タンノイの小型ブックシェルフスピーカー「mXR-M」を入手して音を出してみた。その所感。
リア用スピーカー
タンノイのスピーカーは、以前「Mercury F Custom」シリーズの「Mercury F1 Custom」を所有していたことがある。
思えばこの製品が、パッシブスピーカーに拘りだすきっかけとなった。試聴ができる家電量販店に出向き、明るいカラーリングとそれに見合う明るく晴れやかな音質に惹かれ、購入に至ったのだった。
当時の自分は、タンノイについては、本格的なピュアオーディオの名門として名前だけ知っている状態。そんなタンノイが机の上に置けるようなブックシェルフスピーカーを世に出していることを初めて知った。そんなことを薄っすら覚えている。
以下のページが、マーキュリーの系譜についてよくまとめられている。
今回手元に届いたのは、マーキュリーの系譜でいうとFカスタムから2世代前の製品だ。2001年に登場した「Mercury mX-M」シリーズのmXR-Mという小型スピーカー。
シリーズ最小サイズ。品番や各ユニットの配置から察するに、リア用のサテライトスピーカーとしてラインナップされたようだ。
特徴としては、このシリーズの前後にも同様の小型ブックシェルフスピーカーが発売されている中で、唯一フロントバスレフであること。デスクトップに置きやすい。
また、このMercury mX-Mシリーズから防磁設計が取り入れられている。
音
AVレシーバー「RX-S602」に繋いで鳴らしてみる。
容積にしては、低音が出ているように感じる。というか、低音の鳴らしかたが上手い。
小型なのでもちろん最低音は高いわけだけど、バスレフがよく効いていて、うるさくない程度に量感を得ていて安定して聴こえる。
中高音では、空気感の表現がきれい。質感はどちらかというとクールだけど、明瞭でキレが良く、スパンスパンと繰り出す音は聴いていて気持ちがよい。国外メーカーっぽい鳴らしかただなと思う。
高音域は、派手過ぎない程度に華やかな印象。やや上擦るようなクセが出ることもあるけど、不自然にはならず、高い音まで伸びている。このあたりは、ヤマハのアンプとの相性でそう聴こえているところもあるだろう。
定位感は標準的。音域的なレンジ感はやや狭め。ただ、音場が横方向奥行き方向ともに広めなので、窮屈な感じはあまりしない。
再生周波数特性を見ると、ほぼフラットになっている。
80Hzから200Hzまでの波形が緩く凸を描いており、理想的。これが安定感の秘密だろう。
物理的に置きやすいサイズ感で、楽しく聴かせる優秀なスピーカーだ。シリーズにはフロント用のスピーカーが別にあるけど、ニアフィールドで聴くならあえてこちらを2chステレオで据えるのもアリだと思う。
分解/整備
前オーナーが大切に扱っていたようで、手元のスピーカーは外観上は新品と区別がつかないほどきれい。出音的にも、改善したいようなところは特段見あたらない。
今回手を加えるのは、クロスオーバーネットワークのパーツのグレードアップ程度に留めておきたい。
ウーファーユニットは4点でネジ留めされている。
ただし、よくある六角穴かと思ったら、ヘックスローブだった。
ツイーターユニットは、筐体内部から接着剤で固定されているようで、取り外すのが難儀だったのでそのままとする。
吸音材は、約2cm厚のフェルトシートが背面に張られている。
ウーファーのフレームは樹脂製。マグネットはそこそこ大きめの径のものが採用されている。
スピーカーターミナルは、プッシュスナップイン式。こちらもツイーター同様、内部において接着剤で固定されている。
穴径が合えば埋込穴50mmの汎用ユニットのバナナプラグ対応品に替えてしまいたかったけれど、径が微妙に小さいようでそのままでは合わず、今回は換装を諦めた。
クロスオーバーネットワークの基板は、背面にネジ3点でスペーサーを挟んで固定されている。
ネットワークはELYTONE製。
高音域は18dB/oct、低音域は12dB/octの構成。リアスピーカー用途の製品にしては、しっかり設計されている印象。
コンデンサー類をすべてオーディオグレード品にしておく。
フィルムコンデンサーは、既存の基板に実装する際、リード線の延長が不要であるものを選んだ。
手を入れるのはここまで。
まとめ
フィルムコンデンサー搭載で歪み感が取れた程度で、改修前後で音に大きな変化は無い。
コストパフォーマンスの優れるスピーカーだ。このサイズでは、頭一つ抜けている感じがする。中古市場でもいまだにそこそこ高値で取引されているのも納得できる。
気に入ってしまったので、今後はサブ機として使用していくかもしれない。
(追記) 前面バッフル
別の個体を入手したところ、前面バッフルにあるネットを固定するためのラバー製のダボ穴が抜け落ちかけていたため、接着剤で補修しようとしたところ、ダボに隠蔽されたネジ頭を発見する。
外見上バッフルの板厚は1cmもないように見えるのだけど、この窪地にあるネジは、それと同等の深い位置にある。つまり、バッフルの外周部のみ薄くなっているだけで、それ以外はそれなりの厚みが確保されている、ということになる。
4か所あるダボのうちの正面向かって左上、ツイーター傍の穴には、ダボ穴とネジ頭に挟まる形で、シリアル番号が付されたシールがある。
もしやバッフルはキャビネットから分離できるのかもしれない。それが可能であれば、バッフル表面側からでは外しにくそうなツイーターユニットもなんとかなるかも。
しかし、淡い期待もむなしく、ネジ4つを外してみるもバッフルはビクともしない。
筐体の前面側に2本の桟があり、そこにタッピングネジで固定する構造なのだけど、さらに接着剤を併用しているのか、力尽くでバッフルを引き剥がそうとするとバッフルのほうが折れてしまいそうになる。もしかしたら正しい外しかたがあるのかもしれないけれど、ヘンに筐体を傷つけたくもないので、作業はここで断念。
終。