いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

キースイッチのスプリングを換装して軽量化してみる

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非常に軽いスプリングをキースイッチに組み込んでみた。その所感。
 
 

経緯

 
先日、メカニカルキーボード用キースイッチ「Alpaca V2」に、SPRiT Designsの交換用スプリング「MX Slow Extreme 55S」を搭載し、押下圧の軽量化を図ってみた。

morning-sneeze.hatenablog.com

しかし、スロースプリングはスペックから想定していた以上に重く、長時間のタイピングで手が疲れてしまうのだった。
仕方がないので、再度スプリングを換装することにした。ただ、今回は市販のキースイッチにはまず組み込まれない少し特殊なものを用意してみた。
 

製品

 
購入したのは前回と同じくSPRiT Designsの交換用スプリングで、「MX Supreme」の35S。

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使ってみたかったんだよね。
メーカーではメインストリームにあたるシリーズ。ただし、作動点が25cNとある。速記用とされる「超軽量」のスプリングらしい。

www.spritdesigns.com

さらにこれ以上軽量なものもあるけど、あまり極端に軽いのも扱いにくいかと思い、こちらにしてみた。
はたして、どんなものなのか……
 

交換

 
既存のキースイッチに換装していく。作業としてはスプリング自体を「GPL 105」でゆすいで、キースイッチのハウジングをこじ開けて既存のスプリングと交換するだけ。

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潤滑剤と一緒に袋に入れてシャカシャカ振る。
スイッチの個数は67個。ステムとハウジングの潤滑には一切手を入れなかった。それでもスプリングノイズを確認しながらの作業だとすべて終えるまで1時間かかってしまった。
 
ハウジングを分解してみると、挟んでいたフィルムが変形しているものがいくつか確認された。

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フィルムの材質にもよるのかな。
ハウジングを閉じる際にフィルムが何らかの原因で所定の位置からズレることがある。上下のハウジングの隙間にうまいこと挟みこむのは、作業としては単純だけど意外にも難しく、幾度かやり直すこともあった。これは未だにコツをつかめていない。
 

打感

 
さて、換装したあとの打感はというと、"キーを打つ感覚がない"。
触覚としてはGateronのいわゆるクリア軸よりやや軽い印象。指をキートップにそっと置くだけで沈み込んでいくので、豆腐を箸で掴むかの如く、赤ん坊の子猫を撫でるかの如く、繊細な指使いにならざるを得ない。
慣れてしまうと赤軸すら重く感じる。これ以上軽いスプリングにしたらどうなるのか、という興味が湧いてくる。
 
軽くなる弊害として、キーに少し触れるだけで作動するので意図しないタイプが発生しやすい。
それと、ガンガン底を打つ打ち方ではキーの戻りの遅さに違和感を覚えると思う。
いずれもとにかくフェザータッチを心掛ける必要がある。キーを「打つ」というより「撫でる」感覚を掴むこと。
 

 
気掛かりだった打鍵音の変化。
想像していた通り、ボトムサウンドがやや高音寄りのプロファイルになった。ただ、これはスプリングの反発が弱まり底打ちまでのスピードが上がった結果、底面に触れる際の衝撃が強まったために余計な音を出しているのかもしれない。
音がダブついたりせず、締まったままなのは良かった。
 

課題

 
気になる点が二つある。
 
一つは、スプリングの動作が弱まった影響か、キースイッチの潤滑化の効果がよりはっきりと指に伝わってくるようになった。これにより、同じキースイッチを同じように「Lube」したはずでも比べてみると個体によってばらつきがあることが如実に判る。ステムの「擦れ感」とでもいうべきか。

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個体差もあるのかもしれない。
これを解決するには潤滑化を上手になるしかないのだろうけど、そこまでかまけていられないのが実情。ある程度は妥協して使用していくことにする。
 
もう一つは、スペースキーの動作。押下したスペースキーが元の位置まで上がりきらないことがある。

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上:無負荷状態 中:底まで押下 下:指を離したところ
スプリングの反発力にキーキャップとスタビライザーのワイヤーの重さが勝っているようだ。機能上支障は無いけど、見た目も触覚もとても気持ち悪い。
とはいえ、これは地球に重力がある限り手の施しようがない。スペースキーは力の入りやすい親指で押下するので、ほかのキーより重くても使用上違和感がないことは以前確認済み。対処としては、スペースキーだけ別のキースイッチにしてしまうのが早そうだ。
 
もしかしたら超軽量のスプリングは、1Uサイズ、もしくはそれに準ずる小さめのキーに用いることが前提の設計なのかもしれない。
 

まとめ

 
重いキーは疲れる。だけど、だからといって軽いキースイッチのほうが良いのかというとそうでもないことがわかった。
繊細なパーツであることは事前に確認していたし、タイピングだけに焦点を合わせれば軽量のキースイッチが自分に手に合っていることは間違いない。それでも手放しに「このキーボードは使いやすい。最高だ!」と喜べないでいる。あちらを立てればこちらが立たず、といった感じなのだった。
 
自分にとって打ちやすいキーボードとはどんなものなのか、よくわからなくなってしまった。このまま突き詰めていくにしても、何をしたらいいのかもわからない。ここがこのキーボードにおける現状の終着点なのかもしれない。
 
とはいえ、実はもうひとつキースイッチを注文している。到着次第そちらも装着してみたい。
 
キーボードの沼、いつになったら抜け出せるのだろうか。

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深夜1時くらいに黙々と作業……
終。