オンキヨーのスピーカー「D-200II」発売当時の各オーディオ雑誌に掲載されたレビューから、音に関する部分を抜粋し以下にまとめる。
MJ 無線と実験 1989.6.
新製品ニュース 藤本伸一
(前略)外観的にはほとんど差異は認められないものの、強調感や金属的な響きを取り去り、さらにナチュラルな音色と音場感を追求している。(後略)
MJ 無線と実験 1989.8.
MJレポート 窪田登司
(前略)前身は2年前のD-200でありトゥイーターの一部の色調が変わっているが、その他外観は全く同じである。ただ音はかなり洗練されて次元の高いところにもっていっている。いわゆる「安いスピーカーはこの程度の音」というランク付けを排したレベルの高い音に仕上げられているわけだ。
ピュア・クロスカーボン振動板というと、高剛性のとげとげしい張りのある音というイメージを持つかもしれないが、そうではなく、あくまで自然な、あくまで滑らかさを失わない、耳にやさしく馴染む音にしているのが、このマークⅡである。それでいて、もちろん高剛性振動板特有の立ち上がりの良い、スピード感のある再生音であることは言うまでもないところだ。(中略)ウーファーは16cmらしい軽快な躍動感のある低音を再生し、分解能も高い、大口径の高質量振動板の重い低音と比べてじつに伸びやかに、しなやかに鳴る。
能率は低域の再生限界を延ばすため、89dBとスペック上は小さめに設計されている。実際に聴いた感じはそう低い能率とは思えず、しかも低域はよく出る。(中略)トゥイーターの振動板は2.5cmプラズマカーボナイトチタンドームとなっている。(中略)低域とのつながりの良い滑らかな、しかもヌケの良い音になっている。(後略)
ステレオ 1989.6.
stereo試聴室 今月の新製品を聴く 藤岡誠
音質は大変化。トータルとして解像度が向上しており、低域方向の伸長も著しく中低域は肉厚がありながら分解能が高い。中域の固有音も抑え込まれており同時にウーファーとトゥイーターのスムーズなつながりを感じさせる。高域の質感も良好。
ステレオ 1989.7.
私のベストワンはこれだ!! スピーカー5万円未満
入江順一郎(前略)そんな小型スピーカーの中で、最近、感心したのが本機なのだ。音のヌケとかバランスの良さ、そして穏やかさも備えているサウンドは実に好ましい。(後略)
藤岡誠
ステレオ 1989.8.
stereo試聴室 話題の新製品を聴く
石田善之(前略)オリジナルの場合はこんなに小さいのによくここまで低域が出るものだ、と思ったが、今回はさらに、明るく伸びやかな高域も感じられる。総体的な歪み感も非常に小さくおさえられているし、小型2ウェイの音場感の良さも存分に出ている。音全体を柔らかく聴かせる音場の良さをベースとしたこうした表現ができるのであろう。オケでは中域の力が、低域と中高域の谷間になっているように思われるが、別の意味ではこれがレンジ感につながる要素だ。声楽曲は息づかいやサ行が若干目立ってくるが、音量をどんどん下げていくとこのあたりが全体を明確にし、分離よく聴かせるポイントにつながっている。つまり、小音量時でも極端に音抜けを損なうようなことがない。ポピュラー系はベースの弾力感が軽やかで反応が良く、のびのびと楽しく聴かせる。ボーカルも持ち前の定位の良さに併せて、適度に声が張り出していて、出すぎない。ややおさえ気味の中域と張り気味の中高域で微妙にバランスをとり、うまい具合にコントロールされている。歪みやf特のアバレによる硬さをよくおさえている。
金子英男(前略)この製品のオリジナルのエネルギー的にポイントをおいていた部分を今回は抑えて、より全域のクォリティアップとバランスに注意がはらわれている感じがある。それによって以前より素直に音楽を伝えようとする方向へ変わってきていることは好感がもてる。(中略)本質を上げることによって得られる素直な伝えかたで、いままでのこのランクにありがちな自己中心的な訴え方ではなく、ローコストといえども質の高さからくる快さにのせたもので、それも全域のつながりの良さによって生まれる違和感のないところがよい。高域にやや明るさをもつが、極端になることはない。中低域から低域にかけてのふくらみも適度で、この価格とこの大きさから生まれてくるものとしては欲張らずに気張らずにまとめたうまさがあって、あまりワイド化せずに適度に落ち着いたまとめでバランスも整い、今回もCP比の良い製品が生まれた。
福田雅光透明で澄み切った雰囲気を背景にしたニュートラルパターンが基調になっている。中音付近のエネルギーが特に充実して、明快でくっきりとした輪郭と音像フォーカスの明瞭なサウンド展開に結ばれているのが特徴である。前作よりも低域のダイナミック感はあっさりとした印象を受けるが、さり気なく伸ばしてエネルギーは絞る方向になっている。帯域バランスは低域をもりたてるよりも中音を軸にしたゆるい山なりのカーブを目指しているようだ。トーンキャラクターは明るく艶もよくでるタイプである。しっとりソフトなナチュラル感というよりも、クリーンでテキパキ、すっきりとしたフィーリングが特色になる。特に高域は繊細な解像度と濁り、歪みの極めて少ない爽やかさがあり、音の質という点で綺麗で丁寧なサウンドが得られているのは評価したいポイントである。良好なコントラスト、抜けのいい音像、定位のリアルさ、切れのいい立ち上がり、分離のよさなど聴感ファクターは総じて立派。正確なフォーカス能力は位相的な面での管理がうまくいっているのではないかとみた。このクラスではリアルな位置関係の再現にも筆者は注目したい。全体の雰囲気としてはクール系のブライト調が軸になるが、質感はドライでかさつくことはなく潤いのでる充実したもの。
ステレオ 1989.9.
集中試聴 スピーカーシステム14機種の試聴
入江順一郎D-200IIになって音質はさらに改善された。レンジ感も少し広く感じられるし、音の密度感なども向上している。ソプラノはのびやかで明るい感じであり、弦も少々陽性だが、かなり細かい音まで出してくれる。中域〜中高域に適度にのっている艶が倍音の感じをよく引き出しているのだろう。ピアノもくっきりさがあるし、明瞭な鳴り方ですっきりとしている。オケは左右への広がりはなかなか良好であるが、奥行感についてはもう少し欲しい。ただ、使用するスタンドで改善できそうだ。低域に関しては量感もあり分解能もあり、音の出かたがスムーズである。ピアの低域もスケール感があり、バランス的にも良好である。小型システムのスピーカーとして最適である。
藤岡誠