クオードのスピーカー「11L(77-11L)」発売当時の各オーディオ雑誌に掲載されたレビューから、音に関する部分を抜粋しまとめた記事です。
- フライヤー
- ステレオ 2004.12.
- ステレオ 2005.3.
- ステレオ 2005.6.
- ステレオサウンド 2004.Winter vol.153
- ステレオサウンド 2005.Spring vol.154
- オーディオベーシック 2005.Spring vol.34
- HiVi 2005.1.
フライヤー
ステレオ 2004.12.
話題の新製品を聴く
石田善之
須藤一郎骨太な雰囲気に、なまめかしいサウンドイメージが融合する。チェンバロなどの繊細な響きには、爽やかな音の拡散があって心地よい。フルートなどの妙になまめかしい質感が、聴き手を魅了する。ストリングオーケストラのサウンドステージには、繊細さをベースとしたスケール感があって、奥行きも充分に深い。抑揚感や、クラリネットの素直な木質感も好印象である。ピアノの存在感には明瞭なイメージが伴う。声楽の抑揚感には適度な肉付きと張りがある。オーケストラの華麗な展開には、明瞭に林立する楽器群をイメージすることができる。低域の質感も悪くない。低重心なドラムスには楽器の質感があって好ましい。ジャズボーカルの生気や豪快さも心地よい。
福田雅光
ステレオ 2005.3.
特集:こだわりのコンパクトスピーカー 厳選:コンパクトスピーカー! どれを選ぶ
石田善之(前略)音も低域〜高域まで全域にわたって密度感がしっかりしている。特に音場性や空間性の表現力も大変に高く、丹念な仕上げ独特の密度感の高い中低域は本機でも味わうことができ、音の響き感、弦楽器のアンサンブルの響きの深さなどを感じさせる。バスレフ型だが、低域が必要以上に膨らんだりふやけたりすることなく、オーケストラのコントラバスのピチカートなどもなかなか力があり、高い解像力を聴かせる。声楽曲は声に張りがあり、明るさとサ行の自然さを感じさせ、強調するようなところがない。オーケストラも決して派手さはないのだが、音の埋もれる感じがなくしかも解像力を強調するようなこともなく、見事なバランスで、大太鼓もそれなりに感じさせる。ジャズのドラムのパルシブな立ち上がりを充分に聴かせる一方で、響き感や余韻感なども表現され、ほどよい躍動感も聴かせる。
AUDIO Q&A
Q 12月号のステレオ視聴室で紹介された「クォード11L」スピーカーシステムに興味を持ちました。購入を検討中ですが、同時にこのスピーカーの魅力を発揮できるアンプとCDプレーヤーをも購入しようと考えています。ベストマッチするであろう製品をご推薦ください。回答者:石田善之A 曇りがなく晴々としたなかに低域から高域まで密度感高く聴かせるクォード11Lは音も素晴らしいのですが、丹念な仕上げ塗装も見事です。しかも4種類のカラーバリエーションがあります。それをドライブするアンプとCDプレーヤーですが、11Lはインピーダンス6Ω、そして能率が86dBということですから、今日的に考えてほぼ標準的なスピーカーシステムということになりましょう。組み合わせの自由度も大変に高いということになります。ただ、質問には残念ながら予算が明記されていませんので、一般的にスピーカー、アンプ、CDを当分に割り振ると仮定し、プレーヤーとアンプで20万円程度として進めたいと思います。例えばマランツではプリ・メインアンプにPM-8100ver.2があり、デザイン的にも無理のない組み合わせになり、CDプレーヤーにSA-8400を選ぶとトータルで17万円になります。また、デノンからは物量もあり、やや大袈裟になりますが、この価格帯としてはダントツのPMA-2000IV(¥126000)、合わせるプレーヤーはSACDにも対応したDCD-SA500(¥103950)でしょう。このアンプの持つドライブ能力からは11Lのほとんどが引き出されると期待できます。ただ、大きめなので少々大袈裟な印象になるかもしれません。また、同じデノンですが、グンと予算をセーブするなら、お馴染みのハイC/P機、PMA-390IV、CDプレーヤーはDCD-755II、両機とも¥4万円程度です。比較的シンプルにコンパクトにということであれば、この組み合わせでも充分に楽しめることでしょう。また、少々方向性を変え、薄型に美しく作られ、しかもデジタルアンプという最先端の製品として、オンキヨーのA-1VLと、カップリングするべくCDプレーヤーC-1VLがトータルで27万3千円です。オンキヨーはしばらくハイファイオーディオから遠ざかっていましたが、これらは新しい技術志向で作り上げた力作です。以上いずれも個々の音量は無理のない、その価格帯においてまとまり感のあるものばかりです。
ステレオ 2005.6.
ベスト・バイ・コンポ "プライベーツ" 2005 スピーカーシステム 10〜20万円(ペア価格)未満
菅野沖彦(前略)なんの変哲もない小型システムであるが、その音は素晴らしい。このサイズの低音としてベストチューニングである。クォードは伝統的なイギリスのブランドである。コンデンサー型のスピーカーとアンプで長い歴史を持つ名門。それだけに突如こういうシステムを発売したのには驚かされたが、新生クォードとしては伝統だけにしがみついていては生きてはいけないのだろう。しかし、この音は決して名門の名を傷付けるものではない。
ステレオサウンド 2004.Winter vol.153
GRAND PRIX 2004 菅野沖彦 三浦孝仁
自然な質感、バランスが見事 まとめの上手さが光る出色の存在菅野これは最初見たときに少々寂しい外観でね、これがクォードか・・・・・・って思ったんだけど、音を聴いたら何ともよいんですよ。とにかく音のまとめ方がうまいとしか言いようがない。よくこの価格と小ささで、見事なバランスの音の出るものだと本当に感心しました。三浦もちろん再生の制約はあるのですが、本当にバランスがいい。最近こんなサイズでこれほどよい音のスピーカーはなかったんじゃないですか。菅野解像度もなかなかよく、本格派のスピーカーの世界をミクロコスモス的に聴かせてくれるんです。この製品は質感とバランスが自然ですから、人の感性を妙な方向に持っていかないんですよ。(中略)僕はオーディオ製品というのが、現代においては、人間の耳の感性を作ってしまうと思うのね。そしていまは機械的な無機的な不自然な音が社会に氾濫しているでしょう。これは非常に恐ろしいことなんですよ。価格が安いものほど、そうした傾向の音が多い。その意味でもこういうスピーカーは大切にしなければいけないし、小型スピーカーとして、先ほどのAE1と並んで今年出色の存在でしょう。
ザ・ベストバイ コンポーネントランキング709選 スピーカーシステム20万円未満 菅野沖彦
(前略)ブランドイメージを裏切った観もあるが、素晴らしいまとまりを聴かせる優れた製品。このサイズとしてはワイドレンジ感のある品位の高い質感と巧みなチューニングによる優れたバランス。
ステレオサウンド 2005.Spring vol.154
話題の新製品を聴く 篠田寛一
腰が強く柔らかな中域を中心としたバランスのよい音柔らかな中にも腰の強さや、しっかりとした芯を伴った存在感のある中域。そこに高/低両域を過不足なく加えたように感じる、なかなかバランスのいい音である。このクラスのコンパクトスピーカーはワイドレンジ感とか、迫力のある低音感を追求したモデルが少なくないが、本気の音はそれらとは明らかに異なる。第一、レンジを無理に拡げようという意図が感じられない。だから、描き出しがとても自然。たとえば、女性ヴォーカルをしっとりとなめらかに歌わせたり、弦楽器の合奏をおだやかな空気感の中に艶やかに、実感的に浮かび上がらせるあたりがそうである。いっぽう、低音もこのサイズにしては伸びて聴こえるので、バスドラムのアタックやベースの唸りもそれなりの力感をともなって響く。というわけで特に不満はない。これは再生帯域全体にわたって、バランスのとれた音に仕上げてあるのが一因のように思える。オーケストラもよかった。身体全体を包み込むように豊かに拡がるスケールの大きな音がたいへん素晴らしい。小型スピーカーであることをすっかり忘れてしまっていた。
オーディオベーシック 2005.Spring vol.34
特集:小型スピーカー大集合 ベーシックモデル22機種一気聴き 小林貢
(前略)伝統ブランドだからか、特に先鋭さを感じさせるところはないが、逆にたいへんに落ち着きのある品位の高い見事な再生音を聴かせる。「ミスター・ボージャングル」のピアノは美しく響き、ベースの深みのある音色と自然に溶け合う。ひときわ小型だがウッドベースの胴鳴りまでリアルで、低音弦のピチカートも線が太く腰がしっかりとして音の輪郭を緩めないのは驚き。「スーザン・ウォン」は清々しく透明感があり、クールに過ぎず自然な温もりや艶やかさを感じさせるのが好ましい。「ジョン・トロペイ」では、多弦ベースの低音も音程が鮮明。スピード感のあるドラミングは一つ一つのショットがスムーズに立ち上がった。
HiVi 2005.1.
P! VIEW 藤原陽祐
コンパクトな2ウェイスピーカーだが、気張りのない自然体のサウンドの響きが実に心地いい。力強さ、エネルギー感よりも、開放感に溢れる鳴りっぷりのよさを意識しているようなところがあって、素直にすっきりと伸びた高域が美しい。低域、中低域の出し方にしても力むことなくあくまでも自然体を貫き、ゆったりと柔らかなテイストを持ち味にしている。
帯域はあまり欲張らずにむしろベースの美しい旋律ラインを大切にしようというチューニング。ベース、ピアノの音の鮮度の高さが実に気持ちがよく、ダイアナ・クラールの生々しい息づかいにゾクッとする。もう少し中低域の描写に柔軟性が欲しいとも感じるが低音が詰まるような不自然さはなく、いい感じでスカンと抜けてくれる。とにかく聴いていて楽しめる、気持ちのいいスピーカーだ。
(中略)近年の小型スピーカーではなかなか感じられなくなった、オーディオマインドをくすぐる感触がある。