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DIATONE DS-155AV をメンテナンスする

ダイヤトーンのブックシェルフスピーカー「DS-155AV」を鳴動できるよう整備してみた記事。

 

素性

以前整備した「DS-11XL」に続き、またダイヤトーンの2ウェイブックシェルフスピーカーを入手した。
1980年代半ばに登場したDS-155AVである。

DIATONE DS-155AV
全然詳しくないのでインターネットにお尋ねしてみると、同じく80年代モデルの「DS-151」の後継にあたるもののようだ。サイズ感、搭載ユニットともにDS-151とよく似ており、それを基に時流に合わせ防磁対応させたものがこのDS-155AVという印象を受ける。
このころのダイヤトーンのスピーカーは、型番末尾に「AV」と付くものは防磁設計であるようだ。
 

外観

寸法的にもデザイン的にも、ヤマハの「NS-10M」と似ている。ただし、重量がだいぶ軽い。
背面部から見てもわかるように、筐体に使われている板材が薄い。すべてパーティクルボードで、厚みは前面部が約1.6cm程度あるものの、その他の面は1cm程度だ。
側面を叩くと「ポン」と甲高い音がする。このあたりはDS-11XLでもそうだったけど、筐体のしっかりしたスピーカーを知っているとどうしてもチープに感じてしまう。
 
黒のPVCシート仕上げのエンクロージャーに、シャンパンゴールドの塗装が施された八角形のユニットフレーム。バッフル面の印字も同じようなゴールド色。デザインとしてはシンプルにまとめられていて好印象。

側面と背面
特徴として、前面ネットとして使用されているファブリックがかなり粗く編まれたもので、ネットを取り付けてもバッフル面がはっきりと透けて見える。

前面ネットを取り付けた図
目が粗いのは音質面に配慮しているのだろうか。
個人的にはアリだと思うけど、ネットの樹脂製フレームも見えてしまうので、好みの分かれそうなところ。
 
背面にはバスレフポートがある。筐体内部にダクトとなるパイプは備えておらず、孔が開いているだけ。

いささか小さい気もするバスレフポート
低音部の増補というよりは、低音域の響き方を調整する意図なのかもしれない。
 
ウーファーはウレタン製のエッジだったようで、例によって経年で砕け散っている。

エッジ外周はリング状の紙製のベースの上に貼られていたようだ
一応鳴動はするようだから、エッジを張り替えてから音の確認をしよう。
振動板は紙製。全面にドットと、同心円状の波紋のようなエンボス加工が施されている。紙なので仕方がないのだけど、けっこう柔い。

コーン紙拡大
ツイーターは5cmコーン型。中心部に銀色のキャップを備える。また、ユニット前面にグリルネットがある。

ツイーター
こちらのエッジは問題ないようなので、そのままでよさそう。
 

分解

内部を見ていく。
各ユニットの取り外しは、六角穴のタッピングネジを外すだけ。

俯瞰
エンクロージャー内部には、吸音材が2か所にある。ひとつは底部と背面、ウーファーの背後を支えるような恰好でくの字に折られて接着されている。フワフワとしたフェルト。

椅子の座面と背もたれのような形
もうひとつは、ウーファーとツイーターの間に貼られている薄いフェルトシート。

スピーカーターミナルユニットを外した孔から覗く
体積に対して、吸音材の量は少なめの印象。グラスウールあたりをもっとミッチリ詰めたくなってくるけど、今回はとりあえず音がまともに出るようになることを優先するため、弄ることはしないでおく。
ちなみに、底面部の吸音材の下には、円形の板材が接着されている。

底部の補強材
これ、ほかのスピーカーでもたまに採用されている補強方法だけど、どうして円形にしているのかよくわからないでいた。しかし、おそらく、前面バッフルの加工時、ウーファーユニット部をくり抜いた際に出る端材を利用しているだけなんだろうと、最近気がついた。
 
続いてユニット。
ウーファーとツイーターの八角形のフレームはどちらも同じ色味だけど、ウーファーがプレスの金属製、ツイーターは樹脂製だ。いずれもMade In Japanらしい。

搭載ユニット
ウーファーのフレームは一般的なもので、最低限度の強度を確保しているという印象。ちょっと頼りない。マグネットもやや小さめ。

ウーファー。PW-1648BM
ツイーターも特筆すべきところは無さそう。ただし、平型端子のオスが固定されている部分は、ケーブルをそのまま力に任せて引き抜けるほど堅固なものではなさそうなので、端子部を抑えながら慎重に引き抜く。

ツイーター。TW-5077CM

背面にはフェルト
この平型端子のタブは、ウーファーとツイーター共にプラス側に幅広のものが採用され、187型である。

新たに配線を引っ張る場合は注意
スピーカーターミナルは、スナップインタイプのもの。取り外すと、ユニット裏面にコンデンサーと抵抗器がひとつずつ接着されている。

スピーカーターミナル内部

クロスオーバーネットワーク
6dB/octの逆相でゆったりとクロス。シンプルである。
電気的な調整に関してはこれだけで、ウーファー側は直結となっている。
 

整備

スピーカーターミナル&フィルター

スピーカーターミナルをバナナプラグに対応させる。
埋込型としたいので、エンクロージャーの孔を拡張する。

左が拡張後
たしかDS-11XLでもそうだったけど、背面の表面のみ黒く塗られた紙のような独特の材質になっており、これがノコギリを引きまわす際に切り口からボロリと大きく剥がれることがあるため、慎重に切り込んでいく必要がある。
 
新しいスピーカーターミナルユニットにも、オリジナル同様にコンデンサーと抵抗器を背負わせる形にする。

今回盛り込むパーツたち
本当は新しいコンデンサーも両極性アルミ電解コンデンサーにするつもりだったけど、たまたま手元に無く、わざわざ取り寄せるのも億劫だったので、同容量のフィルムコンデンサーにする。パナソニック製のポリエステルフィルムコンデンサー2.2μF。
抵抗器は、一般的なセメント抵抗。
接続はすべてはんだ付け。

組込み中
ツイーター側のケーブルがBELDENの「STUDIO 708EX」なのは、ほかのスピーカーの整備で使用して余ったものがちょうど良い長さだったから。
ユニットを固定するネジは、M3相当のトラス頭のタッピングネジ。太いネジにすると筐体側が崩壊しそうだったのでやや細めのネジにしたけど、ワンサイズ上でもよかったかもしれない。

近代化したスピーカーターミナル
 

ウーファーエッジ

ウーファーのエッジは、当然ながら新しいものに張り替える。

キライな作業だ
既存のエッジの除去は、以前はライターオイルを溶剤として使用していたけど、最近はシンナーを使うことが増えた。フレームの塗装を侵さないことが判っていれば、固い棒でゴシゴシこそぎ落とすよりも、接着剤をシンナーでブヨブヨにしてしまうほうが結果的に綺麗に仕上がる。

除去後
ちなみに、もともと付いていた板紙製のリング状のベースは、綺麗に剥がしてガスケットとして再利用しようとしたところ、左右で色味が微妙に異なることが判明。塗装も上手いこと乗らず、破棄することとなった。
 
新しいエッジは、ラバー製の汎用品をAliExpressで安く手に入れたかったのだけど、タイミング悪く適合品が売り切れ。
仕方がないので、専門店でクロス製を購入。だいぶ高くついてしまった。

見た目もウレタンに似ている
とはいえ、クロスエッジにありがちなゆがみがほとんどなく、薄手でウレタンのように軽量。良いものであるのは間違いない。

接着中
 

ガスケット

ゆがみがないといっても、ラバー製と異なりエッジの最外周は若干ガタガタする。接着はされているので性能面ではもちろん問題ないけど、見た目に拘る場合はなんとかして隠したい。
そこで、今回は実験的に、塩化ビニールのシートをリング状に切り出して覆ってみることにする。
赤いシートとしたのは、前面ネットを取り付けたとき、なにかアクセントカラーとなるようなものが薄っすら見えているとカッコいいんじゃないかと思ったからだ。
外径156mm、内径を142mmとし、コンパスカッターで切ってみる。
しかし、合板を切ることができるカッターであっても塩ビには向かないらしく、カットするのにだいぶ苦労した。厚み1mmなら余裕だろうと思っていたけど甘かった。0.5mmにすればよかったかもしれない。
そして、やっとのこと切り出してはみたものの、装着してみると思いのほかダサい。

ダッサい……
これならまだ無いほうマシ。失敗である。
塩ビの質感が想像以上に安っぽかったのが敗因。
 
とりあえず、ガスケットは無しにする。
もし付けるとしたら、厚めの紙製にして、もうすこし暗めの色味にするだろう。気が向いたらやってみるかもしれない。
 

さて、音がまともに出るようになったので聴いてみる。

整備後の姿
アンプはいつものように、ヤマハのAVレシーバー「RX-S602」。
高めの中音域を明朗に鳴らすバランスである。これはツイーターではなく、ウーファーから出ている音だ。相対的にツイーターの出音は大人しく聴こえる。
定位を感じられ、ボーカルがピッタリ真ん中に来る。全体としては寒色でモニター的な鳴らし方だけど、ダイレクトドライブのウーファーが元気で明るい雰囲気をもって聴かせてくれるので、音楽鑑賞のうえでつまらない印象は無い。これは軽量クロス製のエッジとの相性が良いのもあるかもしれない。
中高音重視といえば、最近ではJBLの「A520」を整備したけど、あちらほどの熱量は無く、程よくクールで、圧倒されにくい。
 
ツイーターの受け持つ高音域は、割と線が細め。ただこれは、電解コンデンサーからフィルムコンデンサーに変更しているからかもしれない。刺さるような音は無い。
 
低音域は、最低音域はあまり聴こえてこないものの、エレキベースの可動範囲くらいならそれなりに主張してくる。当初の予想通り、バスレフの恩恵はそれほどでもないようだ。
サイン波を流してみると、80Hzから下でバスレフポートからの風切り音がバサバサと盛大に聴こえてくる。あえて発するようにしているのかもしれないけど、あまり質の良いものではないと思う。個人的にはポートを塞いで密閉してしまったほうが好みの音だ。
 
周波数特性を見てみる。

周波数特性
100Hzから下が急降下するのは、改善してみたいところ。
高音域の妙なピークも、これを織り込んであえてウーファー直結としている設計なのだろうから、こういうものなのだろう。とはいえ、やっぱり1mH程度のコイルを一発ウーファーに挟んでおきたい気もしてくる。
 

まとめ

ここから調整していくとすれば、真っ先に手を入れたいのはバスレフポートである。ダクトと吸音材の追加で、もう少し量感のある低音が出てくれる気がする。
ただ、このスピーカーはあくまで、中高音を楽しく聴かせるものなのだとも思う。このスピーカーをしばらく聴いた後にほかのスピーカーを鳴らしてみると、音がやたら萎んで聴こえる。そのくらい高コントラストで能率感あふれる音色なのだ。

中毒性のあるスピーカーだ
改善点はいくつかあるとしても、それを補える強みを持つスピーカーといえる。
 

(追記)紙製ガスケット

失敗したガスケット制作について、塩ビではなく厚紙を使って再挑戦してみる。
ガスケットというか、目隠しを兼ねた化粧用リングなんだけど。
 
加工する紙は、「ケンラン180kg」の「えんじ」カラー。世界堂で入手。
ボール紙ほどではないけど、程よい厚みがあり、プラスチックのようなしなやかさがある。カラーは、やはり赤系で合わせたかったので、彩度明度共に低めの落ち着いた色味にしてみる。
 
カットの寸法は、外径155mmに内径143mm。前回制作したものはピッタリすぎて遊びがなかったため、若干細身のリングとする。

紙なので、切除もラク
接着は、スーパーXで。ウーファーエッジ側に薄く塗り込んでいく。

シリコン系接着剤なら、紙がシワシワになることもない
完成してみると、幾分柔らかい雰囲気になった。

完成後の姿
えんじといいながら、やや桃色寄りの色味をしているからかもしれない。
クロスエッジ最外周のゆがみも上手いこと隠せているし、くどくない程度に主張していて、違和感が少ない。前面ネットを取り付けてもちゃんと透けて見える。

前面ネットを付けた状態
いいんじゃないかな。
 
終。