amadanaのスピーカー「PS-133」を入手したので、整備してみた。
といっても、入手時の状態が良好で、出音もそのままで十分聴けるレベルなので、たいしたことはしていない。
背の低い2WAY
amadanaブランドのパッシブスピーカーは、今回初めて手にする。
音の面よりも、最近のスピーカーで採用がめっきり減った突板仕上げのキャビネットで、背が低く立方体に近い形状ながらもドームツイーターを備えた2WAYスピーカーであることが興味をそそられた。
イメージとして近いのは、ONKYOの「SK-185」あたりだろうか。
改修前の音
正直なところ、このスピーカーに音は期待していなかった。外見にコストを割いた、コンポ付属品程度のものだろうと思っていた。
しかし、いつものようにYAMAHAのAVレシーバー「RX-S602」に繋いで鳴らしてみると、そんな予想はバッサリ裏切られてしまった。
バスレフ型らしい厚めの低音と、張りのある中音。そこにうまく乗っかった高音域も自然だ。
音場も広め。中音域には奥行きも多少感じられ、立体感がある。上から下まで満遍なく鳴らす、現代的なスピーカーの音だ。
それ以前に聴いていたのがYAMAHAの"テンモニ"こと「NS-10M」で、華やかな中音域を持つ10Mの音とどうしても比較してしまうのだけど、決して聴き劣りしない。出ている音域のバランスと透明感ではPS-133のほうが優れていると思う。
分解
意外である。俄然、中身を見てみたくなった。
しかし、レンガを積んだように規則的に並んだスリットが特徴的な前面パネルは、接着されているようでビクともしない。
試しに、先の細いピンセットをパネルのスリットに挿し込み、引っ掛けて持ち上げてみるも、ピンセット側が負けてしまいそうだったので止めた。
実は、このパネルもどのように固定しているのか、購入前から気になっていた。
解決方法としては、接着剤を溶かすための溶剤を流し込むくらいしか思いつかない。しかしそれも、突板にシミを付けそうなので、できればやりたくない。
ここを開かないと、各ユニットの固定ネジにアプローチできない。しかし、経年劣化しているならまだしも、外観上新品に近い綺麗な状態を保ちながら分解できそうになかったので、今回は諦めた。
代わりに、背面のスピーカーターミナルユニットからアクセスしてみる。
ポストはバナナプラグ対応で、最近修理部材として見かけるようになったナット風の肉厚な金属キャップのものが付いている。
ネジを外してみる。ターミナルユニット側は円錐上に面取りされた穴なのに、なべ頭のネジが使われている。
ユニットを引き抜くと、クロスオーバーネットワークの基板も一緒に出てくる。これは予想通り。
2つあるコイルはどちらも有芯。インダクタンスの数値は手持ちの計器による測定値。
回路自体はシンプルであるものの、ウーファー側のコイルはかなり小さいものが採用されているのが特徴か。
12dB/octならまだしも、単発ではさすがに小さすぎる気がする。これを設けるくらいならスルーにしたほうがいい気がするけど、何か意図があるのだろうか。
改修
自分が扱っているスピーカーの中では比較的新しい製造の部類で、状態も良いので、整備するのも外観とコンデンサーの換装くらいしかない。
コンデンサー
既存のコンデンサーは、シースに「SPT」と印字のあるもの。
悪いものでもなさそうだけど、詳細はわからない。
これを取り外し、新たにニチコンの「MUSE ES」とFaithful Linkのメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーの並列接続に変更する。両方とも、以前秋葉原に出向いたときにいくつか確保しておいたものだ。
Faithful Linkの小さなPETフィルムコンデンサーは、安価かつ音も良好なので、ネットワークのちょっとした整備に重宝している。
ウーファー側は、今回は弄らない。
エンクロージャー
ウォルナット突板を、オイル仕上げにしてみる。
オイルは、ワトコオイルナチュラル。オイル塗装には、ワトコが定番となりつつある。
今回の手順は、
- 1000番で軽く研磨
- オイル塗布
- 2000番で油研ぎ
- 即拭き取り、オイル再塗布
- 3000番で油研ぎ
- 拭き取り、一晩寝かす
- 再度拭き取り
表層に傷らしい傷がなかったので、塗布前の研磨は大きめの番手で撫でる程度にしておく。
ワトコオイルの特徴として、容器内の残量が少なくなってくると、使用前によく降ってから塗布してもムラになりやすいようだ。容器内の溶剤が揮発しているからか、ある程度乾いてくると粘度が高くなりすぎて、ウエスで綺麗に拭き取りきれなくなることがある。
残量がある程度減ったものを使用する場合、新しいものを継ぎ足すなどの工夫が必要なのかもしれない。
皿ネジ
スピーカーターミナルユニットを留めているネジは、皿ネジに変更する。
100均ショップで売られている木ネジセットにちょうど合うサイズのものがあったので、それを使う。
ネジ山のピッチが元のなべネジと合わないため、既存よりも呼び径が少し太いものとし、新たにタッピングする処置をとった。
ついでに、ポストも磨いておく。
金属用の研磨剤を含ませたクロスでゴシゴシ擦っていくだけ。
シロウトの研磨でも、処置前後で見た目が結構異なる。
改修後の音
整備を施した後でも、聴感上で音に変化はほとんどない。
高音域に若干透明感が増した感じはあるものの、音の伸び方は基本的に元と同等。録音を聴き比べないと判らない程度だ。
まとめ
前面パネルが容易に開かないという構造上の不満点はあるものの、家電として置かれることを意識して美観を優先した設計なのだろうから、一応理解はできる。
何か専用の治具でもあるのなら話は別だけど、前面の開放はまた機会があったときにしてみることにする。
モダンな外観と良音を兼ね備える、ある意味では理想ともいえるスピーカーではないだろうか。
終。