いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

JBL 4312M II を鳴らしてみる

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JBL 4312M markII が到着。

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状態の良さそうな中古品を手に入れられた。3WAYスピーカーは初導入。先日試聴して、ちょっと気になっていたのだった。
 
カチカチに矩形の筐体なので所々カドが擦り減っていたりするけど、外観は許容できる状態。これを、アルミ製のサイコロをインシュレーター代わりにして花こう岩プレートの上に乗せている。
 
最近のリファレンス音源はスピッツの「見っけ」。早速鳴らしてみると、「嘘だろ」と呟くくらいくぐもっていてガッカリ。ボーカルは真ん中で鳴るけど奥にいる。カーテン越しに聴いているみたいな冴えない音。音圧自体も小さめ。
こんなラジカセみたいな音があの4312Mなのか? YAMAHAのAVレシーバーではドライブしきれていないのか?
しばらく聴いてみて、違和感を拭えないようなら売り払おう。というわけで、手持ちのソースをとっかえひっかえして音を出し続けることにした。
 
しかし、次に流してみたAltanの「The Gap Of Dreams」から情景が一変する。
The Gap of Dreams

The Gap of Dreams

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ギターやブズーキの粒が揃って、中音域に厚みがあり低音部で艶がある。フィドルのニュアンスがよく伝わり、軋むような擦過音が心地良い。
どうもこのスピーカー、音源を選ぶようだ。近年あるようなコンプレッサー潰されまくりの曲より、物静かで空間に余裕のある楽曲で本領を発揮する。ただ、ボーカルがやや引っ込みがちなのはどれもあまり変わらない。
 
そんなことを思いながら、打ち込み系のm-floの「Award SuperNova -Loves Best-」を流してみる。前述のとおりであれば、最も不得意な領域のはずだ。 悪くはないけど、今一つノリ切れない。もともと低音を響かせるスピーカーではないのである程度は仕方がない。最低域の音は出ていないけど、なんとなく「量感」は感じ取れる。頭を振り動かしてうねり狂うようなサウンドを求めてはいけないのだろう。
 
このあたりから、音圧の小ささが気にならなくなってきた。というか、徐々に"鳴る"ようになった気がする。ちょっとだけ上げていたボリュームを元に戻した。
 
いくつかジャンルを行き来しながら、一番初めに流した「見っけ」に戻ってきた。すると、初めに聴いたときとは明らかに異なる鳴り方をしてきた。まず音場が広がり、定位がしっかりした。ドラムのバスドラのアタックやスネアのわずかな胴鳴りも聴き取れるようになって、曲全体が締まって聴こえる。ボーカルは前に出てきたというよりも、ほかの楽器が邪魔をしなくなった感じ。全体的にキレが良くなった。

 

気付いたら同じスピーカーとは思えない状態になっていた。
 
なんでこんなことが起きたのか。考えられるのは二つ。
ひとつは、おそらく慣らし運転が必要だったのではないか。このスピーカーの前オーナーは、使わなくなってから6年ほど仕舞いこんでいたと言っていた。その間ウーファーのエッジが硬直してコーンが動きづらくなったりしたのではないか。極短時間で音が変化したのは、この製品が新品ではなく、もともとある程度ランニング済みのユニットで、既に馴染んでいたものだったから。
もうひとつは、自分の体調の変化。要は、起き抜けのボーっとした頭で音を聴いていたのが、時間をかけているうちに冴えてきて、耳も聴き慣れてきたのだ。いわゆる「エージング」に懐疑的な自分としては、こちらの説を推したい。
 
4312Mは、高音域(HIGH FRQ.)と中音域(MID FRQ.)のレベルをそれぞれツマミで「小・中・大」と上下させることができる。
自分の環境の場合、高音域を上げると前述のAltanのフィドルが若干ギラついてしまうけど、大体の音源でバランス良く美しく聴こえたので上げた状態にしている。一方、中音域を上げると音自体はクリアになるけど、定位が崩れてしまったためフラットに留めている。
 
ともあれ、とりあえず売り払わなくて済みそうな出音にはなった。でも翌日、一週間後、一月先になれば、また違う聴こえ方をするだろう。自分の感覚がこのスピーカーにどこまで寄り添えるのかまだわからない。万能選手でもなさそうだし、同価格帯で現代の楽隊に合ったもっと良い音のするスピーカーはほかにもある。要観察。

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