを感じさせる。その結果、音場空間も大きく、のびやかさは大型スピーカーに勝る部分もありそうだ。
オーケストラのコントラバスティンパニーといった低音部もしっかりと出ているし、大ダイコの空気をゆるがせるようなところも感じさせる。これまでの小型スピーカーとは全く印象の異なるところにこのスピーカーらしさがあると言えよう。豊かな低域をバランス良く聴かせつつ、高域も若干強調し、ボーカルは少しハスキーな調子になる。ただ、能率はひどく低いのでアンプとの相性には要注意。フロントネットは若干音場に関る。
入江順一郎評
海外製に似たスピーカーがあるが、音は少し特長をもたせている。エネルギーバランスとしては、中域が少し引っ込んで低域を増やしたバランスになっており、これが特長になっているようだ。したがって、ピアノはやや薄くなっており、響きも同様な感じになっている。女性ボーカルでも、この部分が効いているようで、潤いとしてはもう少しだが、価格からしてあまり無理は言えないとは思う。バイオリンでもブラスでも、やはり薄さと細みの部分が気になるが、細かい音自体はけっこう出ており、分解能は高く聴こえる方である。ただ、オーケストラになると、粒立ちの良さはあるが、全体にやや小振りになり、薄さが表面に出てくるし、音場感も同じである。低域は中低域から量が多く、チェロも堂々としており、コントラバスの量感も得られるし、ジャズベースの弾力感も充分といえる。
金子英男評
(前略)全体をみると割合穏やかな印象をうける。このクラスとしては品性は良い方であり、張らせずにあまさに加え優しさを巧く配分した感じになっている。余り再生の帯域幅は広くはとっていないが、このランクとしては充分である。その帯域内のエネルギーの分布とバランスとなると、少し特徴ずけていると思われる部分がある、中低域から低域にかけてのややあまめの部分と高域で多少細身になる部分があるが、それほどきつくなる事もなく多少の明るさを生む位である。ただ全体に密度の不足から来る音像はフォーカスが肥大しているので集中力となると散漫に映るが、聴き心地は良い方である。
神崎一雄評
(前略)小型2ウェイの姿かたちからも、予想以上に豊かで厚みのある低域だ。やや緩めなところが無くもないが、サイズからは予想できないほどの低域だ。中域はなかなか自然であり、高域は伸びがいい。中〜高域は、価格で予想する以上に質が良く、声の自然な表情や、弦楽器のしなやかさ、けばけばしくならない撥弦楽器など、魅力度はなかなか高いものがある。ただ一点惜しまれるのは、すでに市場で人気のあるヨーロッパ製の小型機に余りにもデザインが酷似していること。それを意識した意匠でないことを祈りたい。音場は広がり奥行き共に充分で、空気感は温かみがある。音像定位も良好。小音量でのバランスもいい。前面ネット装着ではソフトになるものの抜けの悪化は少ない。
福田雅光評
肉厚なナチュラル基調で整ったオーソドックスな表現を持つスピーカーだ。中・低域のボリューム量が豊かな質感を構成しているためバランス的にも実に安定した構えがあり高域へも充分なエネルギー展開と解像度を備えている。このクラスとしては表情が豊かであり深みを出す低域は、コンポ入門用として普及クラスのアンプと組合せても鳴らしやすいタイプである。
(中略)中間帯域でのSN比はいま一つの傾向があり透明度やコントラストには限界もあるが、分厚い再現力はこくのある質感を醸し出しジャズ系の雰囲気も魅力であり、小音量でのバランスも充実している。グリルネット装着による副作用は少なく、むしろ表情はクリアな傾向をみせ常用する方がいい。
 

ステレオ 1994.2.

現代ローコストスピーカー総ざらえ試聴会

金子英男
ケンウッドの今までのスピーカーは、どちらかというと、高域の明るさを中心にしたものが多かったが、これは非常に方向を変えて、穏やかな感じを主体にした品位のよさというものを持つようになった。中低域から低域にややゆとりを少し持たせて、ほどほどに快く聴かせるうまさを持ったシステム。
斎藤宏嗣
中低域から低域にかけての開放感に満ちた、ゆったりとしたアコースティックな響きが一つのベースになっている。中域あたりでやや甘くなるところがあるが、高域方向は、多少、細身にシェイプアップして、やや遠方に定位させるようなピラミッドバランスというパターン。あらゆるソースを音楽的にゆったりと鳴らし、聴きやすい。
 

HiVi 1994.1.

新AV時代への羅針盤 ワイドビジョンにベストな小型スピーカーを釣り上げろ! 佐久間輝夫

(前略)エネルギーが充満した音というよりは、軽めのスッキリした音。聴感上のレンジも広いほうだ。SE(効果音)や音楽はいいのだけど、どういうわけか、セリフが遠く、もどかしさを感じてしまう。カーチェイスのスリルもいまいち。ただしこれは、音量控えめの場合の印象であって、これまで本機から受けていたイメージとは異なる。そこで、思い切って音量を上げていったら、手に汗握る迫力のカーチェイス・シーンを味わうことができた。どうやら、ある程度以上のパワーを入れてやらないと本領を発揮してくれないタイプのようだ。ただし、この場合でも耳障りな音を出さないので、安心して聴いていられる。
音楽は、映画よりもマッチング度が高く、好印象。低域は豊か。反応の速さというよりは、大らかな鳴りっぷりを楽しむタイプというべきか。余韻がきれいで、プレゼンス豊かな音のシステム。エレクトリック系の音楽よりはアコースティック系のソースで本来のよさが発揮されるシステムといえよう。
 

HiVi 1994.2.

K'sの魅力 朝沼予史宏

(前略)とりあえず別売りのスタンドに載せた。
一聴して、なかなか爽やかな音が聴けるが、この設置状態では低域が少しボケる。そこで、スピーカースタンドをターゲットオーディオのR3(10万円・ペア)に変更すると、俄然しっかりした低音感が得られた。充分な量感と伸びの得られる低域をベースにすっきりとした高域がうまくバランスした。瑞々しい表現が聴ける。かつて同社製のスピーカーはどちらかというとモニター的な音像の鮮明度を重視した鳴り方が特徴だったが、こちらは雰囲気のよい音場重視型の聴かせ方である。小一時間も鳴らし、ボイスコイルが温まり、ラバーエッジの動きにしなやかさが増すと、適度な温かみが感じられ、表現の柔軟性に富む、優しく聴き心地のよい音が聴けるようになった。おそらく、これが開発者の意図した音だろう。スピーカーの能率とアンプのパワーの関係で、オーケストラをそれなりのボリュウム感を伴って味わうにはギリギリの線だが、その他のソースではダイナミックレンジ的な不満はまったく生じない。もちろん映像と組み合わせても何ら問題のないクォリティである。(後略)
 

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