いつか消える文章

本当は、ペンとノートを持ち歩くことにあこがれている。

聖剣伝説3 TRIALS of MANA 所感

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昨年の夏の発表からずっと待ち続けたゲームがようやく発売ということで、数日潰してプレイ。
人生を一番費やしたゲーム「聖剣伝説3」のリメイク作品。
その所感。

キャラクター

原作はスーパーファミコン。2Dドット絵の世界だった。今作はフル3D。
描写はさすがに綺麗だ。キャラクターも今風にリファインされて、かわいらしい。
ストーリー部や戦闘はフルボイス。デュランとケヴィンの声は想像できなかったけど、違和感のない声色で嬉しい。リースはもう少し少女っぽい感じを想像していた。でも、これはこれで良い。
女性陣はみんなハキハキした喋り。シャルロットがシャルロットしている。良い。
アルマって、お婆ちゃんじゃなかったのか。かなり若くてびっくり。
ニキータがかわいい。クセになる声色。
精霊もイメージ通りの声色で嬉しくなる。声優さんってすごいな。
ただ、どうせなら出番をもっと増やしてほしかった。サラマンダーやウンディーネは、出会った時くらいしか印象がない。せっかく個性的なキャラクターなのにもったいないな。
ドリアード、かわいいけど、そんなにクネクネしなくていいんじゃないの? 見ていると不安になってくる。
ブースカブー」のイントネーションに違和感。

ストーリー

ストーリーに変更なし。ただし、クリア後のオマケで追加シナリオがある。
事前に発表されていた追加要素「クラス4」へのクラスチェンジも、その中に組み込まれている。
追加シナリオでは、原作に無い長編のダンジョンが現れ、攻略することになる。ただ、ダンジョン内部は既存の街並みや場内をベースに改編したもので、要は使いまわし。まったくの新規ダンジョンにしてほしかった。
クラスチェンジに際し、6人の各キャラクターにおいて本編で関わりのあるサブキャラクターが3Dの姿で登場する。本編では名前だけ登場し姿を一切見せなかった人物もいる。これを見るだけでも6人全員パーティにして全クリアする価値はある。
でも、ロキがなぜいきなり姿を現したのかがよくわからなかった。情報が不足している。
それに、ローラント陥落の要だった眠りの花畑の中に慈愛のオーブがあるのは、やっぱり設定上おかしい。細かいことは気にするなということか。

文章

テキストは、基本は原作からそのまま持ってきていて、音声もそれに合わせて喋るのが残念。
たぶん制作における方針なのだろうけど、せっかくのリメイクなのだから、展開が速すぎて情報量の乏しいスーパーファミコンの文章そのままより、さらに踏み込んだり掘り下げたり膨らませたりしてほしかった。滝の洞窟前で2人目の仲間が加わる際のやりとりや、光の司祭との会話など、音声が付くと会話の違和感が際立ってしまう。
補完されている部分もある。コロボックルの村でのドン・ペリの話が長くなっていたり、最終戦一歩手前のライバル戦での掛け合いなど。それでも、まだまだ不十分だ。マナの聖域からの帰り道で、黒幕に倒された2勢力の呆気なさすぎる去り際とか、ストーリーの進行を補助するナレーションが序盤だけだったりとか。痒いところに手が届いていない。
堕ちた聖者を倒した後、主人公が「もう喋るな!」と言った直後に「黒幕は何者なんだ?」と訊いていたり。もうちょっと何とかなるだろうという場面が多い。
6人から3人を自由に選んでパーティを組むという特性上仕方がない部分もあるだろうけど、いっそのこと全部書き直してほしいくらいだな。その点、原作にはなかった追加シナリオの会話パートは違和感が少ない。キャラクター同士の掛け合いも自然だ。こんな感じが良かった。
今作で聖剣伝説3を初めてプレイする人は、感情移入が難しいのではないか。もっと洗練させてほしかった。

マップ

マップはだいたい原作を踏襲していて、3Dに起こしている。「ああ、あったな。こんな場所」と何度も感慨に耽る。原作で青空が見えるのは天かける道や天の頂くらいだったのが、ほぼすべてのフィールドで空が見える。これだけでも感動だ。
マッピングはほぼ原作通りのところもあれば、ガラッと変わっているところもある。でも、フル3Dになっても雰囲気は原作のままだ。すごい。
そこらじゅうに回復アイテムやお金が落ちている。拾って歩けば、道具屋で補給する必要がほとんどない。難易度ノーマルでプレイしたけど、上げてもよかったかもな。
基本的にカメラは自由に動かせるけど、横スクロール風に固定されるフィールドもある。ワンダーの樹海の一部がそれ。これは「わかってる」な。
ダンジョンは煩雑さが解消されほぼ一本道となり、あまり迷わず進める。ただ、これは賛否両論ありそうだな。サクサク進めるけど、原作を知っている身からすると拍子抜けの感もある。岸辺の洞窟やビーストキングダム、宝石の谷ドリアンなどは攻略に時間がかかった印象があるのに、「え、もう最深部に着いたの?」という感じ。
混乱したのが小マップの表示。移動する際、頭の中では「フィールド上の北へ進めば次のフィールドの南に抜ける」という意識で進む。しかし、小マップでは北に進んだのに次のフィールドでは北側から出てくることになっていたりすることがたまにあった。氷壁の迷宮や追加ダンジョンなど、それで大いに道に迷ってしまった。これって、最近の人は違和感ないのかな。
あと、昼夜の切り替わりの際にいちいちゲームが停止するのもいただけない。仕方がないと解ってはいるけれども。

BGMとSEは、かなり原作寄り。
アイテムゲット時やレベルアップ時など、UI系のSEがスーパーファミコンのチープな音源ほぼそのままで嬉しい。「聖剣3やってるな」感がある。
序盤、ラビの寝息が聞こえたとき、当時プレイしていた時の感覚が頭の中のどこかから引き出され、乗り移ってきた。聖剣やってるな。
HP減少時の"ピコーンピコーン"を聞くと、条件反射で即座にリングコマンドを開く。この所作は体に染みついているようだ。聖剣やってるな。
BGMはアレンジ版と原作音源が選択できる。アレンジ版がかなり原作忠実で、変に飾りつけたりせず音源を高音質なものに入れ替えたような感じなので、まったく違和感なく聴ける。かなり嬉しい。
アレンジも素晴らしいけど、原曲が良すぎるのだ。これに尽きる。
あえて挙げるとすれば、ジェノア戦の専用BGMはエレキギターではなく、笛系の音源で主旋律を奏でてほしかった。ボス戦のBGMだからあえてそうしたのかもしれないけど。でも、これは些末なことだ。
オープニングとエンディングは生楽器。鳥肌モノ。

戦闘

戦闘はブラッシュアップしている。
アクションRPGなのでフィールド上に敵がいれば画面が切り替わらずその場でそのまま戦闘になる。そこは一緒。ただ、原作はLV2以上の必殺技や魔法を放つと演出効果で都度戦闘が停止していたけど、今作は発動中も他キャラはリアルタイムで動ける。よって、スピード感がかなり上がっている。聖剣伝説2のシステムに近い。
原作ではザコ敵を全滅させるとたまに宝箱が出現し、アイテムを入手する形だった。しかし今作では廃止され、1体敵を倒すごとに確率で直接ドロップし、自動的に入手されるシステムになった。戦闘終了後に宝箱が出現するかどうか待機する必要がなくなり、スピーディな移動に一役買っている。
さらに、ケヴィンの獣人化のモーションも廃止され、瞬時に変身する。地味な変更だけどありがたい。
フィールド上をほぼリアルタイムで動けるようになり、必殺技や魔法を放てば必ず相手にヒットするということが無くなった。風の回廊でアーマーナイトの旋風剣を恐れる必要がないのだ。相手の大技を避けるには、通常攻撃と同様、実際に自身の操作で射程圏外へ避難する。とっさの回避行動がキモとなる。
魔法の詠唱時間も短縮され、MPの残量分ガンガン放てる。これがかなり嬉しい。原作では、演出の割には威力が低い攻撃魔法を放つくらいだったらその時間武器で直接殴っていたほうが効率が良かったりして、魔術頼りのアンジェラやシャルロットをパーティに入れるのを躊躇していた。しかし、本作でその欠点が解消され、攻撃魔法の地位が急上昇した。実際、後半以降の魔法の威力は侮れないものとなっている。ケヴィン、デュラン、リースでタコ殴りが最強だったあのころとは違うのだ。
アクション性が上がっていて、これはこれで良い。キャラクターのモーションやエフェクトもカッコいい。でも、スーパーファミコンのコントローラーに比べてボタン数も増え、ジャンプや回避、ショートカットなど出来ることも増えたので操作がおぼつかないのがつらいところだけど。現代のゲームなら、これくらいが普通なのだろうな。
あと、カメラをグルグル回すことになるため、いわゆる"3D酔い"しやすいかもしれない。

そのほか細かいこと

クラスチェンジでキャラクター毎、クラス毎に専用衣装となるのが良い。原作では、粗すぎるドット絵と攻略本にある小さな絵から想像するしかなかったからな。
武器だけはすべてに3Dの専用グラフィックが割り当てられているのも地味に嬉しい。調子に乗ってチキチータ&ジョセフィーヌから武器防具を一通り揃えようとするとお金が足りなくなるのも原作通り。

どのボス戦でもアレンジが加えられている。
大技を繰り出す際に予備動作があり、そこで時間内に阻止できれば敵が一定時間行動不能になり殴り放題となる。阻止できなければ技が発動され大ダメージを受ける。
これは、ケヴィンだとかなり楽に阻止できた。逆に、魔法主体ではなかなか止めることができず苦戦。やはり武器攻撃が最強なのか。

ブラックラビは、誰が主人公でも出会えるようになった。しかも何度でも戦える。
原作のような理不尽さは抑えられている。ある程度LVがあって、動きを読めれば倒せる。

エンディングに流れる後日談のムービーは、シャルロットだけ2パターンあるようだ。パーティにシャルロットがいるか否か、堕ちた聖者を倒すか否かで変わるのかな?

原作は25年前。
初めてエンディングを迎えたときを、今でもよく覚えている。冬の朝、外は雪が積もっていた。ブラウン管テレビの前で、山岳地帯を飛ぶフラミーを茫然と眺めていた。やり切った感とやり切れない感が入り混じった、でも澄んだ心地。
懐かしい。泣けてくる。

惜しいところもあるけれど、良いゲームだ。
かなり久々のゲーム三昧で疲れた。でも、満足。