クライスラー電気のリビングオーディオより、「CE-4a」という古いスピーカーを入手した。いろいろ補修したのちに音を聴いてみた。その備忘録。

※ この記事は、前後編の後編にあたるものです。
※ 前編は下記より↓
※ 前編は下記より↓
整備
方針
エンクロージャー内部以外のすべてに手を入れる感じになりそう。
今回は、前面ネットの代わりとして、以前別のスピーカーで作ってみたウッドルーバーを採用してみたいので、まずはその材料の選定からだな……。
既存のエッジの除去
作業においては、既存のクロスエッジをうまいこと剥がせるかが気掛かり。
既存の矢紙は、あとで新しいエッジの台紙として再利用したいので、なるべく綺麗に剥がす。


コーンとエッジの接着部をおもむろに分離する。ただ、かなりしっかり接着されているようで、接着剤の劣化した部分からペリペリと剥離、とはいかない。よって、紙製コーンなのであまりやりたくないのだけど、諦めて溶剤を含ませてしまうことにする。


なんとか分離できたので、ここで適当なリペア用のエッジを発注する。
木材の購入と加工
エッジはひとまず措いておいて、それ以外の部位に手を付ける。ホームセンターに赴き、ウッドルーバー用の木材を選定、選別する。

前回同様、加工性と堅牢性のバランスの良い桧工作材とする。今回は幅4mmの角棒にしてみる。それを固定するベースは、2mm厚の細長い棒。それを一本ずつ同じ長さに切り出し、手製の治具に乗せて木材の格子を生成する。


このあたりの細かい工程は前回の記事を参照のこと。
角棒を4mmとしたのは、筐体前面の外周の縁がだいたいそのくらいで、揃っていれば違和感が小さそうだと思ったため。また、なるべく太めの棒のほうが、それだけ材料費も切り出す工程も少なくて済むというのもある。
ただし、これは完成してから解ったことだけど、ベースの厚みが2mmというのは強度面でやや頼りないので、最低でも3mmはあるほうがいい。薄くしたい場合は、金属板を検討のこと。
接着は2液性エポキシ接着剤を使用するため、硬化を待つあいだ、また別の作業をする。
ネットの固定方法の変更
今回設けるウッドルーバーは、既存のネットと同じく着脱式とする。前回のようにバッフルに完全フィックスとするわけにはいかないからだ。
ただ、既存の面ファスナー式ではなく、マグネットに換装して磁力で吸着する方法に変更する。面ファスナーでは"遊び"が大きくみっともなくなりそうなのと、以前別の機種で取り入れてうまくいかなかった反省を踏まえた再挑戦でもある。
直径10mmのネオジウムマグネットを購入。これを、既存のファスナーと同じ位置に付けなおすだけ。

固定のネジは磁石付属のものを使用。

既存の径は12mmだけど磁石を同サイズとしないのは、金属製のプレートの固定時に物理的に引っかからないよう余裕を持たせるためだった。しかし、実際にはそれほど気にする必要はなかった。
筐体仕上げのやり直し
次に、そのエンクロージャーの仕上げも変更する。
使用するのは亜麻仁油。つまりはオイル仕上げ。

先日入手したパイオニアの「S-PM1000」が亜麻仁油ベースのオイル仕上げらしく、それが気に入ったから採用してみた。
既存の仕上げはやすりでこそぎ落とす。使い古したスポンジやすりの#120、#240、#400、#800を使用。

#400で擦る前にオイルを垂らし、オイルごと磨くいわゆるウェット研磨。ウエスで拭き取り、さらに#800で同じことをする。

しばらく放置して、表層に浮き出た余分なオイルを拭き取って完了。
ルーバーの塗装
さて、ルーバーのほうが組みあがったので、こちらに着色と仕上げを施していく。

前回はここでウレタンニスを使って、塗りムラの排除に苦労した。今回は水性ステインと亜麻仁油にしてみる。アトムハウスペイント「水性自然カラー」のレッドオークを採用。

薄めることなく、刷毛で適当にザクザク塗る。エアコンの前に静置して強制的に乾燥させ、軽くやすりをかけてからもういちど塗る。

今回は面倒でやらなかったけど、既存の仕上げと色味をより近づけるのなら、これとオールナットを重ねるのがいいかも。
オイルはウエスに含ませて擦りつける。この作業は翌日となる。
バインディングポストの交換
ステインの乾燥を待つあいだ、新しいバインディングポストの用意をする。
今回は初めて採用するコネクターユニット。ポストの固定部に樹脂製のベースが付属するものだ。

コネクターがバックパネルからやや奥まった限られたスペースに固定される都合で、オリジナルのポストは固定部に樹脂製の台座が設けられて、ベースからやや浮く状態で固定されていた。それを再現するためにベースを自作してもいいけど、はじめから付属しているに越したことはない。というわけで採用されたのが本品。

ポスト自体は汎用の4mmのバナナプラグが刺さるものだと思っていたけど、ネジ部がM4ではなくM5だ。配線固定用のタブも付属しないため、別途用意するかケーブルに丸形端子を設けるなどで対応する。
そのへんに転がっていたベニヤ板を切り出して、黒の薄いフェルトを張ってからコネクターユニットを固定する。


このスピーカー、オリジナルはなぜか+側のポストが左についているので、新しいものは現代では一般的な-側が左となるよう逆転して固定する。


エッジの張替え
リペア用のエッジが届いたので、さっそく張ってみる。アマゾンでも買える、ロールの外径が100mmの4.5インチ汎用フォーム製エッジ。
本当はオリジナルと同じようなプリーツのクロスエッジがリペアパーツとして発売されているとよかったのだけど、探しても見つからないので妥協。
コーンの最外周とフレームのフランジ部にレベル差がある。

これはフランジ部にもともと付いていた矢紙をスペーサー代わりにする。溶剤でヒタヒタにしたのち、2mmほどの厚みにスライス。

これをフランジ部に接着し、その上にからエッジを張る。

ここで、新しいエッジのロールが金属製のプレートの孔と接触する可能性があることに気づく。

エッジの寸法は問題ない。しかし、このスピーカーのバッフルとプレートの開口の位置が数ミリほどズレていて、そのままドライバーユニットを取りつけるとロール部とプレートの空隙が埋まってしまうのである。接触は幸いにもギリギリ免れたけど、ロール外径100mmのエッジを選んだのは偶然に過ぎない。
安堵したところで、エッジを接着する。接着剤はいつものヤツ、B7000。

今回のような、振動板の放射面にエッジを接着する工程は、さすがにもう幾度もやっているので言うことがない。しかし内面側に接着する場合は課題がいくつかある。

ドライバーの固定位置の調整
エッジを張り終えたドライバーをバッフルに固定するさい、バッフルにプレートを仮置きして、プレートの孔に放射面が綺麗に収まる位置を見つけて、タッピンネジで固定する。

必ずしも既存と同じように戻せばピッタリ収まるとは限らないのがミソ。

より詰めるなら、バッフルのほうを加工しなければならないけど、今回はそこまではしない。
磁石の隠蔽
ここからは、ルーバーの固定部の調整に移る。
ネオジウムマグネットの表層に薄いフェルトを貼る。この措置はルーバー吸着時の衝撃吸収とレベル調整を兼ねている。
片面粘着付きのフェルトを、12mmの皮抜きポンチで円形に切り出す。
ポンチが使えることに最近気づいた

マグネットよりも若干大きめにすることで、適当に貼りつけても綺麗に隠れてくれる。

磁石受け部の固定
ルーバー側に磁石の受け部を設ける。素材には当然ながら磁性体が選ばれるわけだけど、今回のような小型のスピーカーには市販のスチールプレートだと大きすぎて、格子の隙間から目についてしまう。また、ここを薄いものにするとルーバー本体がセットバックしたバッフルにスッポリ綺麗に収まって見栄えが良くなる。それらを踏まえ、0.8mm厚の鋼製ワッシャーが適任だということになった。
つや消しの黒で塗装したワッシャーを、バッフルに固定した磁石に吸着させる。ルーバーに2液性エポキシ接着剤を塗布してから、バッフルに被せて位置調整をし、接着剤効果を待つためにひと晩放置。

注意点としては、2液性エポキシ接着剤を塗り過ぎないこと。余分な接着剤が垂れて、翌日ルーバーがそのままバッフルに固定されてしまうのを避けるためだ。

新しいウッドルーバーの固定は、当初はオリジナルのネットと同じように、バッフルの外端からやや手前側に浮かせるかたちを想定していた。しかしルーバー本体を制作してみると、調整すればなんとかフラットにできそうな雰囲気が出てきたので、その方向に進めてみた。やっつけにしてはうまくいったほうだ。やたら時間がかかったけど。

バッフルの空隙の補修
気をよくしてドライバーを固定し、音を出してみる。すると、ある程度の音量になると低音再生時にカサカサという音がする。エンクロージャー内部の空気がどこかから漏れている音だ。さりとて、製造から半世紀となるヴィンテージ品である。どこかがゆがんで接着が切れていても通例として処理するだろう。

スピーカーから音を出しながらどこから漏れてるんだろうと探し、見つけては埋め、また鳴らして確認し、を繰り返す。これを2台ぶんやっていたら、半日が過ぎていた。


古い木製エンクロージャーの場合、問答無用で筐体内部からコーキングするくらいの心積もりでいいのかもしれない。
完成図








整備後の音
低音再生の差異は整備前後で瞭然。量感は控えめでも、けっこう下のほうまで沈むんだな、という印象。なかなかに心地よい。
それ以外は、整備前とさほど変わらない。といっても、一週間以上前に音をちょろっと聴いたのが最後だから、比べることに意味はない。
音自体も好みだけど、鳴り終わりスッと引いたあとの静寂も好き。未だに1970年ごろの製品であることが信じられない。
周波数特性を見ると、エッジ張替えの一長一短がそれなりに出ている。低音域は言わずもがな、特定の音域で目立っていたピークも抑えられてバランスが良くなっている。他方、4kHzから6kHzまでのプレゼンス帯はやや減退、逆に7kHz付近には山ができている。細かい差が出るのはエッジと振動板の相性によるもので、オリジナルと同じパーツを同じように取り付けないことには逃れられない。
それと、最高音はなぜか2kHz近く減退している。高音に影響の出やすい部分は弄っていないはずだけど、これに関してはもうひとつのほうがもともとこのくらいの能力なので、整備前のこの個体は意図しない影響によってたまたま延伸していたのかもしれない。とりあえず、角を矯めて牛を殺したことにはならないだろう。
いずれにしろ、本機のドライバーの綺麗な特性は、コーンとエッジの絶妙なバランスによって得られるものといえそうだ。
まとめ
リペア用のエッジの選定は、入手方法も含めて要検討といえる。けだしBOSEの101MMシリーズなどに使われているクロスエッジが姿かたちがそっくりで適合しそうなのだけど、検討しようにも素人がリペアパーツとして容易に手に入れられる方法が無いように思われる。やはり自作するしかないのだろうか。

今回は音が気に入ったので、労力を惜しまず外装まで手を入れた。しかしまあ、マグネット着脱式は磁石を付けるだけでいいやと思っていたのに、見た目に拘りだすと時間ばかり溶けていく。前回も思ったとおり、おいそれと手を付けるもんじゃないな。

これからじっくり聴いていく。
終。

















