いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

FX-AUDIO- FX-502J のコンデンサー類を交換してみる

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小型デジタルアンプ「FX-AUDIO- FX-502J」の改修を行って、スピーカーの出音の変化を確認した。その所感。
自分用の覚書も兼ねる。
 
改修前後の音の変化は動画で比較できる。


www.youtube.com

 

動機

現行品は「FX-502J PRO」である。 FX-502Jは生産を終了しているのか、現在は新品で入手するのが難しくなってきている。
それでいてなぜこんな比較的古いモデルのデジタルアンプを手にしたのかといえば、現行モデルにあるトーンコントロールが不要なことと、安価な割に音の出が良いという評価を見かけたこと。基本的にアンプでは音の色付けをしないので、トーンコントロールが付いてプラス2,000円となるFX-502J PROを買う気になれなかった。
作業スペースでBGMを鳴らすだけなので、最小限の出費と最小スペースでシステムを組みたかったのである。

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本当はシルバーモデルが欲しかったけど、売り切れだった
あとは、このモデル、発売からマイナーチェンジを繰り返しているようで、初代と比較して内部のパーツをいくつかダウングレードしているようだった。せっかく最近はんだ付けできる設備を揃えたので、改修できるところは自分でやってしまおう。ついでに音がどの程度変わるのか確認してみよう、となったのだった。
 

外観

前面にはI/Oのトグルスイッチに、ボリュームツマミ。背面にはRCAとスピーカーケーブルのポスト、電源。

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電源状態がひと目でわかるトグルスイッチなのが良き
RCAケーブルで信号を受けて増幅してスピーカーに渡すために必要なだけの、シンプルなインターフェースとなっている。
ケースは背面を含め、全身ヘアライン加工のアルミ製で意外にも剛性を備える。特に前面パネルは厚さが6mmもある。よく見ればそれなりだけど、遠目から見れば決してチープには見えない。

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ボディは筒状ではなく、天面と底面で半分に分離できる構造
トグルスイッチの下とボリュームツマミの奥にLEDを備える。どちらも光がかなり控えめで、辺りが暗くないとよく見えない。かといって主張してもらっても目障りなだけなので、これはこれでいいのかもしれない。
 

分解

ネジ

前面と背面のパネルにそれぞれある4本のネジを外せば、内部にすぐアクセスできる。

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まるで分解してくださいと言わんばかり
ただし、ネジの種類が前後で異なる。前面は六角穴。背面はヘックスローブ(トルクス、星型)だ。なんでだろう。

基板(改修前)

真っ白い基板が出てくる。プリントの上に塗装されていて、目視で経路を追うのは自分には難儀。

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FX-502Jの基板(工場出荷状態)。Rev.6.0とある

コンデンサー、オペアンプ

中心に据えるアンプICの横に、電源デカップリング用の大きなアルミ電解コンデンサーがひとつ横たわっている。このコンデンサーのケース径16mmが、積んである中では最大。
 
IC周りにバルクコンデンサーと呼ばれるものが4つ備えられている。これは、電圧変化にシビアなデジタルアンプの安定動作に貢献するらしい。

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カップリングと4つのバルクコンデンサ
ボリュームツマミのすぐ後ろには、音声入力のカップリング用らしき小さな電解コンデンサーがある。ここだけELNA製。

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シリーズは不明
すぐ横には、カップリング用と思われるコンデンサーが付いている。ニッケミ「SRG」シリーズという、薄型化されたリード型コンデンサーらしいけど、現在は製造していないものみたい。

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前段増幅回路と電力供給回路
前段増幅用オペアンプは、DIPタイプの「NE5532」が乗っている。ソケット式なので容易に交換可能。
 
トランジスター周りにIC電源用のバッファコンデンサーと思われるものが3つある。温度範囲105度まで対応の低Z品らしい。

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KYシリーズは一般品ながら、オーディオ機器にもよく使われるらしい
今回は、主にこれらアルミ電解コンデンサーを別のものに換装していく。
ちなみに、トランジスターは今回弄らない。勉強不足なのでまだ手を入れられない。
 

換装

パーツの交換に際し、アンプ周りと音声信号周り各々でどの程度音に変化があるのか確認したかった。
下は、換装パーツの一覧。自分用メモ。

パーツ一覧

 NE5532 → LME49720
カップリング
 ニッケミ LXZ 35V 1,800μF → ルビコン ZLH 35V 2,200μF
  (ZLHケースサイズ 16x25mm cf. Max35mm)
バルク @4
 ルビコン YXF 25V 470μF → ルビコン ZLH 35V 470μF
トランジスター周り @3
 ニッケミ KY 25V 220μF → ニチコン FG 25V 220μF
  (ケースサイズアップ 8x11.5mm → 10x16mm)
オペアンプカップリング @2
 ニッケミ SRG 16V 47μF → エルナ SILMIC-2 25V 47μF
  (ケースサイズアップ 5x7mm → 8x11.5mm)
音声入力カップリング @2
 エルナ RC2(?) 50V 3.3μF → WIMA MKS2 50V 3.3μF

前段増幅オペアンプ

コンデンサー交換の前に、オペアンプの交換を行っておく。
製品には「NE5532」が乗っている。手持ちに「LME49720NE」があるので、とりあえずそれに替えてみる。

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印字が消えかけているけど、手前がLME49720
レンジが広がりHiFiな音になるというLME49720。以前USB-DACのFX-04J+に使用したことがあって、確かに噂通りだったのだけど、結構な発熱があったので怖くて外してしまった。音に問題なくても、発振していたのかもしれない。
こちらではそんなこともなく、いくら鳴らしてもNE5532と同じくらいに収まる。いたって平熱。
 
出音のほうはUSB-DACの時と同様、高音域が伸びて薄膜一枚取れた印象がある。しかも、DACの換装のときよりも音の変化が如実だ。あまり変化は無いだろうと思っていたので、ちょっとビックリ。
オペアンプはLME49720NEで決定。ほかのオペアンプも試したいけど、今はそんな気力がない。

デジタルアンプ周辺

コンデンサーの換装を行っていく。まずはデジタルアンプ周りから。
用意したのは、ルビコンのZLHシリーズ。

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ルビコン ZLHシリーズ
「超」低インピーダンスを謳う製品で、秋葉原の秋月で手に入れたもの。
もともとバルクコンデンサーとして付いているYXFシリーズはもとより、デカップリングのニッケミLXZよりさらにMAXインピーダンス値が低い。アンプ周りにはうってつけだろうと思い、5つすべてこれにしてみることにした。

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5つのコンデンサーを換装したところ
カップリングコンデンサーは、スペースが許す限り静電容量の大きいものを取り付けたい。
探した結果、若干ながら容量アップを果たした。突入電流の保護システムが無いから、この辺りが妥当なところだろう。
 
バルクコンデンサー4つは、定格電圧が25Vから35Vに上がっている。これは、ZLHシリーズだと同じ静電容量で電圧が上がってもたまたま同じケースサイズだったためで、インピーダンスを稼ぐためである。
 
ZLHにすべて換装したところで、一旦システムに組み込んで音を出してみる。
動画にはしなかったけれど、実はこの状態の音は元とかけ離れて透明感がかなり上がって、別モノのようになった。かなりの"寒色"。
ただ、これはいわゆる「スカスカ」とか「上擦った音」とも評価できそうだったので、比較対象とはしなかった。

電源回路

次は、トランジスター周り。ニチコンのFGシリーズ。

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ニチコン Fine Goldシリーズ
ここのコンデンサーはオーディオの特性的にどんなものにすればいいのかイマイチ判断つかなかったので、とりあえず定番のオーディオ専用品を用意してみた形。
ただ、本来はケースサイズが一回り小さい下位グレードの「FW」シリーズにする予定だった。されども手元にあるのは「FG」。先日秋葉原のラジオデパートに行ったとき、勘違いで購入してしまったのだった。
 
ダメ元で基板に乗せてみると、ギチギチになりながらも何とか乗せられたので安堵。

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若干ケースを浮かせても、天板に干渉せず収まる
結果オーライ。

オペアンプカップリング

オペアンプ直近のコンデンサー2つを換装する。
ここのコンデンサーは、このアンプ発売当初ELNA製オーディオグレードのコンデンサーが付けられていたみたいだけど、現行は一般的なものに変更されている。グレードアップさせたい。
 
先日立ち寄った秋葉原ラジオ会館若松通商で、日替わりセール品として売られていたELNAの「SILMIC-2」に、該当の容量のものがあったので購入。良いタイミング。

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ELNA SILMIC-2シリーズ
オペアンプのソケットとのクリアランスを確保するため、フォーミングされたリードをなるべく真っ直ぐにしてから、ケースをやや浮かせ気味に取り付けた。問題は無いだろう。

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オペアンプソケットに、指がギリギリ届く程度

音声入力カップリング

最後に、音声入力の頭にあるコンデンサー2つを交換する。

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コンデンサーを外したところ。四角いプリントがある
こちらにも電解コンデンサーが付いているけど、容量的にフィルムコンデンサーにできそう。
 
秋葉原の千石通商で見つけた、WIMAのMKS2を乗せてみる。

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WIMA MKS2シリーズ
リードを少しフォーミングしないと物理的に干渉して乗せられない。MKS2は脚が短く、スルーホール貫通には割とギリギリの長さだった。はんだ付けに支障がない範ちゅうで済んだ。

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リードをラジオペンチでほんの少しだけ曲げる

基板(改修後)

基板上の作業はこれでひとまず完了。オペアンプを外している場合は、忘れずに取り付ける。

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FX-502Jの基板(改修後)

音出し

音を聴いてみる。改修前後の音を比較できるよう動画にまとめた。
デジタルアンプ周りのコンデンサーのみ替えたときの透明感が抑えられ、代わりに付帯音が増えた印象。オペアンプ交換のみの場合と似た傾向になりながら、カッチリしていた音がやや緩くなり、暖色になった。アナログに近づいたともいえるかもしれない。
音質的な変化は小さくなったけど、ボーカルが前に出てくるところは、ニチコンFGの特性が出ているのだろうか。また、上流のフィルムコンデンサーの影響か、エレキギターやシンバル系がやや複雑な音になった。
 
それぞれの音のニュアンスについて、録音ではなかなか伝わらないほど差が小さい。このあたりの音の違いを収録するには、手元の設備では限界なのかもしれない。

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録音風景
 

ケースの脚換装

音質には関係ないけど、アルミケースについている脚が机の上をツルツル滑って扱いづらいので、別の素材に付け替える。

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脚は割と適当に付けられている
4つの脚は接着剤で強固についている。ライターオイルで溶かし、ウエスで入念に拭き取る。

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最近のお気に入りアイテム
5mm厚の透明のポリウレタン製で見た目もよく、グリップ力もそこそこ。前面のスイッチ操作やケーブルの抜き差し時に効果を発揮してくれる。
両面テープ装着済みで、四隅に貼り付けるだけ。

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さながら水信玄餅である

まとめと今後

音の違い

相変わらずどういう理屈なのかわからないけど、コンデンサー換装で音は変わる。ただ、オペアンプもしかり、「変わる」のは高音域の歪み方なんじゃないかという気がしないでもない。中音の倍音にあたる高周波数帯に何かしらの変化があるから、元からガラリと変わるわけではなく微妙な違いとして人間の耳に聴こえるのではないか。
シンバルやスネアドラムの鳴り方を聴き比べていて、そんなことを思った。

今後

実のところ、動画収録外とした超寒色の音と、今回改修後の音の中間くらいの音が欲しい。電源回路のFGをアルミ固体電解コンデンサーあたりにするとちょうどいいのかもしれないな、などと妄想している。
 
そして、音の変化が大きいというトランジスターの変更に手を付けるかどうか。代用できそうなものを調べてはいるけど数が少ないようだし、今の音でも割と満足なので、そこまでしないかもしれない。
 
あとは見た目の問題だけど、青色LEDが好みではないので、別の色のLEDに替えてしまいたい。近日中にまた秋葉原に向かう機会があるから、その際にコンデンサーと一緒にバラ売りのLEDを買ってくるか。
 
本体が小型で、ネジを外すだけでアクセスできる気軽さが、さらなる改装をさせようとしてくる。あまり沼に踏み込まないようにしたい。

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これ以上のアンプは必要ないな
終。
 
(2021/10/30 再調整)

morning-sneeze.hatenablog.com

(以下資料)

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