いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

YAMAHA NS-M325 をメンテナンスしてみる

ヤマハのブックシェルフスピーカー「NS-M325」を整備してみた。
とはいえ、近代の製品で、デフォルトでも十分質が良いため、手を入れる部分は少なかった。改修前後で音の変化もほとんどなかったため、写真による仕様の記録的な意味合いが強い記事となっている。

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経緯

NS-M325は、2005年発売の製品。密閉型の2WAYユニットで、幅150mmというやや細身なボディである点が、パソコンのモニター横に置くのにちょうど良く、気になっていた。以前整備して出音が気に入っている「NS-10MX」と、音の比較をしてみたくもあった。
中古で状態の良いものが流れたところを、タイミングよく手に入れることができた。

jp.yamaha.com

 

改修前の音

音の傾向は、想像通りテンモニと似ていた。
乾いて締まった低音、そつなく鳴らす中音、丸い高音。煌びやかであるものの硬く、モニターライク。音場や定位感もだいたい同じ。

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YAMAHA NS-M325
ただ、そもそもユニットもエンクロージャーもサイズが異なるため、NS-10MXのような安定感は無い。中音域の速度も平均的。
再生周波数だけ見ると、高音はテンモニよりも高く出るはずだけど、それほど伸びている印象はない。刺さるような感じが無いのも一緒。
 

分解、改修

分解して中を見ていく。
 
エンクロージャーは小型ながら、1本あたり3.8kgある。設置面積は小さくても高さがあるので、存在感がある。

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奥行きが短く、机の上に置きやすいのが良い
各ユニットを留めている六角穴のネジ4つを外すだけ。

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10cmコーン型ウーファーを外したところ
最近導入したベッセルのボールグリップドライバーが大活躍。

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もっと早く導入すべきだった
ネジのいくつかは若干腐食していた。ヤマハのスピーカーでユニットを固定しているこのネジは、どの年代のどの製品でも大抵腐食している気がする。なんとかならないものか。

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薬剤で錆びをできるだけ除去しておく
背面のターミナルからネットワーク、さらにネットワークからウーファーユニットまでのケーブルは、ALR/JORDANのスピーカーケーブルが使われていた。

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メーター500円くらいか
決して高価なケーブルではないけど、「音質チューニングしてます」感があって良い。
ちなみに、ツイーター用配線はオーナンバ製のビニールケーブルだった。

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「アドバンスドPMDウーファー」なる、乳白色の振動板

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100kHzまで出音するという、「アルミマグネシウム合金DC-ダイヤフラム方式3cmドームツイーター」
吸音材は入っていないのかと思ったら、バインディングポストのすぐ下にちょっとだけあった。

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これがどの程度効果があるのかは不明
グラスウールがこれでもかと詰め込まれたテンモニシリーズとは異なる点だ。
 
ネットワーク回路は、MDFの切れ端で作られたウマの上に、各パーツが固定されていた。プリント基板を用いず、各パーツとケーブルの接続は直にはんだ付けで行われていた。

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ネットワーク回路
ツイーター用に2.2μFと8.2μFのフィルムコンデンサー、0.27mHのコイル。
ウーファー用に容量不明のコアコイルと8.2μFの電解コンデンサー。

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いい加減、インダクタンス測定できる機器を買うか……
クロスオーバー周波数は2.5kHzらしいけど、この回路構成でどうしてそうなるのか、自分にはよくわからない。
 
フィルムコンデンサーはいずれも、SOLEN製のメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサーが採用されていた。測定結果上は、劣化は見受けられなかった。
対してウーファー並列のニッケミ製電解コンデンサーは、一方は9.0μF、他方は9.4μFまで値が上昇していた。これはフィルムコンデンサーに換装する。
 
使うのは、最近ネットワークに多用しているパナソニック製の「ECQE」。

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値段も手ごろで使いやすい
ポリプロピレンでなくとも、音への影響は少ないだろうという判断。
しかし、既存のたっぷり盛られているはんだが、全然融けない。一応、40Wのこてを使っているのだけど。無鉛はんだだからだろうか。

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ビクともしない
仕方がないので、既存のコンデンサーの撤去はリード線の切除のみとし、上から新しいコンデンサーのリード線を巻き付けてはんだ付けした。

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まあ、機能してくれればそれでいいので
コンデンサーと近辺のケーブル類を、ホットボンドでMDFと固定しておく。
 
ついでに、バインディングポストもターミナル部のみ新しいものに交換する。

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磨き上げるより丸々交換のほうがラク
 

改修後の音

音への影響が大きいコンデンサー交換は、ウーファー用の並列接続分のみなので、メンテナンス前後の出音に差異はほとんど無いだろうと思っていた。

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下に敷いているのは花こう岩プレート
実際、その通りだった。
コンデンサーの経年変化が進めば多少変わることもあるのかもしれないけど、人間の耳が察知できるのか甚だ疑問だ。
 
今は、吸音材を増やしてみて音がどのように変化するのか試しているところ。ツイーターの裏近辺に、手芸用の中空綿を詰めてみた。

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お手軽吸音材
ただ、厳密に聴き比べていないけど、無いときより音が引っ込んだ気がする。
底部にちょびっとだけ置いてあった吸音材も、計算されて置かれているということか。
 

まとめ

1本15,000円のスピーカーではあるものの、既存のコンデンサーにポリプロピレンフィルムコンデンサーを使っていたり、配線素材に拘っていたりと、それなりに音質に気を遣っていたことがうかがえる製品だった。当時はAmazonで9,500円程度だったことを踏まえれば、コストパフォーマンスは結構良かったのではないか。

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落ち着いた佇まいなのも良い
現在は発売を終了しているけど、今はさらにお手頃な「NS-BP200BP」なんてものもある。機会があれば鳴らしてみたい。
 
終。