小型デジタルアンプ「FX-AUDIO- FX-502J」の改修を行って、スピーカーの出音の変化を確認した。その所感。
自分用の覚書も兼ねる。
改修前後の音の変化は動画で比較できる。
動機
現行品は「FX-502J PRO」である。
FX-502Jは生産を終了しているのか、現在は新品で入手するのが難しくなってきている。
それでいてなぜこんな比較的古いモデルのデジタルアンプを手にしたのかといえば、現行モデルにあるトーンコントロールが不要なことと、安価な割に音の出が良いという評価を見かけたこと。基本的にアンプでは音の色付けをしないので、トーンコントロールが付いてプラス2,000円となるFX-502J PROを買う気になれなかった。
作業スペースでBGMを鳴らすだけなので、最小限の出費と最小スペースでシステムを組みたかったのである。
あとは、このモデル、発売からマイナーチェンジを繰り返しているようで、初代と比較して内部のパーツをいくつかダウングレードしているようだった。せっかく最近はんだ付けできる設備を揃えたので、改修できるところは自分でやってしまおう。ついでに音がどの程度変わるのか確認してみよう、となったのだった。
外観
前面にはI/Oのトグルスイッチに、ボリュームツマミ。背面にはRCAとスピーカーケーブルのポスト、電源。
RCAケーブルで信号を受けて増幅してスピーカーに渡すために必要なだけの、シンプルなインターフェースとなっている。
ケースは背面を含め、全身ヘアライン加工のアルミ製で意外にも剛性を備える。特に前面パネルは厚さが6mmもある。よく見ればそれなりだけど、遠目から見れば決してチープには見えない。
トグルスイッチの下とボリュームツマミの奥にLEDを備える。どちらも光がかなり控えめで、辺りが暗くないとよく見えない。かといって主張してもらっても目障りなだけなので、これはこれでいいのかもしれない。
分解
ネジ
前面と背面のパネルにそれぞれある4本のネジを外せば、内部にすぐアクセスできる。
ただし、ネジの種類が前後で異なる。前面は六角穴。背面はヘックスローブ(トルクス、星型)だ。なんでだろう。
基板(改修前)
真っ白い基板が出てくる。プリントの上に塗装されていて、目視で経路を追うのは自分には難儀。
コンデンサー、オペアンプ
IC周りにバルクコンデンサーと呼ばれるものが4つ備えられている。これは、電圧変化にシビアなデジタルアンプの安定動作に貢献するらしい。
ボリュームツマミのすぐ後ろには、音声入力のカップリング用らしき小さな電解コンデンサーがある。ここだけELNA製。
今回は、主にこれらアルミ電解コンデンサーを別のものに換装していく。
ちなみに、トランジスターは今回弄らない。勉強不足なのでまだ手を入れられない。
換装
パーツの交換に際し、アンプ周りと音声信号周り各々でどの程度音に変化があるのか確認したかった。
下は、換装パーツの一覧。自分用メモ。
パーツ一覧
NE5532 → LME49720
デカップリング
ニッケミ LXZ 35V 1,800μF → ルビコン ZLH 35V 2,200μF
(ZLHケースサイズ 16x25mm cf. Max35mm)
バルク @4
トランジスター周り @3
ニッケミ KY 25V 220μF → ニチコン FG 25V 220μF
(ケースサイズアップ 8x11.5mm → 10x16mm)
ニッケミ SRG 16V 47μF → エルナ SILMIC-2 25V 47μF
(ケースサイズアップ 5x7mm → 8x11.5mm)
音声入力カップリング @2
エルナ RC2(?) 50V 3.3μF → WIMA MKS2 50V 3.3μF
前段増幅オペアンプ
製品には「NE5532」が乗っている。手持ちに「LME49720NE」があるので、とりあえずそれに替えてみる。
レンジが広がりHiFiな音になるというLME49720。以前USB-DACのFX-04J+に使用したことがあって、確かに噂通りだったのだけど、結構な発熱があったので怖くて外してしまった。音に問題なくても、発振していたのかもしれない。
こちらではそんなこともなく、いくら鳴らしてもNE5532と同じくらいに収まる。いたって平熱。
デジタルアンプ周辺
コンデンサーの換装を行っていく。まずはデジタルアンプ周りから。
もともとバルクコンデンサーとして付いているYXFシリーズはもとより、デカップリングのニッケミLXZよりさらにMAXインピーダンス値が低い。アンプ周りにはうってつけだろうと思い、5つすべてこれにしてみることにした。
探した結果、若干ながら容量アップを果たした。突入電流の保護システムが無いから、この辺りが妥当なところだろう。
ZLHにすべて換装したところで、一旦システムに組み込んで音を出してみる。
動画にはしなかったけれど、実はこの状態の音は元とかけ離れて透明感がかなり上がって、別モノのようになった。かなりの"寒色"。
ただ、これはいわゆる「スカスカ」とか「上擦った音」とも評価できそうだったので、比較対象とはしなかった。
電源回路
ここのコンデンサーはオーディオの特性的にどんなものにすればいいのかイマイチ判断つかなかったので、とりあえず定番のオーディオ専用品を用意してみた形。
ただ、本来はケースサイズが一回り小さい下位グレードの「FW」シリーズにする予定だった。されども手元にあるのは「FG」。先日秋葉原のラジオデパートに行ったとき、勘違いで購入してしまったのだった。
ダメ元で基板に乗せてみると、ギチギチになりながらも何とか乗せられたので安堵。
結果オーライ。
オペアンプ横カップリング
先日立ち寄った秋葉原ラジオ会館の若松通商で、日替わりセール品として売られていたELNAの「SILMIC-2」に、該当の容量のものがあったので購入。良いタイミング。
オペアンプのソケットとのクリアランスを確保するため、フォーミングされたリードをなるべく真っ直ぐにしてから、ケースをやや浮かせ気味に取り付けた。問題は無いだろう。
音声入力カップリング
秋葉原の千石通商で見つけた、WIMAのMKS2を乗せてみる。
リードを少しフォーミングしないと物理的に干渉して乗せられない。MKS2は脚が短く、スルーホール貫通には割とギリギリの長さだった。はんだ付けに支障がない範ちゅうで済んだ。
基板(改修後)
基板上の作業はこれでひとまず完了。オペアンプを外している場合は、忘れずに取り付ける。
音出し
音を聴いてみる。改修前後の音を比較できるよう動画にまとめた。
デジタルアンプ周りのコンデンサーのみ替えたときの透明感が抑えられ、代わりに付帯音が増えた印象。オペアンプ交換のみの場合と似た傾向になりながら、カッチリしていた音がやや緩くなり、暖色になった。アナログに近づいたともいえるかもしれない。
それぞれの音のニュアンスについて、録音ではなかなか伝わらないほど差が小さい。このあたりの音の違いを収録するには、手元の設備では限界なのかもしれない。
ケースの脚換装
音質には関係ないけど、アルミケースについている脚が机の上をツルツル滑って扱いづらいので、別の素材に付け替える。
4つの脚は接着剤で強固についている。ライターオイルで溶かし、ウエスで入念に拭き取る。
用意した代替素材は、最近アクティブスピーカーにも使用した戸当たりクッション。
5mm厚の透明のポリウレタン製で見た目もよく、グリップ力もそこそこ。前面のスイッチ操作やケーブルの抜き差し時に効果を発揮してくれる。
両面テープ装着済みで、四隅に貼り付けるだけ。
まとめと今後
音の違い
相変わらずどういう理屈なのかわからないけど、コンデンサー換装で音は変わる。ただ、オペアンプもしかり、「変わる」のは高音域の歪み方なんじゃないかという気がしないでもない。中音の倍音にあたる高周波数帯に何かしらの変化があるから、元からガラリと変わるわけではなく微妙な違いとして人間の耳に聴こえるのではないか。
シンバルやスネアドラムの鳴り方を聴き比べていて、そんなことを思った。
今後
実のところ、動画収録外とした超寒色の音と、今回改修後の音の中間くらいの音が欲しい。電源回路のFGをアルミ固体電解コンデンサーあたりにするとちょうどいいのかもしれないな、などと妄想している。
そして、音の変化が大きいというトランジスターの変更に手を付けるかどうか。代用できそうなものを調べてはいるけど数が少ないようだし、今の音でも割と満足なので、そこまでしないかもしれない。
本体が小型で、ネジを外すだけでアクセスできる気軽さが、さらなる改装をさせようとしてくる。あまり沼に踏み込まないようにしたい。
終。
(2021/10/30 再調整)
(以下資料)