いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

SONY SS-G22 をメンテナンスする

ソニーのパッシブスピーカー「SS-G22」を手に入れた。ウーファーエッジの張替えとネットワーク調整をしてから音を出してみた所感。

 

ソニー製ブックシェルフ型スピーカー

自分はあまり馴染みの薄いソニー製のスピーカーが安く手に入った。「SS-G22」という小型2ウェイシステム。

SONY SS-G22
安かったのは、ウーファーのエッジが朽ちていることをはじめ、細かい部分に経年劣化の影響が出ているから。

エッジの朽ちたウーファー
一応、音は出るとのことなので、ツイーターは生きているのだろう、エッジを張り替えてみればとりあえず鳴るようにはなるのかな、という心算で。
 
ソニーのスピーカーは、以前アルミハニカムの平面振動板のスピーカーを扱ったことがある。あとは、コンポラジカセのスピーカー部をそれぞれ1種ずつ。
それ以外には、かつて"Gシリーズ"というものが存在していたことくらいの知識しかない。このスピーカーも、意匠が「なんかカッコいいから」という理由で目に留まったもの。この製品がGシリーズに属するのかどうかも知らない。
 

外観

まともな音は出せない状態なので、外観を眺めてからさっさと分解に入る。

どんな音がするのやら
 

損傷部位

まずは前面ネットから。フレームが破損した状態で手元に届いた。

どこを注意して梱包すればいいか知らないとこうなる
これは経年劣化が進んだところに不十分な梱包によりトドメを刺されたかっこうだ。重量物であるスピーカーを輸送するにあたり、いわゆるプチプチで外周をグルリと巻いてそのままダンボールに入れるだけだと、こういうことが起こりうる。年中スピーカーのやりとりをしているとたまに出くわすので取り立てて驚くことはなくなっているけど、やっぱり残念な気持ちになる。
 
先に見たウーファーの朽ちたエッジは、ゴムかエステル系エラストマーか。パリパリになっている。

覗いている黄色いフォームは吸音材か?
このスピーカーは1990年代初頭の発売のようだから、30年以上も経てばこうなるか……と以前は思っていたけれど、これより古いスピーカーであっても綺麗に残っているものもあるんだよな。空気中の水分を吸ってしまう素材で作られているとダメなのだろうか。それとも、やはり保存環境によるのだろうか。
 
ほかには、背面のバインディングポストの樹脂製キャップが、割れてしまったのか失くされている。

樹脂製キャップはこれがあるからな……
とはいえ、この時代のエントリークラスの国産スピーカーは、ともするとスナップイン式のコネクターを採用しがちなところ、埋込ボックス型のコネクターユニットを採用しているのはさすが。

もうひとつのほうは残っている
 

バスレフダクト

背面にあるバスレフダクトは、ダクトと一体の樹脂成型品。

バスレフポート
ここも、孔を開けたバックパネルに単純に紙製パイプを突き刺しただけの数多の製品とは異なり、ポートのフランジ部がフレア加工されたものを使っているのが、他所よりも一歩先を進んでいる感じだ。

側面と背面
 

バッフル

そして、前面バッフルの特徴的な形状。ツイーター部のみ背面側に下がるかのようにセットバックされている。

たったこれだけなのに、妙な存在感がある
バッフル下部にもあるように、これがこのスピーカーの主立つ仕様「タイムアライメント」である。

It's a Sony
各ドライバーの固定位置を同一面上から少しずらすことで、各ドライバーからリスニング者の耳に到達するまでの時間を調整して、マルチウェイで綺麗に聴こえるよう揃えてしまおうというもの。テクニクスの「リニアフェイズ設計」と同じ考えかた。あちらはドライバーのフレームの構造などで調節していたのに対して、こちらはバッフル板の厚みを変えることで成り立たせている。

ツイーター自体はいたって普通のソフトドームに見える
 

内部

内部を見ていく。まずはエンクロージャー側から。

ユニット自体は簡単に外せる
 

吸音材

分解前からすでに砕けたウーファーエッジの隙間から見えていたけれど、内部には吸音材として畳まれたウレタンフォームのシートが詰めこまれている。

筐体俯瞰
ここまでギッシリ詰められているのは、バスレフ型にしてはめずらしい仕様だ。日本のメーカー製となればなおのこと。

フォームは劣化しているためか、ややしっとりとしている
 

前面バッフル裏面

ウーファーが固定されるザグリの裏にはテーパー加工が施されていて、なかなか凝っている。

バッフルの裏面

ウーファー部は板厚があるので、このような加工ができる
筐体を構成するのは、前面が単層のパーティクルボードのようだ。形状や質量からして前面だけはMDFかと思っていたけれど、予想が外れた。
 

ネクターユニット

背面のコネクターユニットを取り外すとき、ネジ孔付近にクラックがあることに気づく。

ネジを外す前に気づけてよかった
ここ、コネクターユニット側は皿ネジ用のテーパーが施された孔なのに、なぜかなべ頭を使っているために、局所的な負荷がかかり続けて割れてしまったのだろう。
しかもこのコネクターユニット、汎用的なものとはサイズが微妙に異なっていて、アマゾンなどで手に入るリペアパーツをあてがっても孔の位置が合わない。ここだけ新たに専用のものを作り直すのも手間なので、今回はネジだけは皿ネジを用意するとして、このまま見なかったことにする。
 

エンクロージャー内

筐体内部は、吸音材を取り除くと特段なにも無い空間となる。

底面側

天面側
ただ、バスレフダクトの外周全体に薄いフェルトを巻きつけているあたり、設計側は相当消音に気を遣っていたことが窺い知れる。
ここまで見てきてわかるとおり、同じ国内メーカーでも他所とは雰囲気が異なっているのを感じ取るのは難くない。
 

ウーファー

ドライバー類へ。ウーファーは、金属プレスのフレームにダブルマグネット。

ウーファー。J22TNE
その金属フレームには、アングルの部分にゴム製のシートを貼っている。

おそらく振動対策だろう
コーン型振動板は、コルゲーション付きの紙の上にコーティングしてあるもの。

振動板拡大
このチャコールグレーのコーティングは、触覚は薄いゴムのような、あるいはアクリル塗料を厚く塗った塗膜のような質感で、ドットのエンボス加工も相まって見た目以上にザラザラした表層となっている。
また、最外周近辺には、フレームの4つのアングル部の裏に隠れるようにしてゴム片が接着されている。余計な振幅を抑えてひずみを消しているのか。

手作業による調整がけっこう施されていて、手間がかかっている
 

ツイーター

ツイーターは、見たところ繊維製のドームにコーティングされたもののようだ。

ツイーター。J21TND
背負っているフェライトマグネットは、厚みはそれほどではないものの径が大きめで、ある程度下の帯域まで担えるユニットなのかもしれない。
グリルネットは、今回は外さない。

化繊か天然かはわからない
 

ディバイディングネットワーク

最後はディバイディングネットワーク基板。基板はコネクターユニットの裏側に接着されている。

現代では見慣れているこの固定方法も、この時代ではまだ少ないと思う
しかし、基板の自重により接着が切れており、実質バインディングポストのタブとはんだ付けされている部分のみで支えられて宙に浮いている状況だ。

まあ、さすがにムリがあるよな

LPFのコイルと干渉するスタッドを切り落としている
このネットワーク回路も、なかなかどうしてユニークなことをしている。といっても回路自体は奇をてらうことをしていない。パーツのチョイスのほうだ。

ネットワーク基板表裏

ネットワーク回路図
水色の矩形のケースは、ドイツのERO(現:Vishay)製メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサー「MKP1840」。

既製品に組みこまれているのは初めて見たかも
現代ではヴィンテージコンデンサーとしてそこそこ値の張るERO製コンデンサーがHPF側に堂々と鎮座。ただ、これはツイーター直列ではなく、並列に使われている。では直列のほうはというと、ニッケミの「AXF」が横たわっているのだった。

接着剤で隠れてしまっているけど、AXFである
少なくともPPコンデンサーが選べるなかで、あえて最高級ケミコンという選択。これだけで当時のソニーの製作チームが持つ音の拘りが感じられる。まあ、ケーブルのはんだ付けはいささか危なっかしいところもあるのだけれども。

ギリギリ短絡を免れている……
いっぽう、LPF側のメタリックイエローの電解コンデンサーは、今回初めてお目にかかる。

なんだろうこれ
これもニッケミ製のようだけど、正体はわからない。

15μFよりも巨大な5.6μFのAXF……
基板のはんだ面には、小さめのフィルムコンデンサーがそれぞれの電解コンデンサーに後付けされるようにくっついている。0.22μFはわかるけど、0.022μFというスピーカーのHPFとしては極小の部類になるコンデンサーについては、いったいどんな意図で採用されたものなのだろうか。気になる。
 

整備

さて、ウーファーの新しいエッジやコンデンサーなどを発注、それが届くまでできることはあまりない。
 

ネットフレームの補修

とりあえず、前面ネットの折れたフレームの補修を先にやっておく。幸いなことに、砕けたダボの部分の大半は紛失せずに残っていたので、それをかき集め、2液性エポキシ系接着剤で貼り合わせて静置する。
 

エッジの張替え

ウーファーの新しいエッジは、整備当初からオリジナルと質感が近いゴム製にしたいと決めていた。ちょうど6インチ用の汎用品がアマゾンにあったので買ってみる。

アマゾンで買ってみたもの
しかし、届いた現物は欲しかった寸法と微妙に差異があり綺麗に張るのが難しそうだと感じたことや、ゴムの質が好みでなかったので、ちょっと高くつけどアリエクでそれっぽいものを探して買い直す。

最外周の4か所にネジ用の"逃げ"があるもの
アマゾンのものと形状も寸法も異なるので当然別物だと思っていたら、アリエクで買ったものにもアマゾンのものにも「141C」のデボスがある。つまり、規格としては両者同じってことなのかな? このあたり、よくわからない。
買い直したエッジが到着するまでの2週間がじつは無駄だったのかもと悄然としながらも、既存の古いエッジを剥がして、張り替えてみる。

今回はフランジにある既存の台紙も剥がす
張替え自体はすんなり終わる。

この張りかたも、徐々に習癖になってきたな

発音側に張るほうがラクだということもある
しかし、ドライバーを固定するさいに、ちょっとした加工が必要になってくる。これは後述する。
 

コンデンサーの交換

新しいコンデンサーは、久々に秋葉原千石電商で購入してみる。

ParcAudio製を主軸とする
今回の整備は差し当たりどんな音がするのか聴いてみることを目標としているため、音質面の調整をほとんどしないつもりでいる。よって、コンデンサーもオリジナルと同じように、電解コンデンサーが主軸の構成とする。
既存と同じように載せ替えるだけ。

MKP1840はそのまま
ただし、この基板自体の固定はコネクターユニットの裏に接着ではなく、エンクロージャー底面に変更する。わざわざ不安定な固定方法を採る必要はないと、思い直した。

ネクターまでの渡り線を取り付ける
そのへんに転がっていた小さな合板の上にフェルトなどのクッションを適当に敷き、さらにその上に基板を固定する。合板を筐体に固定するかたちで基板を括りつける。

この上からさらに虫ピンと接着剤で固定

バインディングポストは金属製キャップに変更
 

吸音材の変更

既存のウレタンフォームの吸音材は少し劣化しているので新しくしてしまう。今回は東京防音の「ホワイトキューオン」を使ってみる。
とりわけバスレフ型の吸音材には、最近はフェルトを使うことが多くて、こちらの出番はほとんど無くなっているのだけど、今回のようにエンクロージャー内の空間をある程度占有したい、かつグラスウールを使いたくない場合には重宝する。手芸用のわたなどよりもシート状のほうが量の調整がしやすいというのもあって、多少高くても買ってしまう。
筐体内の両側面に、適当な大きさに切り出したウールを置くだけ。

背面側は、ひとまずナシで
 

ドライバーの固定

あとは組み上げるだけだとなった段で、ウーファーユニットをバッフルに固定するさいにちょっとした微調整を行う必要が出てきた。ネジで固定すると、フランジ部の化粧用のリングがエッジを少しゆがませる。

意外と目立つ
これはオリジナルのエッジよりも最外周の径が大きいぶん、リングが干渉してしまうためだ。リングが樹脂製のため、締めたネジの周りが少ししなることでエッジ側が押し出されている。
このままでも音の出力には問題ないけれど見た目が気持ち悪いので、エッジのネジ周りの"逃げ"を拡張するようなかたちで切り広げ、なんとか低減させる。

完全ではないけど、だいぶ目立たなくなった
 

音を出してみる。アンプはヤマハのAVレシーバー「RX-S602」。

整備後の姿
ツイーター主導かと思っていたけど、意外と低音出るな、というのがファーストインプレッション。ウーファーのコーンは音量を上げてもあまりストロークせず、エンクロージャーの響きとリアバスレフをバランスよく生かす。これが音全体を躍動的にさせて、生き生きとした音と印象づける。
 
今まで見てきたソニー製スピーカーの音と、今回は先にディバイディングネットワークを確認しているのもあって、それらの印象から中高音が喧しいくらいに出てくるのだろうと予想していた。しかし実際はそうなっておらず、一般的な範ちゅうに収まっている。伸びはそれほどでもなく、ややぶっきらぼうなところがあるものの、鳴らせる範囲を明朗に聴かせる意思を感じる。
電解コンデンサーの影響か高めの中音がややザラつくけど、これはこれでアリかな。長時間のリスニングでも耳が疲れるようなこともない。
 
音場感はそこそこ広い反面、再生帯域的なレンジ感はやや狭めに聴こえる。おそらく音が出ていないわけではなく、前へ前へと押し出してくる雰囲気に気圧されているのだと思う。
再生周波数の平滑化や透明感よりも、鳴りっぷりと聴感の心地よさを優先する、やんちゃな感じやグイグイ来る解りやすさ。これがJBLを彷彿させる。同年代の「J216PRO」や「J316PRO」と性格が似ている。日本製っぽくない音。

モリモリのマッシブで聴いていて気持ちがいい
周波数特性を見る。ツイーター軸上50cm。先日よりパソコンに接続する測定器材には専用のアイソレーターを噛ますことにしている。

周波数特性
思いのほか低音方向が伸びているけど、これは測定場所がかなり影響していそうなので、もっと厳密な環境だと違ってくるだろう。それでも、聴感として合ってはいる。
低めの中音から中音にかけて多少ガチャガチャしている反面、おそらくクロスオーバーしているであろう2kHz付近は穏やかに見える。タイムアライメントの影響だろうか。
 

まとめ

内部の仕様から出音まで、およそ当時日本のほかのメーカー製と一線を画するものとなっていることがわかった。

舶来品を手本にしているのかな
日本人好みに寄せるのではなくゴーイングマイウェイなところが、個人的には好印象。国産スピーカーでもこういう音があっていいはずなんだよな。楽しく聴かせてくれるので、いつまでも流し聞いていられる。

世界的に認められたメーカーの矜持か
オートメーション以外の人の手による部分では造りが甘いところが見受けられたけど、制作陣はほかの製品をよく研究していたんだろうなというのは伝わってくる。上位機種も手にしたくなってきたな。

気に入ってしまった
終。